Qualcommとソニーの協業で変わるスマホのカメラ体験 Snapdragon 8 Gen 2で実現したこと:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
Qualcommのスマートフォン向けフラグシッププロセッサ「Snapdragon 8 Gen 2」では、AIの強化に加え、カメラの制御を担うISPも大きく進化させた。その一端を担うのが、センサーを開発するソニーセミコンダクタソリューションズだ。特にAIを用いたカメラ性能が向上しているという。
11月15日から17日(現地時間)の3日間に渡り、米国ハワイ州で、Qualcommの「Snapdragon Summit」が開催された。コロナ禍でオンライン開催に切り替えていた同イベントだが、21年は小規模ながら現地開催を復活。2022年は名称をSnapdragon Summitに改め、世界各国から参加者が集った。渡航制限が厳しい中国のメディアや登壇者が少なかったことを除けば、ほぼコロナ禍前に戻ったと言っていいただろう。
そんなSnapdragon Summitで発表されたのが、次期フラグシップモデル向けのプロセッサ「Snapdragon 8 Gen 2」だ。同モデルは、AIの強化に加え、カメラの制御を担うISPも大きく進化させた。その一端を担うのが、センサーを開発するソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、肩書き以外ではソニーと表記する)だ。
同社は、2021年のイベントでQualcommとのジョイントラボ設立を発表。その成果がSnapdragon 8 Gen 2に取り込まれている。では、それはどのようなものか。ソニーセミコンダクタソリューションズのモバイルシステム事業部 副事業部長の御厨道樹氏に話を聞きつつ、イメージセンサーメーカーに接近しているQualcommの狙いを解説していきたい。
一押しはAIカメラ、ソニーとは新しいHDR撮影を実現
「Snapdragon 8 Gen 2で一押しの機能を1つ挙げるとすれば、やはりAIカメラ。高画質なカメラをAIがサポートすることで、ユーザー体験がよいよいものになる」――こう語るのは、Qualcommでシニアバイスプレジデントを務める、アレックス・カトージアン氏。実際、Snapdragon 8 Gen 2は、AI処理を担うDSP(Digital Signal Processor)とも連携し、その表現力を大きく伸ばした。
新たに採用される、「セマンティックセグメンテーション」は、そんなAIの力を応用した機能の1つだ。この機能は、被写体をリアルタイムに分析し、要素ごとに分解。それぞれに最適な処理を施すことで、写真の仕上がりがよりビビッドになる。また、トリプルカメラで18ビットのデータを扱えるようになり、より美しいボケを実現する「ボケエンジン2」を搭載しているのも、Snapdragon 8 Gen 2の特徴だ。
QualcommがISPの機能を強化しているのは、「スマートフォンを購入する際に、カメラは本当に重視されている」(同)からだという。とはいえ、Qualcommが手掛けられるのはあくまでISPまで。カメラをカメラとして機能させるには、光を取り込むためのセンサーや、それを受けてデジタルデータに変えるセンサーが必要になる。そこでQualcommは、ソニーやサムスン電子といったセンサーメーカーと提携。協力関係を築くことで、カメラ機能の強化を図っている。
Snapdragon 8 Gen 2では、サムスンの2億画素(200メガピクセル)センサーである「ISOCELL HP3」をサポート。さらに、ソニーセミコンダクタソリューションが開発する「IMX800」と「IMX989」の2つに対応。前者は1/1.5型、後者は1型のセンサーで、いずれも「Quad Digital Overlap HDR」という新機能に対応する。これこそが、ソニーとQualcommのジョイントラボで生まれたものだという。
「Quad Digital Overlap HDR」とは、その名の通り、4枚の画像を合成し、HDRを行う技術のこと。クアッドベイヤー配列のセンサーを生かして撮った2枚の写真と、時間軸をずらして撮った2枚の写真をそれぞれセンサー内で合成。出来上がった2枚の画像をSnapdragon側で合成し、HDRを行う仕組みだ。ソニーの御厨氏によると、この新機能によって従来のHDRより暗所でのノイズを低減できるという。以下に掲載した画像は、その成果だ。
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