楽天モバイルの5Gは“高速”にこだわる 三木谷氏「大阪駅前で驚がくのスピードが出る」(2/2 ページ)
楽天グループの2021年度の連結売上業績は、携帯電話事業で基地局整備などによる投資が響き、2021年度のIFRS営業損失は1947億2600万円となった。楽天モバイルの5G戦略について三木谷氏は、低周波数の5Gにはそれほどメリットがないと話す。新周波数のSub-6やミリ波を使ってスピードを追求していく方針を示した。
5Gの展開コストも、他社に比べると圧倒的に安い
決算説明の後、報道関係者、アナリストによる質疑応答が行われた。モバイルに関するやりとりは以下の通り。
―― 開設計画を達成したことで、総務省に新しい電波、プラチナバンドの申請がしやすくなると思う。プラチナバンドを獲得しに行くか、考えを知りたい。
三木谷氏 もともと、政府が第4のキャリアを認めた経緯には、競争を促進して利便性を上げるとともに、より合理的な携帯料金に近づけていくことにあると考えている。今のミッドバンドでも知恵と工夫でかなりカバーできているが、プラチナバンドがあることによって、3社との競争について、極論を言えば、その上に行けると思っている。そういう風(プラチナバンド獲得)になればいいと思っている。
―― 2022年の第2四半期から営業損失がピークアウトしていくということだが、ローミング停止の効果がどれほどなのか。また、人口カバー率96%以降を、どう探っていくのか。米ASTのスペースモバイルを活用する話があったが、キャパシティーは十分足りるのか。
三木谷氏 ローミングコストについては、具体的な数字は公開していないが、実際にかなり大きな負担になっていることは事実。それが当初に比べるとだいぶシュリンクしてきている。一方でユーザーも増えている。(ローミングの)パーセンテージは格段に下がっているが、ユーザーが非常に増えているので、そこの駆け引きがあるが、これがだいぶ減っていく。100億円単位ではない単位で減ってくと思っていただいていい。
ASTについては、3つある。人口が少ない過疎地や遠隔地ではASTを使う。96%から99%以上までは、自前のネットワークでやっていくが、災害や基地局がダウンしたときのバックアップにもASTを使う。
都市部にはキャパシティーが足りないが、それ以外は十分だと思っている。ぜひ大阪の駅前に行ってもらいたい。楽天モバイルの5Gのスピードを体感して、驚がくするのではないかと思う。5Gの周波数帯域は圧倒的に大きいので、都市部を中心にキャパシティーが必要なところはSubー6を、駅や渋谷の交差点、スタジアムなど非常に混雑しているところはミリ波でカバーしていく。この5Gの展開コストも、他社に比べると圧倒的に安いというのがわれわれの特徴だと思っている。
―― 楽天シンフォニーやモバイルによってグローバル化が進んでいくと思う。現在、売上高の海外比率はどれくらいか。また今後、それがどのくらい上がってくるのか。
三木谷氏 現状は2割弱。1つのキーワードは楽天シンフォニー。AT&Tやテレフォニカなど、色んな会社と話をさせていただいている。彼らは、単純な接続だけでなく、さまざまなOTTサービスをやっていきたいという願望がある。プラットフォームを採用していただくとともに、いわゆるサービス提携もしていって、彼らと一緒に伸びいきたい。最終的には、日本と海外の売上比率が半分ずつというところまで持っていけるようにしたい。楽天シンフォニーは日本の会社だが、ソフトウェアの売り先はほぼ海外。それが数千億円単位で立ち上がってくる。
5Gの基地局は2021年に1万局ほどに拡大
―― 5Gの基地局の数は現状どれくらいで、どれくらいの目標か。
三木谷氏 3タイプの5Gがあることを理解する必要がある。1つ目がミリ波。これは非常に高速で、(電波が)真っすぐ進む。それからSub-6。もう1つが、フェイクとは言わないが、5G的なものがある(※4Gの周波数を転用した5Gのことだと思われる)。われわれは高速の5Gに注力している。
山田氏 5Gの人口カバー率については公開していない。ただ、5Gの基地局は大体4000局ぐらい。これが、少なくとも今年、これが2倍以上、1万局くらいまでになるということで、迅速に増やしている。もちろん、基地局だけあればいいわけではなく、5Gデバイスも必要。人々がそのメリットを享受できるためには、デバイスも必要で、5Gデバイスを普及させていくことも考えている。4Gでは1波しかないので、5Gはとても重要。それによってわれわれはキャパシティー、それからスピードを提供することができる。
―― 加入者の成長は今後どのように見ているか。どういった戦略で加入者の数を増やしていくのか。価格体系はどうするのか。
三木谷氏 20GBは、5G時代では十分ではない。例えば50GB、100GB使うと、いくら払うか。料金的に3倍、5倍のところもあると思う。5Gでデータの消費量がこれまで以上になるので、そういったお客さまをターゲットにしていきたい。それがわれわれのメインストリームになる。大容量使用のユーザーは、コストメリットがあるということで、価格差が効いてくる。
データをあまり使わない人には、非常に安い課金をする。大容量のデータを使うときには3倍、4倍、5倍になるが、競合他社よりは安くなってくると思う。カバレッジをさらに広げていくことで、加入者の数は増えていくと思う。
私達のプランはとても競争力が高く、システムへの貢献が非常に大きい。また、無料通話を提供しており、パーソナル化された広告を消費者に提供しているので、それによってARPUが非常に早く伸びてきている。3カ月の無料キャンペーンが終了したので、加入者が1GB以上使うようになったら支払いをすることになったが、価値はもう認識されていると思う。
もっと有料ユーザーの数を増やしていきたい。純粋な加入者数は、それほど重要ではない。ブレークイーブンにして、そこから利益を生んでいくことの方が重要。契約者数が1500万、2000万人に到達することを考えていきたい。今は誰が利益貢献してくれそうで、誰がそうでないのかをモニタリングしているような状態だ。
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