最新SoC「Snapdragon 8 Gen 1」では何が変わるのか? カメラからセキュリティまでを解説:Qualcomm Snapdragon Tech Summit 2021(1/3 ページ)
Qualcommが発表した新プロセッサ「Snapdragon 8 Gen 1」は、下り最大10Gbps、上り最大3.5Gpbsの高速通信が可能になる。カメラの画像処理性能も強化され、明暗の激しい場所や暗所などよりキレイに撮影できるようになった。カメラが常時オンになることで、セキュリティレベルも向上した。
毎年恒例となったQualcommの「Snapdragon Tech Summit」が2021年も11月30日と12月1日(米国時間)の2日間にわたって開催された。Snapdragon新製品や同社の最新戦略が発表される同イベントだが、2021年も「Snapdragon 8 Gen 1」をはじめ、複数の製品や技術がアピールされている。一方で、通信やモバイルを中心としていた同社はそのありようを少しずつ変化させているようにも思える。そのあたりをチェックしていきたい。
Snapdragonは既に“モバイル”だけのSoCではない
モバイル端末向けに各種チップから通信モジュールまでを包含したSoC(System on a Chip)として「Snapdragon」の名称で製品が初めてリリースされたのが2007年のこと。それから14年が経過するが、その歴史はほぼスマートフォンとともにあった。現在につながるスマートフォンの“形”を初めて提案したのは2007年に発売されたiPhoneだが、「iPhoneではないスマートフォン」を支えてきたのが他ならぬSnapdragonだからだ。故にSnapdragonが進化すれば、それに応じてスマートフォンの機能も向上し、そこでのフィードバックは再びSnapdragonの機能強化の方向性を決めることになる。そうしたサイクルを繰り返す中で今日のモバイル文化が形作られ、利用シーンが広がっていった。
もちろん、常々新しいサービスが登場し、日々利用スタイルも変化しているが、人々がモバイル端末に求める機能はある程度固定化されつつあるように思う。故にQualcommのSnapdragon新製品に関するアピールも、単純にパフォーマンスの数字上の進化を示すだけでなく、「この用途でどのようなことが可能になったのか」を事例として示す例が増えてきた。
これを象徴するのが米Qualcomm Technologies MCIビジネス担当ゼネラルマネジャー兼SVPのAlex Katouzian氏が示したスライドだ。以前までならCPUやGPUといったSoCの機能ブロックごとに行っていた説明を、あえて「Experience」という形で用途ごとに区分けしてアピールすることで、よりユーザー視点でそのメリットを理解しやすくなる。これは、汎用(はんよう)性を求められるPCに対し、よりユーザーの身近にあるスマートフォンは、いかに各ユーザーのニーズを満たせるかが重要であることが分かる。
またSnapdragonという名称だけを聞くと、業界の人はまず「モバイル端末向けSoC」を想像するかもしれない。だが「Snapdragon」のブランドを冠した製品群は現在では多岐にわたっており、PC向けのSoCからウェアラブル、組み込みシステム(車載やネットワークカメラなど)、ホーム/スマートオーディオ、XR、Bluetoothオーディオ(ワイヤレスイヤフォンなど)と幅広い。つまりSnapdragonを搭載するデバイスは既にモバイルの領域を飛び出し、その上で動作するアプリケーションやサービスが重要となりつつある。
Qualcommでは「Metaverse(メタバース)」のキーワードで表現していたが、デジタルの世界ではアプリケーションがその中核であり、ハードウェアはそこにアクセスするための窓口的な存在にすぎないという考え方がある。窓口でのアクセスに必要な技術や製品を一通りそろえ、そこで活動するメーカーやベンダーを下支えすることが重要というわけだ。今後10年や20年先のSnapdragonを考えるうえで、同社がどこを目指しているのかがこのイメージから何となく見えてくる。
関連記事
- Qualcomm、スマホ向けハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 1」発表
Qualcommは、スマホ向けハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 1」を発表した。「Snapdragon 888」の後継に当たる。先代よりも性能は20%向上し、電力効率は30%高いとしている。 - Qualcommがソニーと提携してカメラ機能を強化、Appleなどに対抗する狙いも
Qualcommが、スマートフォン向けの新たな最上位プロセッサ「Snapdragon 8 Gen 1」を発表した。CPUやGPU以上に、カメラやAIといった今のスマートフォンに求められる性能にフォーカスして、性能を向上させた。Qualcommとソニーの提携も発表されたが、その背景には、垂直統合型の開発体制でカメラ機能を強化するAppleなどに対抗する思惑がありそうだ。 - 「Snapdragon 888」でユーザーはどんな恩恵を受けるのか? 進化の中身を徹底解説する
Qualcommが新たに発表した「Snapdragon 888」は、865から25〜35%程度の性能向上が図られている。従来の2チップソリューションから1チップソリューションへと変更されたことで、デバイス省電力や設計面で優位になった。12月2日(米国時間)に開催したイベントでは、カメラやゲームなど、具体的なシーンでユーザーがどんな恩恵を受けるかの説明に時間を割いた。 - Qualcommが安価な5Gプロセッサ「Snapdragon 4」発表 「誰もが5Gを利用できるように」
Qualcommが9月3日(日本時間)、ミッドレンジスマートフォン向けに5G対応プロセッサ「Snapdragon 4」シリーズを発表した。比較的安価なスマートフォンに適用できるSnapdragon 4が5Gに対応したことで、世界各国の5G普及に弾みをつけたい考え。XiaomiのスマートフォンがSnapdragon 4シリーズを搭載する最初のメーカーになるという。 - Qualcommの独自スマホ「Smartphone for Snapdragon Insiders」が9月25日発売 約16.5万円
QualcommのASUS製5Gスマートフォン「Smartphone for Snapdragon Insiders」が、ASUS Store限定で9月25日に発売される。価格は16万4880円(税込み)。Qualcommのコミュニティー「Snapdragon Insiders」向けのオリジナルスマートフォン。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.