IIJ勝社長、KDDIとソフトバンクのデュアルSIMを「MVNOにも開放してほしい」と要望
IIJが2月8日に2022年度第3四半期の業績を説明。ネットワークサービス、SI、モバイルの3領域が好調で増収増益となった。KDDIとソフトバンクが予定している予備回線向けの「デュアルSIMサービス」については「MVNOにも開放してほしい」とコメントした。
IIJ(インターネットイニシアティブ)が2月8日、2022年度第3四半期の決算説明会を開催。第3四半期の累計売上は1853.4億円で前年同期比11.9%増、営業利益は187.9億円で前年同期比15.3%の増収増益となった。
モバイルを除くネットワークサービス、SI(システムインテグレーション)、モバイルの3領域が総じて好調。ネットワークとSIでは、放送局向けや大手金融機関向けの大型案件を受注している。モバイル事業も堅調に伸びており、第3四半期時点での総回線数は前年同期比59.2万増の396.8万に達した。
モバイル回線数の内訳は、法人モバイルが168.5万、IIJmio(個人)が119.7万、MVNEが108.6万。法人モバイルでは見守りGPSトラッカーの追加発注やデジタル庁向けモバイル案件などで数を伸ばした。IIJmioは旧プランからより安価な新プラン(ギガプラン)への加入が増えたことで単価は低下して「利益の伸びが弱い」(渡井昭久CFO)が、「獲得が進んでいるので増収に転じている」(同氏)とのこと。勝栄二郎社長氏も「ギガプランがコンスタントに伸びることでトータルでmioの増加をけん引している」と手応えを話す。
IIJmioの回線数は、第2四半期の117.8万から1.9万増にとどまった。第1四半期から第2四半期の5.2万増よりも伸びが鈍化しているが、「楽天の(0円廃止の)影響もあって10月まで駆け込みなどがあって伸びたが、その効果が剥落して落ち着いてきた」と勝氏は話す。「それに対して、いろいろな新しい挑戦を考えている」とのこと。
なお、ドコモに支払う接続料は、2020年度から将来原価方式を導入しており、毎年4月にドコモから提示された接続料が翌年12月に確定する。2021年4月に提示された1Mbpsあたりの接続料は2万8385円だったが、2022年12月に2万7024円に確定し、2020年度の確定単価から27.5%減となった。見積もりより安価になったため、2022年度第3四半期に5億円強が売上にプラスされる。
勝氏は現行の将来原価方式での算定について、「もう少し透明性を高めてほしい」と要望を出す。「何で接続料がこうなったのかが開示されていないので、それをやれば(透明性を高めれば)、もう少し将来原価方式も予測可能性が高まるのではないかと思っている」
直近のトピックとして、KDDIとソフトバンクが、非常時の予備回線向けに「デュアルSIMサービス」を提供することを発表した。またソフトバンクの宮川潤一社長は、1つの電話番号で2回線を運用する考えも示している。勝氏は「KDDIとソフトバンクのサービスは具体的なことがはっきりしないが、1つの番号で果たして技術的に可能かどうか、これからの検証になると思う」とコメントした。
現状、デュアルSIMサービスはMVNOとの連携は進んでいないようだが、IIJmioもeSIMや低容量プランなど、サブ回線に適したサービスを提供しているため、このサービスとは競合する。勝氏は「一般論として言うと、災害時にこういうサービスがあることは利便性の面でいいことだと思う。ただ、そういうものを自社の利益のためにやるのではなく、MVNOにもぜひ開放してほしいと思う」と要望を出した。
総務省開催の「競争ルールの検証に関するWG(第38回)」で、IIJをはじめとするMVNOが、端末の単体値引きについても規制すべきとの意見を表明した。端末値引きは2万円までに制限されているが、これは端末と回線がセットで提供される場合で、単体販売には当てはまらない。「建前では(端末と回線は)別々に売っているけど、結果的に一緒に売っている。そういう手法で回線を増やしていることが問題になっている。公正取引委員会もそれについて調査している。端末をバラバラに売る場合でも、2万円というルールを当てはめるべきだと主張している」(勝氏)
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