ドコモ傘下となった「OCN モバイル ONE」の戦略 「Y!mobileやUQ mobileに対抗できるブランドになりたい」:MVNOに聞く(3/4 ページ)
ドコモのエコノミーMVNOに参画して以降、OCN モバイル ONEが順調に契約者数を拡大している。一方、同社をドコモ傘下の廉価ブランドと見ると、Y!mobileやUQ mobileには完全に対抗し切れていない。今後、NTTレゾナントはどのような戦略でOCN モバイル ONEを展開していくのか。
eSIM対応は「マストだと思う」ので検討している
―― 直近の話で言うと、KDDIの通信障害でバックアップ回線の注目が高まりました。MVNOの中では、IIJmioのeSIMが契約数を伸ばしています。御社はいかがでしたか。
植本氏 そういったものはあると思っています。ただ、われわれはまだeSIMに対応できていません。eSIMがあれば、申し込んですぐに使えるため、緊急性にも対応できます。普段使っているSIMカードのスロットを使わないというのもメリットで、eSIM対応は選ばれるための条件としてマストだと思っているので検討しています。
―― MVNEのNTTコミュニケーションズがIoT用でeSIMのサービスをしていますが、これを活用するのでしょうか。それとも、他のMVNOと同様、ドコモから卸を受ける形になるのでしょうか。
植本氏 どういう形態で提供するかは、今メンバーに検討してもらっているところで、まだ決まっていません。ただ、コムの基盤は、まだコンシューマー向けのeSIMをやっていないこともあります。どちらかといえば、音声通話を含めたeSIMを検討しています。
―― 料金プランに関してですが、2021年4月の改定以降、大きな動きはありません。頻繁に改定している他社もありますが、ここはどうお考えでしょうか。
植本氏 検討はしています。ただし、実際にやるかどうかや、やるとしてもいつ出すのかといったことはまだ全く決まっていないので、申し上げられません。どういった形がいいのか、どのタイミングで出すのかは、いろいろと検討しているというのが正直なところです。ただ、今のラインアップでいいとは思っていません。
―― 4月に10GBや20GBの中容量帯を廃止しましたが、その影響はありましたか。
植本氏 今のところ、そこまでの影響はありません。グループには(20GBの)ahamoがありますし、他社にも中容量帯で強いプランがあります。その中で、低容量で戦えばある程度勝算があると思っていました。ただし、将来的にデータ通信の使われ方が変わり、ミドルレンジのプランの容量が上がってくれば、守備範囲も変わってくるかもしれません。例えば、中容量が40GBぐらいになってくるようなことがあれば、ある程度生存領域を引き上げなければバランスが取れないとは思っています。
端末販売の方針も変わらず ドコモショップでの販売は検討
―― 次に端末販売に関してですが、7月にgoo SimsellerからOCN モバイル オンラインショップに名称が変わりました。ラインアップは相変わらず攻めているように見えますが、何か変化はありましたか。
植本氏 方針を変えたわけではないので、そこはそこで攻めています。ただし、電気通信事業法があるので、そこは事業者として守りつつ、ですね。時々の調達額や競合の価格帯を見ながら、その範囲内でやっているところです。
(名称変更は)事業移管でOCNモバイルと一緒になったのに、別にgoo Simsellerが存在するとややこしいからです。NTTレゾナントとして両方を運営する形になったので、オンラインショップは統合しました。それによって、特段、何か分かりにくくなったというような申告はありません。今まで通り、買っていただけています。
―― OCN モバイル オンラインショップはオンライン販売だけですが、エコノミーMVNOで競合するトーンモバイルは、ドコモショップでの取り次ぎ販売を行っています。同じように、リアルな場で販売するということはありうるのでしょうか。
植本氏 基本的に、エコノミーMVNOの枠組みでトーンモバイルができることはわれわれにもできると思っているので、検討はしています。ただ、トーンとガチンコで当たってもメリットがありません。食い合いをしてもしょうがないので、トーンのセットとは違うものが必要です。今はSIM単品が選ばれているので、端末をセットにしたとき、どういう属性の方に選んでいただけるのか、ですね。トーンモバイルはキッズ向け、シニア向けというところが特徴的ですが、そこではないところで端末をセットした際に、どういうユーザーが買うのかを考えつつ、チャンスがあればやりたいと思っています。
―― iPhoneを販売していますが、これは独自調達でしょうか。
植本氏 われわれは独自で調達しています。新品と中古品の両方をやっていますが、在庫を探すのには苦労しています。
―― 他社だと、グループのMVNOで共同調達的に取り扱っているところもありますが。
植本氏 やりたいですし、ドコモにも相談はしていますが、Appleの意向もあります。禁止行為規制があり、ドコモも、うちだけとやるわけにはいかなくなるのでビジネスとしてできるのか。可能性がないかは聞いていますが、双方にメリットがある形でやろうとすると、一筋縄ではいきません。将来的にできたらいいのですが、検討しなければいけないことは山積みです。
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