月額1078円で5GBに J:COM MOBILEが値下げよりも“データ増量”に注力する理由:MVNOに聞く(1/3 ページ)
J:COM MOBILEは、2月1日に複数サービスのセット契約でデータ容量を大幅に増量する、「データ盛」を開始した。J:COM MOBILEといえば、訪問設定サービスまで含めた手厚いサポートを売りにしている。必ずしもヘビーユーザーが多いわけではない中で、なぜデータ盛を導入したのか。
J:COM MOBILEは、2月1日に複数サービスのセット契約でデータ容量を大幅に増量する、「データ盛」(発表時はギガ盛)を開始した。J:COM MOBILEは、ケーブルテレビ事業者のJ:COMが運営するMVNO。テレビ契約者や固定インターネット回線の契約者がセットでモバイル回線を持つケースが多い一方で、データ盛の適用条件には同社の電気サービスやWiMAXまで含まれており、幅広いユーザーが対象になる。
データ盛適用時のデータ容量は、1GBコースが5GB、5GBコースが10GB、10GBコースが20GB、20GBコースが30GB。各コースのもともとのデータ容量が、1.5倍から5倍ほどに増量される格好だ。低容量コースを契約しているユーザーほど手厚くなっている。あくまでセット契約前提だが、1GBプランはデータ容量が5GBで1078円(税込み、以下同)になり、MVNOの中で見ても価格競争力は高いといえそうだ。
あわせて、2021年12月からは26歳以下のユーザーに対し、5GBコース以上を1078円割り引く「U26ヤング割」の提供を行っている。1月には、固定回線とJ:COM MOBILEのセット割キャンペーン「新生活応援!U26割」も開始した。J:COM MOBILEといえば、訪問設定サービスまで含めた手厚いサポートを売りにしたMVNOで、必ずしもヘビーユーザーが多いわけではない。そんな同社が、データ盛を導入したのはなぜか。J:COMで代表取締役社長を務める石川雄三氏に、お話を聞いた。
1GBで680円ぐらいにしても、価格弾力性は高まらない
―― まず、データ盛を開始した狙いを教えてください。
石川氏 J:COMは、テレビとネットでトータルの視聴環境を提供するところに独自性を出したいと考えています。「J:COM LINK」というSTB(セットトップボックス)を使うと、STBで放送波をIPに変換して、スマホから見ることができます。録画やVODのようなサービスはありますが、放送までとなると、なかなかありません。VODのJ:COMオンデマンドも、データ消費ゼロで使うことができます。こういったことができるのは、MVNOだと私どもだけです。
MNOと一緒とまではいきませんが、僕らがやろうとしているのは、映像での差別化と、ごく普通の料金でリーズナブルに使えることです。安いからサポートがないのでは、何となく不便で不安を感じてしまいます。そういった基本思想があり、バンドルプラン(データ盛)もその中で考えられました。映像をある程度外で楽しんでいただき、サービスもそれなりに充実していて1078円。これで安心して使える容量(5GB)があり、サポートも受けられます。
私どものターゲットにしているお客さまは、そういった安心感を求めます。これが例えばデータ容量ではなく、値下げにして税別価格を1GBで680円ぐらいにしても、価格弾力性はそんなには高まりません。異論はあるかもしれませんが、私どものお客さまにはそういった方が多いということです。
―― 1GBコースは5倍にデータ容量が増え、他のコースよりも増加率が高くなっています。これはなぜでしょうか。
石川氏 正直3GBぐらいにするかは、散々悩みました。他社の例だと、mineoは5GBプランが1518円ですからね。また、大前提として、うちのお客さまはシニアが多く、いっぺんに5GBをお使いになることはありません。ですが、思い切って5GBにした方が、お客さまの安心感を得られます。競争環境とお客さまの基本属性を見て、5GBにしたというのが回答になります。
J:COM MOBILE単体の契約者も増えつつある
―― セット契約前提ではありますが、価格的には最安クラスと言ってもよさそうですね。
石川氏 これは競争力があると思っています。auやUQ mobileとのコラボレーション(auスマートバリューや自宅セット割)はあり、全てのお客さまがJ:COM MOBILEを契約するわけではありませんが、私どものお客さまは550万世帯で、電話だけを契約されているお客さまも一定数います。そういうサービスならどれをバンドルしてもいいというのは、魅力的に映ります。両方使っていただければリテンション(解約抑止)も効いてきますから、思い切りました。
―― 電話だけの方というのは、J:COM PHONEのことですか。
石川氏 意外にいらっしゃるんです。昔からのユーザーが結構多く、単品でご利用されている方が2割いらっしゃいます。ネットだけ、テレビだけ、電話だけという中では少ないですが、ある程度の数になります。
―― 逆に、J:COM MOBILE単体で契約している方は少ないのでしょうか。
石川氏 少し増えてきました。以前はセットにしないと安くなりませんでしたが、今は単体でも安いので。単体であれば、J:COMのエリアにお住まいでない方でも使うことができます。ただ、割合は今でも10%に行くか行かないかです。そもそもデジタルの販路にそんなに強いわけではないですからね。毎月、1割以上はオンラインで入ってきているので、ここは強化したいと思っています。プル型のチャネルでそれだけ取れるのは、商品力がそれなりにあるということだと思います。
―― それもあって、データ盛ではエリア外の人でも組めるサービスがあるということですね。
石川氏 エリア外で契約できるのは電力やWiMAXで、これをセットしていただければいいと思います。エリア外の方向けの対象は、今後も増やしていく予定です。
―― データ盛を軸に、J:COM MOBILEを単独で契約しているユーザーに他のサービスを使ってもらいたいという狙いもあるのでしょうか。
石川氏 もちろん、それもあります。ここまでめちゃくちゃに料金が下がる前(MNOの料金値下げ)までは、モバイル単体でもかなり競争力がありました。ですから、当然、そこからテレビなりネットなりを契約してもらうという導線も想定していました。今は当初想定したほど大きくはないのですが、お客さまとのコネクションの中でいろいろな提案はできます。どこから入っていただいてもいいので、そういう狙いは継続しています。
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