スマホカメラが進化した裏側で起きていること ソニーのイメージセンサー開発部隊に聞く(1/3 ページ)
すごく暗い場所でもAFが効くようになったり、気がついたらダイナミックレンジが広くなったりと、ここ数年のスマホカメラはスペックで語られない基本性能が上がっている。そこでセンサーメーカーであるソニーセミコンダクタソリューションズに話を聞きにいった。
ここ数年のスマホカメラの進化ってすごいよなと思うのである。
4K動画を当たり前のように撮れるとか、夜景モードを使えばどんなに暗くてもきれいに撮れるとか、カメラを3つも4つも搭載しているとか、そういうスペックで分かりやすいところじゃなくて、気がついたら写真がゆがまなくなったよなとか、気がついたらすごく暗い場所でもAFが効くようになったとか、気がついたらダイナミックレンジが広くなったとか、そういうなかなかスペックで語られない基本性能が上がっているのだ。
そしてとうとう、ハイエンドコンデジと同じ1型センサーまで登場した。
そのカメラ性能の進化を見ていると、何が起きているのか、なぜ1型という大きなセンサーが出てきたのか、なぜデフォルトは1200万画素(以下、12MPと記す)なのに4800万画素とか1億画素なんて画素数が必要なのか、気になるよね。
そういう性能や技術の話は、端末メーカーではなく、カメラの大本に聞かねば話は始まるまい、ということで、行ってきたのである。目指すは神奈川県厚木市にあるソニーセミコンダクタソリューションズ。
カメラの心臓部である「イメージセンサー」を開発している会社だ。多くのスマートフォンがソニーのイメージセンサーを搭載しているし、中には堂々と「うちはソニーのIMX989」を採用していますと型番まで明記するメーカーもある。それだけソニーのイメージセンサーにはブランド力があるのだ。
そこで、モバイル向けイメージセンサーの最新技術について、ソニーセミコンダクタソリューションズ モバイルシステム事業部 副事業部長である小関賢氏の元に突撃し、同時に最新イメージセンサーのデモも見せてもらってきたのである。
ゆがまない秘密は高速化にあり
―― ここ数年で、スマホカメラの基本性能が気付かないうちにぐんぐん上がっているなと感じています。その秘密について伺いたいのですが、まず知りたいのは「ゆがみ」。
昔のスマホカメラは撮るときに素早く動かしたり、高速に動くものを撮ったりすると、斜めにゆがんで写ってしまいましたよね。今は、ゆがまないとはいえないまでも、ほとんど気にならないレベルになっています。これはCMOSセンサーの技術の進歩によるものですよね。
小関氏 今のCMOSセンサーは原理的にゆがみます。ゆがみを抑えるにはいかに速く読み出すかが重要です。それにはいったんメモリにためるなど複数のやり方がありますが、今はその読み出しが速くなっていまして、通常の撮影ではほとんどゆがまない映像を撮影できるようになっています。
―― ソニーは一時期Xperiaなどで「アンチディストーションシャッター」という名で、高速な被写体でもゆがまないのをウリにしていました。最近その言葉を聞かなくなったのはもはやゆがまないのが当たり前になっているからでしょうか?
小関氏 そうです。全ての機種で速くなったので「アンチディストーション」をアピールせずともよくなったのです。CMOSイメージセンサーの一番の特徴は受けた光をセンサーチップ上でデジタル化して出力することですが、半導体の高速化でそれが速くなっているのです。そのトリガーとなっているのが積層技術です。世代の進んだ高速な半導体を積層構造に作ることで、出力するデータのスピードを上げることができているのは、大きな技術の進化といえます。今のモバイル向けセンサーでは、ほぼ積層型が採用されていると思います。
※積層型にすることでより大規模な回路をチップ上に搭載できるようになった(参考リンク)。
CMOSセンサーはラインごとに信号を読み出すので、どうしても最初と最後でタイムラグが発生し、結果として斜めにゆがんだ映像になってしまう。積層型はその信号処理をセンサー内で行うことで高速化され、タイムラグが短くなり、高速な被写体を撮影してもゆがみが少なくなるということだ。
今は多くの端末がこの積層型になっているということなので、古い機種の人は買い換えるとそこが改善されるかも。これは魅力的。
そして積層型という構造は、この後もあらゆるところで効いてくるのだった。
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