楽天モバイルの“0円廃止”がもたらした「ユーザー流出」と「収益改善」 黒字化の勝算は?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
1GB以下無料の廃止で収入増が実現しつつある楽天モバイルだが、基地局への投資コストも一巡しつつある。収益の増加と費用の減少の両輪を回し、2023年の黒字化を目指すのが同社の戦略だ。また、総務省のタスクフォースから出された報告書案を受け、プラチナバンド獲得の公算も高まっている。
ARPUとユーザー数拡大で収入増も目指す
ARPUを上げるには、楽天モバイルをメイン回線として使うヘビーユーザーを獲得していく必要がある。段階制の料金プランを採用している同社の場合、他社以上に実利用を増やしていくことが鍵になりそうだ。仮に全体の半分が20GBを超過すれば、残り半分が1078円にとどまっていても、データARPUだけで2178円になる。3GB以下と3GB超20GB以下、20GB超のユーザーがそれぞれ3分の1ずつでも、結果は同じ2178円。天井に張り付くヘビーユーザーや、3GBを超える中容量のユーザーを増加させることが、ARPU上昇の鍵になる。
ネットワークの進化は、その有力な手段になりうる。5Gエリアの拡大は、ユーザーのデータ使用量増加に貢献するからだ。「干渉の問題がなく、最大の展開ができた」(同)という大阪では、5Gユーザーのデータ使用量が21.3GBと40%増加。支払う料金もデータ使用量に比例して上がり、ARPUは4Gのみ1612円から2013円へと25%上がっている。5Gの導入、拡大でデータトラフィックが増加するのは、世界共通の傾向。楽天モバイル以外の3キャリアも、これに近いデータを開示している。
ここでも重要になるのが、基地局数だ。楽天モバイルの5Gに対応した基地局は、9月時点で6440にとどまる。5万局を展開した4Gと比べると、まだ桁が1つ少ない。競合他社もすでに万単位で5Gの基地局を展開している。ドコモは、2022年3月末に2万局を開局。ソフトバンクも、2月に人口カバー率85%を超えた段階で2万3000局を設置している。KDDIは計画に遅れが出ているものの、今期中の人口カバー率90%達成を目指す。4Gのエリア展開が一段落した今、楽天モバイルも5Gの拡大に注力する必要がありそうだ。
また、エリアの拡大は、ユーザーの獲得にもプラスに働く。実際、人口カバー率が最も高い東京23区では、楽天モバイルの申し込み率が10.1%に達しているという。大阪府のように、人口カバー率で東京に迫る地域で8%を割っているケースもあるため、エリアと申し込み率が完全に連動しているわけではないが、やはり自社エリアを広げないことにはユーザーもついてこない。安定した収益を稼ぐには、契約者数そのものも増やさなければならない。1GB以下無料という“上げ底”がなくなった11月以降、どの程度の純増数を維持できるかに注目が集まる。
エリアの拡大については、楽天モバイルに追い風が吹いている状況だ。楽天モバイルは、10月1日に改正された電波法の新たな制度を活用し、ドコモ、KDDI、ソフトバンクから5MHzずつ周波数を奪う形で、プラチナバンドのサービスを開始しようとしている。その移行方法を巡り、既存3社と意見が大きく対立していたが、8日に発表された総務省の報告書案では楽天モバイルの主張がおおむね認められた。プラチナバンド獲得に大きく前進した格好で、基地局の「実装は2024年3月を目指す」(同)。
アミン氏によると、「プラチナバンドも、低コストで開設できる」という。1.7GHzの基地局と場所を共用する形で、「バックホールやダークファイバーなどの既存のインフラも活用する」(同)からだ。2023年に人口カバー率99%を達成した後、その数値には表れないエリアの“穴”をプラチナバンドで埋めていくことになる。ネットワーク品質やエリア展開で、大手3社にどこまで迫れるのか。これによって、楽天モバイルの成否が左右されそうだ。
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