「スマホの箱に記名」は、本当に転売対策になるのか? 実際に体験して感じたこと(2/2 ページ)
ドコモのiPhoneを購入する際に、「箱に名前を書く」という対応が注目を集めている。ネット上でも賛否両論の意見が飛び交う中、筆者もiPhoneを購入した際に、記名の体験をした。記名をしても、転売対策には効果が薄いと感じる。
背景にある転売対策、根本を見直す必要があるのでは
転売対策で端末の箱に名前を書く点は、筆者を含め不快に感じる方は多いだろう。特価品端末でも購入する方の大多数は、転売を目的としない一般の利用者だと考える。一部の転売を目的とする人たちに多くの端末を独占され、一般の利用者に行きたわらない点は問題だ。しかし、その問題を解消するために一般の利用者に不便を強いるのは、消費者の目線から考えていかがなものかと感じる。
近年では使用しなくなった端末を手放す手段として、メルカリをはじめとしたフリマアプリが利用されている。手軽に匿名で商品を取引できる点は利点だが、記名があることで出品しにくくなる。名前や店舗印といった個人名や生活圏の情報が書かれたものを出品したら、最悪の場合、個人情報の特定にもつながり、匿名性が損なわれてしまう。
過度な転売をする側も問題があると思うが、転売できる環境としているキャリアにも問題があると感じる。そもそもブランド品であるiPhoneを契約なしの購入ながら、Apple Storeの半額以下の価格で購入できてしまう方がおかしいのだ。このような状況を作り出しておいて「転売対策」と言い出すキャリアには疑問を感じる。
近年ではオンライン上での顧客情報のひも付けなどによって、「どんな端末をいつ誰がどのような施策を使って購入したか」という点は容易に確認できる。加えて、ドコモを含めた4キャリアは、転売の温床ともいえる特価端末の販売台数を制限しており、この措置を徹底すれば、端末の大量購入と転売は防げるはずだ。
ドコモの場合は上記の対策に加え、「端末に名前を記名させる対応」を追加で取っている。上記の通り、顧客の利用実績を確実にチェックし、台数や購入期間に制限を設ければ転売は防げるはずで、端末の箱に記名したりすることは何度も言う通り、転売対策において大きな効果はないと考える。むしろ利用者に対してマイナスのイメージを与えかねない。
筆者はどうしてもこの対応が、他社に比べて「うちは転売対策に力を入れています」という総務省へのアピールにしか感じない。小学校の教科書のように端末の箱に名前を記名させる行為を消費者に求める前に、ドコモをはじめとした大手キャリアは、販売代理店、消費者に対して転売対策の対応を見直すべきことがあるのではないかと感じる。
関連記事
スマホ契約で箱に記名 ドコモが転売対策 KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルは?
「NTTドコモでiPhoneを買ったら箱に記名させられた」――。そんな投稿をSNSで最近よく目にする。NTTドコモを含む携帯電話キャリア広報に具体的な条件や注意点を問い合わせた。スマホ特価販売の「闇」 転売対策に右往左往する販売店の声
電気通信事業法の改正以来激減してきたスマホの「特価販売」が、新たな手法によって復活しつつあります。しかし、そのことに伴い「転売ヤー」と呼ばれる転売目的の端末購入が再び問題となりつつあります。その現状について、携帯電話販売店のスタッフに聞いてみました。iPhone 13 miniが“実質23円”で投げ売り その実態に迫る
「iPhone 13 miniが23円で投げ売りされている」という情報をよく目にする。その実態を確かめるべく、都内の某家電量販店へ行き、具体的な条件や注意点を調べてみた。「23円」は一括価格ではない点に注意したい。iPhone SEが「一括10円」で販売 上限2万円を超える値引きのカラクリとは?
携帯キャリアによる「iPhone SE(第2世代)」の値引き合戦が過熱している。ある家電量販店では、9月の土日限定の値引きとして「MNPで一括10円」のキャンペーンをドコモ、au、ソフトバンクの各キャリアが実施していた。一見、大手キャリアにとってメリットがないような販売形態のカラクリに迫った。日本の中古iPhoneが海外へ転売されている? 実態を見てきた
大手キャリアが下取りしたiPhoneが海外に流れているのではないか? ということがウワサされています。その実態を確かめるために、香港と深センへ渡りました。いくつかのショップを見て回ったところ……。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.