Snapdragon SummitでSnapdragon 8 Gen 2発表――「Snapdragon」ブランドは一般に浸透していくか:石川温のスマホ業界新聞
Qualcommが3年ぶりに米ハワイ州でSnapdragon関連のイベントを開催した。今回のイベント名は「Tech(技術)」という名前がなくなったことが地味にポイントで、Snapdragonというブランドを強く訴求したいという意思が見え隠れしている。
今週、3年ぶりにアメリカ・ハワイ州マウイ島に来ている。クアルコムが開催する毎年恒例のイベント「Snapdragon Summit」の取材のためだ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年11月19日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
実はこのイベント、今年は名称が微妙に変化している。これまでは「Snapdragon Tech Summit」だったのが「Tech」というフレーズが消滅しているのだ。
モバイル分野のヴァイスプレジデントであるアレックス・カトゥージアン氏によると「テクノロジーが当たり前になるなか、Snapdragonは最高のユーザー体験が得られるブランドであることをアピールしたかった」と語った。
実際、今回の基調講演を見ると細かい技術やスペックは語ることなく、「Snapdragonブランド推し」が顕著で、それぞれの技術も「ユーザーがどう便利に感じるか」というわかりやすい見せ方となっているのだ。
例えば、今回、発表されたSnapdragon 8 Gen 2においては、AI関連は「Snapdragon Smart」、5GやWi-Fiは「Snapdragon Connect」、カメラは「Snapdragon Sight」、音声関連は「Snapdragon Sound」というようにグルーピングされている。
これはスマートフォン向けのチップに限った話ではなく、クルマやVR、AR関連、PC周りもすべて「Snapdragon」ブランドで統一されるようになった。
唯一、IoT関連はいまだに「クアルコム」ブランドになっているようだが、これはカトゥージアン氏の担当部署ではないらしい。
今回、クアルコムとマンチェスター・ユナイテッドのパートナーシップもアピールされた。同チームには10億人のファンがいると言われているが、そのうち、Snapdragonがなんであるかを理解しているのは3億5000万人になるという。それだけでも多い数字だが、クアルコムではパートナーになることで、Snapdragonの認知度を上げたいようだ。
すでにクアルコムはモータースポーツにも積極的で、F1ではフェラーリのスポンサーにもなっている。
これまでクアルコムは単に技術が進化したからといってユーザーに訴求しても一切、伝わらないというジレンマを感じていたようだ。また、チップのスペック的な進化の限界が見え始めていることもあり、技術やスペックからブランドの訴求にシフトしている感じも見受けられる。
カトゥージアン氏は「我々には最高の技術があるが、ユーザーと結びつかない技術では体験価値は上がらない。一方で、技術を開発しても、その技術をどのように消費者に伝えるか、伝えることも難しく、消費者も理解できていない。フィーチャーフォン時代、『UMTSでビデオ通話ができますよ』といっても理解されなかった。しかし、数年後、アップルがやってきて『FaceTimeがありますよ』といったことで一気に広まった。マーケティングにおいて、Snapdragonが我々の会社を引っ張っていくことになる」と語る。
今回のイベントに参加していた同業者は「Snapdragonの記事ではPVが稼げない」とぼやいていた。まさに問題はここで、クアルコムとしてはいかにSnapdragonのブランド価値を上げ、ユーザーに関心を持ってもらえるかが、これからの課題となりそうだ。
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