「プラチナバンドを楽天に譲渡すべき」「PayPay黒字化はいつ?」 ソフトバンク株主総会で語られたこと(2/3 ページ)
ソフトバンクは6月23日、都内で第36回定時株主総会を開催した。宮川潤一は「単なる通信会社にとどまるつもりはない」と、総合デジタルプラットフォーマーになるという方針を改めて説明した。700MHz帯を電波オークション経由で楽天に譲渡すべきという株主の意見に対して「全く考えられない」と一蹴した。
PayPayはマーケティングを優先してシェアを拡大する
―― PayPayの手数料有料化に伴う利用者数や、加盟店数の変化について教えてほしい。また、いつ頃黒字化する見込みか。上場予定についても教えてほしい。
宮川氏 先の決算発表で説明した通り、手数料有料化以降も変わらず、ユーザー数も加盟店数も順調に増加を続けている。獲得費用を除くと黒字化の水準まで来ている。ここでブレーキを踏んで黒字化を目指すより、今はマーケティングを優先してシェアの拡大を図ることが、結果的にPayPayの企業価値を高めることにつながると考えている。上場については有力な選択肢の1つだが、現時点で話すことはできない。
プラチナバンドは手放さない
―― プラチナバンドとして900MHz帯と700MHz帯の両方を有しているが、コスト面で無駄ではないか。900MHz帯に1本化した上で700MHz帯は総務省に返上し、電波オークション経由で楽天に譲渡すべきである。
宮川氏 現在、700MHz帯は5Gで使用している。基地局は既に1万2000局建設済みで、運用済み。既に1500万人以上の5Gのお客さまが700MHz帯を利用しているので、免許返納は現実的ではない。まったく考えられない。加えて、900MHz帯はLTEの主力バンド。他キャリアに比べても、多くのトラフィックを運んでいる。5Gへの移行時期については、LTEのサンセットの時期まで現実的には難しいと考えているので、700MHz帯は5Gで、900MHz帯はLTEでの運用が当社の方針。
Y!mobileの通信速度が遅い?
―― Y!mobileはソフトバンクのサブブランドで、回線はソフトバンクと同じと聞いていたが、使用するとソフトバンク回線のときに比べ著しく遅い。どういうことか。何か差をつけていないか。
宮川氏 ご迷惑をおかけしている。ただ、ソフトバンクとY!mobileとの間で通信品質に差はつけていない。通信品質の改善については継続して取り組む。電波改善要望アプリを用意しているので、ぜひ声を寄せてほしい。
―― 携帯電波が届かないエリア解消に向けた取り組みについて教えてほしい。
宮川氏 順次、増強に向けて取り組んでいる。将来的には衛星を使うなどして解消に努めたい。最近、また孫創業者がチーフネットワークオフィサーを、「またオレがやるんだ」ということで、頑張っている。これからメキメキと改善が行われるものだと信じている。一生懸命頑張って改善をしていきたい。
―― ソフトバンク、Y!mobile、LINEMO3つのブランドの適正比率について考えているか
榛葉氏 3ブランドを明確にしてお客さまに提供している。ショップのサポートなく、申し込みからサポートまでを全てオンラインで完結できるLINEMOを含め、3つのブランドを取りそろえている。一人一人のライフスタイルに適した形で、3つのブランドがマッチしていると考えている。ただ、それで満足することなく、常にお客さまの声を聞きながら3つのブランドを磨いていきたい。
―― 店頭における端末販売拒否などの問題をどう考えているか。
副社長執行役員 兼 COO 榛葉淳氏 一部店舗において、スマートフォンだけを販売することをお断りする事象があった。これは残念ながら事実で、既にその再発防止策を講じている。最低でも3カ月ごとの研修や、お客さまあるいは全国のスタッフが誤解なきように、各店舗に必ずその注意事項、ポスターなどを掲示するなどして、再発することがないように努めていく。
2022年末で5Gのエリア展開完成が見えてくる
―― 5Gの進捗(しんちょく)状況について、競合他社との競争を含め、どのように進めていくのか。
宮川氏 3月末に人口カバー率90%を達成したことを報告している。他キャリアより一歩リードしている環境。先ほどのプレゼンで話したように、これから真の5Gに切り替わるタイミング。スマホだけの今までの通信事業から、あらゆる社会のインフラになっていくために、5Gのコアにつながる仕組み作りがまず必要だったので、ここは急ピッチで工事をしている。今年(2022年)末で、ほぼ全国でわれわれの作りたかったエリア展開が完成してくる。
そうなると、例えば自動運転車であったり、IoTのデバイスだったり、いろいろなものが日本全国で同じデバイスでサービスできるようになる。デバイスを統一することは、エコシステムが効いてくるということ。デバイスの値段を下げて、みんなが使えるものにしていくフェーズに入ってくる。5Gのネットワーク作りを他社より先行したというメリットは、必ず出てくると思っている。期待してほしい。
―― 6Gにはどう取り組んでいるか。
宮川氏 6Gでは、今使われているミリ波のもっと上の、光に近いような周波数帯を使う。その高い周波数の伝送方法の実験は既に開始している。いくつかプレスリリースも出していて、岐阜大学と組んだ実証実験の結果を報告している。おおむね順調。また、6Gになると、今までの人と人の通信だったものから、だんだんモノとモノ、飛行機のような空間まで入ってくるので、3次元空間でのインフラも6Gの定義になっている。みなさん衛星をやったり、われわれのようにHAPSまでやったり、そんな通信が6Gのコンセプトの中に組み込まれている。我が社としては低軌道衛星とHAPSの2軸をもって3D化にチャレンジする。
誰一人取り残すことのないデジタル社会の実現に
―― 今後、社会のDX化についていけない人も出てくると思うが、ソフトバンクではこの問題をどのように考え、どのような取り組みをしているか。
宮川氏 DXが広がることで、社会が効率良く便利になるという面と、それに対応できない人が残って、日本の中で情報格差が生まれることが新たな社会課題になることの両面があると認識している。誰一人取り残すことのないデジタル社会の実現に取り組んでいる。具体的には「シンプルスマホ」や「キッズフォン」という幅広い年代のお客さまが扱いやすいスマートフォンを取りそろえている。全国の販売店にスマホアドバイザーを配置し、スマホ教室を開催している。そこではスマホを活用したデジタル社会の実現をサポートしている。また、最近では自治体と連携し、車での移動スマホ教室を開始した。地域格差の解消に取り組んでいきたいと思っている。
―― DX市場は強力な競合企業が非常に多い環境の中で、どう勝っていくのか。
副社長執行役員 兼 COO 今井康之氏 われわれは2017年からDX本部を作り、各業界の企業のみなさんと新しい事業展開をやってきた。いろいろな企業が事業をデジタル化し、Webサイトを使っていろいろなビジネスを起こしている。われわれのグループにはヤフーがあり、LINEがあり、PayPayがある。エンドユーザーの一番のフィットポイントを持っているのがソフトバンクだと思う。これらを利用して、いろいろな企業のみなさんと新しいDXを作っていくことを推進している。
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