KDDIとソフトバンクがデュアルSIMサービスを3月にも開始――宮川社長「発着信を同一番号でできるようにしたい」と暴走:石川温のスマホ業界新聞
KDDIとソフトバンクが連名で「デュアルSIMサービス」の提供について基本合意したことを発表した。各社の決算説明会を取材すると、どうやらソフトバンクの宮川社長が“先走っている”面もあるものの、NTTドコモを含む3社が他社のネットワークに対応するSIMカードを提供する方向でまとまりそうである。
KDDIとソフトバンクは2月2日、通信障害や災害時などにお互いの回線が使えるよう、両社でデュアルSIMサービスを3月中に提供すると発表した。
高橋誠KDDI社長によれば「数百円」、宮川潤一ソフトバンク社長は「数百円の下のほう」で、オプション的な扱いになるようだ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年2月4日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
すでにソフトバンクユーザーが、KDDIのpovoを契約するなどすれば月額ゼロ円で、サブ回線の運用ができる。しかし、今回の取り組みは、auショップの窓口でオプションを契約する感覚でソフトバンク回線が契約できるというイメージだ。オンライン契約からほど遠いユーザーも店舗で契約できるぐらい簡単にするというのが狙いだろう。
現場レベルでは「なにも決まっていない」(関係者)のようだが、宮川潤一社長の頭の中にはかなり具体的なサービスイメージが描かれているようだ。
宮川社長は「どこまで現場がやりとりしているかは置いておいて、全然知らない電話番号からかかってきたら、身内でも電話をとってもらえないのではないか。自分でも、息子からの電話だと気がつかず、とらない可能性がある。
できれば、発着信を同一番号でできるようにしたい。例えば、いまなら、iPhoneとApple Watch、これは同一番号で提供しているし、テクノロジー的には不可能ではない。IP電話も、0AB~Jと050を同一番号化してサービスを提供した時期もあった。やり方は頭の中で整理できている。問題はそのコストをどうするか。話し合いを現場でしていないのであれば詰めなくちゃいけない。僕の思いつきで喋ったので、暴走した。すいません」と、現場レベルを無視して、かなり思い入れを込めて語っていた。
ただ、宮川社長としては電話番号もそうだが、デュアルSIMで別のキャリアに通信回線がつながっても、アプリなども通常時と同等に作動するようにしたいとしている。
とはいえ、宮川社長の暴走っぷりは明らかで現場レベルで検討されている話ではない。もちろん、今年3月中の提供は間違いなく無理だろう。しかし、このような方向性で開発が進むのであれば喜ばしい限りだ。
単なる2つのキャリアを契約するデュアルSIMではなく、きちんと同じ番号で稼働する、ワンナンバー的に使えるサービスであれば、数百円のオプションを支払ってもいい、という人が出てくるのは間違いない。
NTTドコモとも交渉しているようだが、先にKDDIとソフトバンクでサービスが提供されてしまったら、NTTドコモから乗り換えるというユーザーも出てきてもおかしくないほどの内容だ。
確かに便利であることは間違いないが、一方で、これまでeSIMを提供し、サブ回線として存在感を出していたMVNO、特にIIJにとってみたら、かなりの逆風になるのではないか。
通信障害時のローミングに関する議論がされていた際も、IIJからMVNOのビジネスを潰すようなことはして欲しくないと危惧されていたりもした。
来週、NTTやIIJの決算会見があるだけに、KDDIとソフトバンクの動きにどのように意見するかが見物といえそうだ。
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