Qualcommがソニーと提携してカメラ機能を強化、Appleなどに対抗する狙いも:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
Qualcommが、スマートフォン向けの新たな最上位プロセッサ「Snapdragon 8 Gen 1」を発表した。CPUやGPU以上に、カメラやAIといった今のスマートフォンに求められる性能にフォーカスして、性能を向上させた。Qualcommとソニーの提携も発表されたが、その背景には、垂直統合型の開発体制でカメラ機能を強化するAppleなどに対抗する思惑がありそうだ。
Qualcommは12月1日に、自社イベントのSnapdragon Tech Summitを開催。フラグシップモデルなどに採用される最上位のプロセッサ「Snapdragon 8 Gen 1」を発表した。3桁の型番が付与されていた従来のSnapdragonから命名規則を改め、数字で性能の高低を表すとともに、世代を明確にした格好だ。
Snapdragon 8 Gen 1は、4nmプロセスのKryoコアを採用。GPUのAdrenoも進化した。CPUは20%、GPUは30%性能が向上しつつ、それぞれ電力も改善されている。より大きく進化したのが、画像処理をつかさどるISP(Image Signal Processor)や、第7世代のAIエンジンだ。CPUやGPU以上に、カメラやAIといった今のスマートフォンに求められる性能にフォーカスして、性能を向上させたのがSnapdragon 8 Gen 1の特徴といえる。
こうした中、同イベントではQualcommとソニーの提携も発表された。背景には、垂直統合型の開発体制でカメラ機能を強化するAppleなどの競合他社に対抗する思惑がありそうだ。
ISPやAI処理能力を大幅に強化したSnapdragon 8 Gen 1
Qualcommは12月1日から2日かけ、自社イベントのSnapdragon Tech Summitを米ハワイ州で開催した。初日の基調講演で披露されたのが、フラグシップモデルなどの最上級スマートフォンに搭載されるSnapdragon 8 Gen 1だ。同チップを搭載したスマートフォンは、2021年末から登場する見込み。ソニー、シャープといった日本メーカーはもちろん、モトローラやOPPO、Xiaomi、ZTEといった日本でおなじみの海外メーカーも、Snapdragon 8 Gen 1を採用する。
Snapdragon 8 Gen 1は、CPUやGPUの性能以上に、ISPの進化やAIの処理能力向上に比重が置かれたプラットフォームだ。これは、最新のスマートフォンに求められるニーズを色濃く反映した結果といえる。例えば、ISPは18ビットに対応しており、Snapdragon 888と比べて4000倍を超えるカメラデータを、毎秒最大3.2ギガピクセルで撮影することができる。8K HDRに対応していたり、ビデオ撮影用の新たなBokeh Engine(ボケエンジン)を搭載したりするのも、撮影を重視していることの表れだ。
同様にAIの処理能力も大きく向上した。第7世代のAIエンジンを搭載したことで、テンソル(Tensor)アクセラレーターが2倍に高速化。共有メモリも2倍にサイズが拡大した。ソフトウェア面での改良も加え、Qualcomm Neural Processing SDKの性能を2倍に上げた。ハードウェアとソフトウェアをともに2倍ずつ改善することで、AIの処理能力はSnapdragon 888から約4倍に向上。イベントで公開された各種ベンチマークの結果も、それを裏付ける。
カメラとAIは、ともに最新のスマートフォンで重視される機能の1つだ。特にハイエンドモデルでは、いかに高画質な写真や動画が撮れるかが差別化の軸になっている。ISPだけでなく、AIを活用したノイズ削減やズーム、HDRなども、スマートフォンのカメラでは重要な要素だ。単純な処理能力の高低ではなく、メーカーが重視するユースケースに特化した機能を進化させているのが、Snapdragon 8 Gen 1といえる。
実際、iPhone用のAシリーズを自社で設計するAppleや、Pixel 6シリーズから自社で設計したプロセッサの「Tensor」を採用したGoogleも、ISPやAIの処理能力に注力している。米国の制裁が続き、自社でのプロセッサ開発が難しくなってしまったHuaweiも、KirinシリーズはISPやAIの強化に重きを置いていた。同様に、QualcommもISPやAIエンジンの改良に注力していたが、Snapdragon 8 Gen 1でもその傾向に変わりはない。
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