「Wi-Fi 6E」対応ルーターを手に入れた……のに本領を発揮できなかった件
9月2日に6GHz帯の電波を無線LANで利用できるようになったのを受けて、バッファローがWi-Fi 6E対応ルーターの出荷を開始している。一足早く体験する機会を得たのだが、ちょっと困ったことが発生したので読者の皆さんに共有しようと思う。
バッファローが9月5日、Wi-Fi 6Eに対応する無線LANルーター「AirStation WNR-5400XE6」の出荷を開始した。筆者が調べた限りでは、一部の家電量販店では販売が始まっていて、複数のWeb通販サイトでは9月9日から順次出荷を開始するようである。
Wi-Fi 6Eは、従来は使われてこなかった6GHz帯を利用することで外的要因による通信中断や電波の干渉を気にすることなく高速通信できることが何よりのメリットである。
バッファローからのご厚意で、このWNR-5400XE6の実力を試す機会を得た……のだが、少し困ったことが発生したので、この記事を通して共有したいと思う。
セットアップはとても簡単
セットアップの方法は、従来のAirStationとおおむね同様である。初期設定のアクセスポイント名(SSID)やパスワード(暗号化キー)は付属の「セットアップカード」と本体ステッカーに記載されている。
スマホやタブレットの初期接続は「QRSetup」アプリ(Android版/iOS/iPadOS版)を使うと楽……なのだが、9月6日時点の最新版(Android版はバージョン1.7、iOS/iPadOS版はバージョン1.9)では6GHz帯の初期設定には利用できない。今後のアップデートで対応する予定とのことなので期待したい。
初期設定のアクセスポイント名について、WNR-5400XE6からルールが変わっている。従来は5GHz帯は「Buffalo-A-XXXX」、2.4GHz帯が「Buffalo-G-XXXX」とされていたが(XXXXは機器のMACアドレスの下4桁)、WNR-5400XE6以降の新モデルでは以下のように周波数の「1の位」を用いたものとなる。
- 2.4GHz帯:Buffalo-2G-XXXX
- 5GHz帯:Buffalo-5G-XXXX
- 6GHz帯:Buffalo-6G-XXXX-WPA3
「5G」をモバイル通信規格(5G NR)と勘違いしそうな予感もするが、従来よりも分かりやすさは増した。6GHz帯の名称に「WPA3」が付いているのは、6GHz帯での通信はWPA3による暗号化が必須となっているためだという(※1)。
(※1)2.4GHz帯と5GHz帯でWPA3による暗号化を利用したい場合は、専用のSSIDを設定する必要がある(従来モデルと同様)
スマートフォンやタブレットで初期設定のSSIDに接続する場合は、QRSetupアプリを使ってQRコードを読み取るとすぐに接続できる。ただし、このカードに記載されている通り、発売時における最新バージョンのアプリでは6GHz帯の接続設定はできない
接続設定は、付属の「セットアップガイド」に従って進めれば簡単に進められる。Wi-Fiルーターから買い換える場合は、「無線引っ越し機能」または「スマート引っ越し」を使えば買い換え前のWi-Fiルーターの設定の一部を引き継げる。両機能を使って設定を引き継ぐ場合は「引っ越しガイド」も合わせて参照したい。
いずれにしても、初期設定のSSIDやパスワードのまま使うのはセキュリティ的に良くない。インターネットへの接続が問題なく行えることを確認したら、少なくとも接続用のパスワード、管理用ページにログインするためのパスワードは変更しておこう。
Wi-Fi 6Eで接続できるデバイスがない件
セットアップ自体はすぐに完了した。無線LANデバイスを再設定する手間を極小化するために、今回はSSIDとパスワードを普段使っているルーターと同一としている。新たに加わる6GHz帯については、それがすぐに分かるように改めた。
筆者の手元には、ハードウェア的にはWi-Fi 6Eに対応するデバイスが複数ある……のだが、これが“困った要素”である。
ThinkPad X13 Gen 3(Intel)
私事だが、最近筆者はメインPCを買い換えた。レノボ・ジャパンの13.3型ノートPC「ThinkPad X13 Gen 3」のIntelモデルである。
詳しいスペックは別の機会で紹介できると良いと思っているが、このマシンにはWi-Fi 6Eに対応する無線LANモジュール「Intel Wi-Fi 6E AX211」を搭載している。WNR-5400XE6の理論上の最大スペックである2.4Gbps(160MHz幅、2ストリーム)を最大限生かせる……はずである。
デバイスマネージャーでデバイスのプロパティを確認すると、きちんと6GHz帯の有効/無効を切り替える設定がある。「お、これは6GHz帯で通信できるのでは?」と期待がふくらむ。
しかし、無線LANのアクセスポイントを探してみると、6GHz帯のSSIDを検出できない。2.4GHz帯や5GHz帯のSSIDは見つかるのに、である。それもそのはずで、レノボは「Wi-Fi 6Eは日本ではご利用いただけません」としている。
サポートサイトにある情報を見る限り、6GHz帯で通信することの可否を判定するデータはUEFI(BIOS)側が所持しているようで、UEFIのバージョン1.28では「カナダとチリのWi-Fi 6Eのカントリーコードを追加した」との記載がある。この「カントリーコード」に日本が追加されない限り、日本では6GHz帯での通信は行えないと思われる。
UEFIのバージョン1.28では、カナダとチリでWi-Fi 6Eを利用するための情報が追加されたようである。このPCで6GHz帯の無線LANを利用するには、デバイスドライバーだけでなくUEFIの対応も必要なようである
Pixel 6
筆者の手元にあるスマホのうち、一番早くWi-Fi 6Eに対応するハードウェアを搭載したのは、Googleの「Pixel 6」である。このスマホも、ThinkPad X13 Gen 3と同じくWNR-5400XE6の理論上の最大スペックである2.4Gbpsでの通信に対応している。
ただ、サポート情報を読むとPixel 6のWi-Fi 6Eは台湾、日本、シンガポールでは利用できないとされている。案の定、6GHz帯のSSIDは見つけることはできなかった。
製品情報では、Pixel 6はカナダやオーストラリアでもWi-Fi 6Eを利用できないと記載されている。サポート情報と“矛盾”するが、Webのアーカイブ情報を見る限り、Android 13へのバージョンアップのタイミングでカナダやオーストラリアでの利用を“解禁”したようである。
日本でも、今後のソフトウェア更新による対応を期待したい。
「ルーターがあってもデバイスがない」状況はいつまで続く?
このように、ノートPC、スマホやタブレットでハードウェア的にWi-Fi 6Eを利用できたとしても、現時点では日本において利用できないようにする「措置」が行われているものが多いので、ルーターを買っても真価を発揮しきれないという状況が当面続くと思われる。
ハードウェアが対応していれば、ソフトウェアやファームウェアの更新で利用できるようになる可能性もある。しかし、場合によっては改めて認証を取得する手続きが必要となるため(参考PDFファイル)、利用できるようになるまでに一定の時間を要するかもしれない。
ともあれ、今後新たに登場するデバイスなら、最初から6GHz帯での通信も含めて認証を取得することになるはず。新しいデバイスを買えばすぐにWi-Fi 6Eの“真価”を試せる可能性は高い。
ひとまず、筆者がそのパワーを体感できるのはいつになるのだろうか……?
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