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楽天モバイルが負担金なしでプラチナバンド再割り当てを主張――ローミングやインフラシェアリングが解決策にはならないのか石川温のスマホ業界新聞

3Gの停波後、その帯域を新規携帯電話事業者を含めて再割り当てを行おうという議論が行われている。根拠となる法改正は10月1日に施行されるのだが、既存事業者と新規事業者たる楽天モバイルとの間には考え方に大きな“溝”がある。ここは、所管する総務省が主導して方針を立てるべきだと思うのだが、その動きは薄い。

 8月30日、総務省にて「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」が開催された。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが参加した。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年9月3日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。

 先の通常国会において「電波法および放送法の一部を改正する法律(令和4年法律第63号)」が成立し、今年10月1日から施行されることになった。これにより、周波数の再割り当てが可能となった。まさに楽天モバイルのための法律といえるだろう。

 今回、タスクフォースを傍聴したが、やはり、楽天モバイルからの要望がなかなか激しく、3キャリアとしては素直に受け入れられないという感じがひしひしと伝わってきた。

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 そもそも楽天モバイルが「1年でできる」という主張なのに対して、3キャリアは「移行に7~10年はかかる」と反論。3キャリアでは1000億円近い移行費用がかかるとしているが、楽天モバイルは「そんなの既存免許人が負担しろ」という。さすがに3キャリアが費用を負担するというのは納得いかないのではないか。

 楽天モバイルとしては10月1日の施行から、すぐに動き出したいようであるが、一方の3キャリアとしては牛歩戦略として、時間稼ぎに徹するような気がする。

楽天モバイルとしては、3キャリアから公平に周波数を返してもらおうと、3社から5GHzずつという提案をしているが、それが実現しないなら「1社もしくは2社を狙い撃ちにする」(矢澤俊介社長)という。

 矢澤社長がどのキャリアを狙っているかは謎だが、3社ではなく1社もしくは2社だけがターゲットになると、これはこれで大きな火種になるだろう。

総務省としては、法律を改正するぐらいなのだから、楽天モバイルにプラチナバンドを割り当てるというのはもはや既定路線なのは間違いない。

 ただ、こんなに4社がいがみ合い、下手をするとユーザーにも混乱が起きるくらいならば、プラチナバンドを3社から巻き上げ、楽天モバイルに割り当てるなんて面倒なことをするよりも、楽天モバイルのKDDIへのローミング接続料をもっと引き下げさせたほうがいいのではないか。ローミング接続料が高いから、楽天モバイルの赤字がひどいことになっている。ローミング接続料が安く、黒字化できる常識的な金額なら、そもそもプラチナバンドをよこせという厄介な話にならないはずだ。

 もしくはKDDIだけでなく、NTTドコモとソフトバンクも楽天モバイルにローミングさせて競争環境を作ればいいだろう。

 さらに、自然災害や先日のKDDIの大規模通信障害が発生したときのことを考え、「通信障害時には他社にローミングできるといい」という議論が進みつつあるが、いっそのこと、3社のプラチナバンド(700MHzとか)は普段から4社がローミングで相互に使えるようにする、といった大胆な議論はできないものか。

 3社に割り当てたものを別の1社に割り当てると言う、やっかいな話だから、各社でいがみ合って建設的な話にならない。

通信障害時のローミング議論も一緒にして「3社に割り当てたものをそれぞれ4社で使える」という視点を変えていくことで、競争を維持しつつ、いざと言うときの国民のインフラもキチンと確保できるのではないだろうか。

 3社に割り当てたプラチナバンドを4社で使えるようにすれば、これまで3社がそれぞれカバーしていたルーラルエリアも、2社がカバーして4社が使えるようにすれば、1社は基地局を撤収できるので、コストを削減できる。

 プラチナバンド再割り当てとローミング問題を一気に解決でき、おまけにインフラシェアリングにつながりコスト削減につながる。

 縦割りの総務省には議論できないだろうが、もうちょっと未来を見据えた設計図を描いてもらいたい。

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