NTTドコモはデュアルSIMサービスをいつ始めるのか――井伊ドコモ社長に直接、聞いてみた:石川温のスマホ業界新聞
KDDIとソフトバンクが3月中にデュアルSIMサービスを始めるとされる中、NTTドコモはどうなのか――2月下旬にスペイン・バルセロナで行われた「MWC Barcelona 2023」で、井伊直之社長に直接聞いてみた。
3月中にもスタートすると言われているKDDIとソフトバンクによるデュアルSIMサービス。NTTドコモについては島田明NTT社長が「お互いにあんまり話をしないことになっているので、コメントは控える」と語り、スタート時期に関しては「(2社と)同じようなタイミングで展開できると思っているが、日程は定かではない。出来次第」ということになっていた。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年3月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
決算会見で回答してくれたものの、持ち株会社の社長ということで、どこまで他社の交渉に関与しているかは、かなり謎であった。
そんななか、MWCにおいて、井伊基之NTTドコモ社長にデュアルSIMの進捗状況について聞くことができた。
「2社とは協議はもちろん始めてて、準備を進めてる。彼らはいち早く2社での提供をアナウンスされたんで、われわれはそれぞれの会社と今やってます。
大差なくなると思います。すごい高いもんじゃないし、200円とか保険みたいな金額だったら。
法人向けと個人向けみたいになるんじゃないですかね、エンドユーザーは。正直、飛ぶように売れるもんじゃないなと私は思ってます。
法人はどうか分かんないけど、個人はそれよりもネットワークをちゃんとしろよって話と、なんかあったときにローミングやるんだろって話と、なんでエンドユーザー側でダブルで持たなきゃいけないんだっていうのは一方で絶対ある議論だから。
ただ、そんなこと言っていられなくて。絶対バックアップが要るんだっていう方はいると思うんです。だけど、そんな人ばかりではない。しかも、デュアルSIMはスペック見ると、そんなすごい高速データ通信ができるわけじゃない。
何とか補完的に通信ができるっていう領域。普通のSIMともう1個のSIM、使い分けるというよりは、まさかのときのバックアップっていう感覚です。
できることにも制限があるから、そこでがんがんYouTube見るなんてことはあんまり目的にしてないから。そういう意味では保険的な役割であり、それが飛ぶように売れるようだとすると、僕らのネットワークは一体何なんだと。誰も信用してないって話になっちゃう。
ローミングの話も動いてますし、いろんな手段で1社のネットワークが止まったときに補完しましょうねっていうのを考えてますと。うち、結構、加入者数が多いので、全部がダウンすることはないかもしれないけど、全部をどっかのキャリアに負担してくださいって言っても、結構な負担になると思うんですよね。
ソフトバンクさんとか、KDDIさんとか、今後ちゃんと組んで実現すれば、応分にやっていただけるって感じ、分散するって感じですかね。
逆にいうと、2社が先行してくれたので、どれぐらい市場でインパクトが出るかっていうのを見させていただきたいと思ってます。必要な機能だと思ってるんですけど、あれを競って先にやんなくちゃいけないっていうふうに頑張っても、あれ、保険なんで。そこを取れなかったから事業が傾くっていう話でもない。
一番つらい目に遭った高橋さんのところが、まず信用回復のためにしっかり打ち出されたっていうのは納得できます。だから、今、高橋さんたちともやってますし、宮川さんたちともやってます。時期はそれぞれ準備、整ってからになると思います」とのことだった。
ちなみに、高橋誠KDDI社長には「宮川さんがひとつの番号でデュアルSIMを提供したいと話していましたが、実現できるんですか」と尋ねたところ「それは僕もわからない。宮川さんに確認しようと思っていたところ」との回答だった。
デュアルSIMでのワンナンバー、いまのところは宮川社長の構想段階に留まっているようだ。
関連記事
MWCで盛り上がりを見せた「Open RAN」――井伊ドコモ社長「芸風が違う」、三木谷楽天会長「見下されている」
先日スペイン・バルセロナで開催された「MWC Barcelona 2023」では、これからの5Gネットワークの要となる「Open RAN(O-RAN)」が1つの注目ポイントだった。日本からは、NTTドコモとRakuten Symphony(楽天シンフォニー)がO-RANを強く訴求していたが、両社は芸風が違うので互いに手を取り合って事業を展開するシナリオも考えられる。5Gが発展途上の中、ドコモが早くも「6G」を大々的にアピールする理由 キーパーソンに聞く
世界最大のモバイル展示会「MWC Barcelona 2023」にドコモが4年ぶりに出展。6Gをテーマにした展示は、数はそれほど多くなかったものの、他では見られないもの。6G時代には空のエリア化、地上100%のカバー率は当たり前になるという。「Open RAN」で火花を散らすドコモと楽天 成り立ちは違うが“共演”もあり得る?
無線アクセスネットワーク(RAN)の機器をオープン化する取り組み「Open RAN」でドコモと楽天が激しい火花を散らしている。楽天シンフォニーを展開する楽天は、海外拠点も拡充している。これを追いかける立場にいるドコモは、O-RANを推進するためのブランド「OREX」を発足させた。KDDIとソフトバンクがデュアルSIMサービスを3月にも開始――宮川社長「発着信を同一番号でできるようにしたい」と暴走
KDDIとソフトバンクが連名で「デュアルSIMサービス」の提供について基本合意したことを発表した。各社の決算説明会を取材すると、どうやらソフトバンクの宮川社長が“先走っている”面もあるものの、NTTドコモを含む3社が他社のネットワークに対応するSIMカードを提供する方向でまとまりそうである。ドコモも「デュアルSIMサービス」提供へ 「ソフトバンク、KDDIと話をしている」
NTT(日本電信電話)が2月9日に開催した決算説明会で、島田明社長がバックアップ回線の「デュアルSIMサービス」について言及した。デュアルSIMサービスは、緊急時に使用できる予備回線用のサービス。KDDIとソフトバンクが2023年3月下旬以降に提供することを発表していた。
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.