スマホで指紋認証ができない その原因と対策について考える
スマホの生体認証に、顔認証より指紋認証を使うというユーザーは多いだろう。しかし、冬に乾燥すると指紋認証も使いづらくなる。そんな時期でも指紋認証を利用できるように、その仕組みや指紋認証が利用しづらくなる原因と対策を紹介する。
マスク必着のご時世。スマホの生体認証に顔認証を使っている人にとっては苦難の時代です。とはいえ、指紋認証可能なスマホであっても、「これは厳しい」と感じるのが冬や春先など肌が乾燥するシーズンです。
なぜ、そのシーズンが指紋認証派にとって厳しいものとなるのでしょうか。対策はあるでしょうか。
指紋認証の仕組みをおさらい
多くのスマホの指紋認証センサーで採用されているのが、静電容量方式です。これは、人体が導体(電気を通す物質)であることを利用したもので、センサーに触れた指紋の稜線と谷線(いわゆる凸凹)に流れる微弱な静電容量の変化を捉え、それをマッピングしたデータを記録、それを参照して認証する、というものです。
ホームボタンを搭載しているiPhoneやiPadのTouch ID、Android端末ではホームボタンや電源キー、背面などに搭載している指紋センサーがこれにあたります。
iPhone 8以前と、iPhone SE2、無印iPadなどではホームボタンとTouch IDを兼用しています。Android端末でも、ホームボタンに指紋センサーを搭載しているものや、電源キーに内蔵しているもの、手に持ったときに指が自然と触れる背面などに搭載したものもあります
最近では、ディスプレイの面積をより広げるため、画面内指紋センサーを搭載しているAndroid端末もあります。これには、光学式と超音波式があり、どちらもセンサーが発した光や超音波の戻り値を利用します。
パネルの内側から発した光が、パネルに接地する指紋の稜線部分では乱反射して弱く戻り(影になる)、谷線部分ではパネルに反射するだけなので強く戻り(明るくなり)ます。その印影をデータとして記録し、照合するわけです。
超音波式では、これに角度が加わったイメージです(ただし、後述しますが戻り値は光学式の逆)。指紋の谷線部分に当たった超音波は、より深く進むため、弱くなって戻り、稜線部分ではすぐに跳ね返るため、強く戻ります。また、稜線から谷線の間の角度も検出するので、光学式より、安全性が高いといわれています。
乾燥が指紋認証の大敵である理由は?
さっと取り出して指を滑らせる(画面内指紋認証の場合はグッと押さえる必要がありますが)だけで画面ロックを解除できて便利な指紋認証システム。この快適さをいったん経験すると、何度センサー部をグッと押さえても認証されず、結果、PINコード、パスコード、パターン入力などをしなければならない状況は、実にイライラさせられるものです。
指紋認証が通りづらくなるのが、冬や春先など肌が乾燥する季節。西高東低の気圧配置となる冬は、太平洋側で空気が乾燥します。ちなみに、加湿器が壊れてから新しいものを買っていない我が家では、室内の湿度が常に25~35%で推移しており、ひどいときには計測不能(「Lo」表示)になるほど乾燥していました。あちこちに、ぬれタオルをかけて、なんとか30%以上を目指したのですが。
閑話休題。
乾燥する季節に指紋認証が通りづらい原因は、肌が水分を失うことで、水を介した通電が生じなくなり、静電容量方式の指紋センサーが反応しないため……なのかと、思いきや、乾燥して水分が抜けると、指紋の稜線と谷線がはっきりしなくなる、またはしわができるなどして指紋が変形してしまうから。
また、乾燥が招く肌荒れも原因となります。指先が荒れることで、小傷ができ、それによって「この指紋は違う」と判断されてしまいます。
そのため、静電容量方式だけでなく、画面内指紋認証もうまくいかなくなってしまうというわけです。
スマホユーザーは肌のケアを大切に
では、どうすれば乾燥しがちなシーズンでも、快適に指紋認証でスマホのロック解除を行えるようになるでしょうか。
1つは、指先の保湿に気を配ることによってです。乾燥が気になったら、ハンドクリームなどを塗布し、よくマッサージして、指先のケアをしてみましょう。ただし、過剰な油分も誤作動を招く原因となるので、昼間であれば、できるだけ少量のクリームを使うようにし、主なケアは就寝前に行うと良いでしょう。
別の方法は、複数の指紋を登録しておくだけでなく、認証しづらくなったと思ったら、認証しづらい指を登録してしまうというものです。荒れて、形が変わってしまったものを、新しい指紋として登録すれば、認証が通る確率は上がるでしょう。
Touch IDであれば、疑似指紋を使うという方法もあるでしょう。「Dipper ID」は、Touch IDに特化したアイテムです。
最も手軽にできるのは、指先に何度も息を吹きかけて水分を補うこと。何度か試しましたが、何もしない場合より、認証の通る確率が上がったことを確認しています(ただし、絶対ではない)。
シーズンに関係なく、認証が通りにくいというのであれば、センサー部分が汚れていないか、しっかりとセンサー部分を押さえているか、正しい角度で当てているかなどを確認してみましょう。静電容量方式では、水にぬれた状態だと正しく認識できないので、手汗をかいていないかも、チェックしたいところです。
身近になりすぎて忘れがちですが、スマートフォンは精密機器。その中でも、指紋のわずかな凹凸を読み取れる、ここまで小型になった指紋認証センサーは、高度な技術を使った精密機器といえるでしょう。
反応が鈍くなったら、スマホに怒りをぶつける前に、できる方法を試してみてはどうでしょうか。場合によっては、手肌の健康が保たれるといった副産物が得られるかもしれません。
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