楽天モバイルの“0円廃止”がもたらした「ユーザー流出」と「収益改善」 黒字化の勝算は?:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
1GB以下無料の廃止で収入増が実現しつつある楽天モバイルだが、基地局への投資コストも一巡しつつある。収益の増加と費用の減少の両輪を回し、2023年の黒字化を目指すのが同社の戦略だ。また、総務省のタスクフォースから出された報告書案を受け、プラチナバンド獲得の公算も高まっている。
基地局建設やローミングコストを削減、23年中の黒字化を目指す
それでも、楽天モバイルが“火の車”であることに変わりはない。楽天グループのモバイルセグメントは、第3四半期で1290億円の赤字を計上。赤字幅は、前年同期の1052億円から拡大している。インターネットサービスやフィンテックといった他のセグメントはいずれも好調で黒字だが、それを打ち消している格好だ。2023年中に楽天モバイルの黒字化を果たすには、収入を増やすだけでなく、コストの削減も急務といえる。
その手段の1つが、基地局建設コストの削減だ。急ピッチでエリアを拡大してきた楽天モバイルだが、9月には基地局数が5万を突破。2023年中には、これを6万局まで増やし、人口カバー率99%超を目指す。アミン氏によると、「6万の基地局ができれば、コストは下がっていく。開設費用のOPEX(事業経費)が下がり、メンテナンスには自動化などを入れていく」という。「コストは徹底的に管理していく」(同)というのが楽天モバイルの方針だ。
もう1つは、ローミング費用の圧縮だ。現状、楽天モバイルは47都道府県全てで自社回線への切り替えを行っているが、ビル内や地方では依然としてパートナーエリアが残る。アミン氏は、「トラフィックの95%は楽天モバイルの自社ネットワークを流れている」とはいうものの、ローミングエリアには5GBの制限が設けられているため、データ容量が無制限になる自社エリアとはどうしても開きが生じる。基地局を6万まで増設し、人口カバー率が99%超になればこの費用を抑えられるというわけだ。
楽天モバイルの代表取締役社長、矢澤俊介氏は、「KDDIとの契約があるので詳細は申し上げられないが、エリアマップを見ていただければ、ローミングが郊外に集中していることが分かる。今後、(そのエリアには)1万局のオンエアを見込んでいる」と語る。コストが抑えられるだけでなく、楽天モバイルの自社回線比率を拡大することは、ユーザーの獲得にもつながる。プラチナバンドだけを借りるローミングエリアと比べ、通信速度が速く、データ容量も無制限で「体験が素晴らしくなる」(アミン氏)からだ。
UN-LIMIT VIIによる無料ユーザーの有料化と、基地局建設やローミングコスト削減の両輪で黒字化を目指す楽天モバイルだが、その収入はまだまだ少ない。データ通信と音声通話で1307円という第3四半期のARPUは、他社と比べると半額以下の水準だ。ドコモは、光回線を含まないモバイルだけのARPUが第2四半期で4060円。KDDIは3920円、ソフトバンクは3880円と、いずれも4000円前後。3社と比べ、楽天モバイルは料金が安いため、ARPUが上がりづらいのは事実だが、平均的なユーザーのデータ使用量が少ないことが影響している可能性もある。
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