「プラチナバンドを楽天に譲渡すべき」「PayPay黒字化はいつ?」 ソフトバンク株主総会で語られたこと(3/3 ページ)
ソフトバンクは6月23日、都内で第36回定時株主総会を開催した。宮川潤一は「単なる通信会社にとどまるつもりはない」と、総合デジタルプラットフォーマーになるという方針を改めて説明した。700MHz帯を電波オークション経由で楽天に譲渡すべきという株主の意見に対して「全く考えられない」と一蹴した。
半導体不足の影響は少ない
―― データ管理の安全性についてどう考えているか。
宮川氏 昨今、データ管理に対しての重みというか、経済安保という考え方が、ありとあらゆるサービスでヒアリング対象となって、政府と議論しているところがある。我が社のネットワークも、当初はチャイナリスクという表現をされた時期があった。HuaweiやZTEの設備を使っていたが、5Gは中国メーカーのものを使わないでくれというお達しがあり、それに向けて準備し、ようやく今、5Gに切り替わったところで達成できている。
経済安保という意味では、計画通りしっかりとしたネットワークができたが、個人情報の扱いは、非常に難しいところがまだ残っている。われわれでいえばヤフーやLINEといったサービスカンパニーで取り扱うデータは膨大。少なくとも日本国内でデータを完結させること。個人情報のガイドラインに一切抵触しない形できちんとした運営をすること。これは徹底している。大きなリスクは一切ないと断言したいが、いろいろなことが毎月のように出てきていて、それに対して真摯(しんし)に向き合っている。
―― 自動運転の拡大範囲について、物流トラックにも広げるか。
宮川氏 広げる。アメリカの例を申し上げると、自動運転の利用の仕方は、無人のタクシーという方向と物流のカテゴリーとで大きく分かれている。日本もレベル4まで開放するところまできている。日本もまずは高速道路で物流トラックから始まり、それから地方の高齢者が多いエリアで使われるということで日本は法の改正が始まった。数年先には、レベル4からレベル5に上がった自動運転車が走ることになると思うが、スタートは恐らく物流から開始されることになると思う。
われわれは社会実装させるためのプラットフォーム側の仕事をしている。いろいろな車メーカーが作る自動運転トラックが走って行く中で、事故がないように、ちゃんと調和が取れるようなプラットフォームを提供するのが我が社の務めだと思っている。
―― 半導体不足の影響は?
宮川氏 実際はそんなに大きな影響は出ていない。サーバの販売をやっているソフトバンクC&Sという子会社があるが、そこで仕入れが少し止まったりしている。去年(2021年)、もう少し売上が立つ予定だったが、注残ばかり残ってしまったことが、半導体不足の一番大きな影響だった。また、iPhoneとiPadは半導体不足の影響で少し品薄の状態があったが、業績に影響を与えるほどのものではなかった。今の状態でいくと、半導不足の影響は少ない。
―― トップの判断による新規企業への投資により、業績が大きく左右されるように見える。ソフトバンクは何を目指しているか。また、特徴ある将来像があれば聞きたい。
宮川氏 投資先は、幹部全員出席の経営会議で決めている。それから取締役会で最終決定を行っている。今後、通信キャリアから次世代の社会インフラになるとプレゼンで表現した。われわれはエクイティ・リターンを求めるためにいろいろな会社に投資しているわけではなく、我が社にとってシナジーがあるかの目線で判断している。あまり大きな投資をすると経営のバランスが崩れるので、年間の予算枠をもって議論をしている。
今は料金値下げの影響を身体の中で吸収し、肩慣らしをしているところ。やはり値下げの影響は我が社にとっては大きなサプライズだったので、ここ1年、2年、3年という単位は、それを一度吸収する。吸収しきった中で、もう一手、打ちに行くタイミングが出てくるので、そのときまでまず経営を安定させる。フリーキャッシュフローにこだわって会社を健全に経営するというフェーズをこの3年間は続け、その後、もう一度大きく伸びるための投資をこれから検討したいと思っている。
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