月額1390円で10GB+5分かけ放題 日本通信が“激安プラン”を提供できる理由――福田社長に聞く:MVNOに聞く(2/3 ページ)
日本通信が「合理的みんなのプラン」を改定。月額1390円は据え置きで、データ容量を6GBから10GBに増やし、70分の無料通話だけでなく5分かけ放題も選べるようにした。プランを改定した背景には、5月24日に導入された「MNPワンストップ方式」があった。
本人確認から出荷に向けてのプロセスは圧倒的に安い
―― 今回のデータ容量改定ですが、原資は接続料の値下げでしょうか。
福田氏 実はあまり関係がありません。うちで取っている平均速度が、どんどん上がってきているからです。今の計算だと、接続料(の総額)は逆に値上がりになっています。大臣裁定で相互接続がスタートしたときであれば、速度的には10Mbpsもあれば十分でしたが、今はそんな速度では相手にされません。速度の上がり方が、接続料の下がり方より速いということです。接続料は、あくまで10Mbpsあたりの値段ですが、市場に求められている速度はそれ以上に比率で上がっているということですね。
―― 値下げ分だけデータ容量を増やすと、それを上回るだけデータ通信が使われてしまうということですね。
福田氏 そうです。弊社はコロナ禍で、オプレーションを全て群馬県に移しました。一時は五反田(東京都品川区)にありましたが、その後、規模を縮小し、いったんは本社からSIMカードを出荷していました。ただ、ここは出荷にいい場所ではない(笑)。そこで、群馬に作ろうと言うことで、今は100%そちらから出荷をしています。SIMカードの見た目は全部同じですが、1つ1つ電話番号は違う。これを違う人に出荷してしまうと、大変なことになってしまいます。ですから、それが絶対に起きない仕組みを作りました。今でも、半年に1回ぐらいプレビューしながらアップデートしています。
この辺のコスト、特に人件費ですね。オペレーションは徹底的に効率化しないと、コストが膨らんでしまいます。他社との比較は難しいですが、本人確認から出荷に向けてのプロセスは、圧倒的に安くできています。そういうところが(低料金で提供できる)キモになっています。
1月からはマイナンバーカードを読み取る仕組みも入れ、人が目視せずに本人確認ができるようになりました。デジタル的にチェックすると、システムコストはかかりますが、人に比べるとコストは下げられ、お客さまにとっても便利になります。そちらの方にどんどんシフトさせていきたいと考えています。帯域の料金は実際には上がっているという感覚が強いので、そういうところでオペレーションコストを徹底的に下げています。
―― マイナバーカードの本人確認はeSIMとも相性がいいですね。
福田氏 今は10分もあれば完了しますからね。ワンストップで対応しようとしています。今、事務手数料は3300円かかっていますが、マイナンバーでやれるところは今後下げられるのではないかと思っています。eSIMもそうです。プラットフォーム利用料は高いですが、少なくとも人手はかからない。人件費はどんどん上がっていくので、そういうところが経営力のキモになります。
―― 逆に、大手キャリアは事務手数料を上げていますが……。
福田氏 あれは、ショップを使ってほしくないのではないでしょうか。ショップを使うと、代理店手数料が発生してしまうからです。できるだけオンラインにシフトしたいのだと思います。代理店側も背に腹は代えられないので受け入れていますが、時間がたつとどうなるのかは分かりません。
―― 大手キャリアはMVNOにも事務手数料を課していますが、この点は変更にならないのでしょうか。
福田氏 原価ベースで出しているので、そんなに簡単にはいじれません。今でも計算上、高すぎるとは思っていますが(苦笑)、一応は原価ベースなのでそこには影響がありません。
大容量プランを作るのなら、接続料の算定方式を見直す必要がある
―― 合理的シンプル290プランの導入、合理的みんなのプランの改定と来たので、次に改定するのは今お話しになった20GBプランでしょうか。
福田氏 20GBプランを改定しようとするなら、容量を増やすでしょうね。ただ、当社のコミュニケーションはほとんどが口コミなので、あれもこれもと用意してもなかなか伝わりません。1年半近く、合理的シンプル290プランだけを前面に出してきて、こんなのがあるよと広がってきました。その次として中容量的なものを打ち出したという感じです。
―― 合理的20GBプランを改定するとしたら、合理的みんなのプランが普及してからということですね。
福田氏 合理的みんなのプランが浸透すれば、あると思います。ただ、大容量になってくると、今の接続料算定方式はMVNOにとって厳しい。それを根本的に見直さなければなりません。働きかけはずっと続けていますし、その結果はだんだん分かってくると思います。
―― 帯域課金以外にどのような方法があるとお考えですか。
福田氏 帯域をきちんと計算するのはキャパシティーの理論で、会計を見ても非常に難しい。世界の英知を集めないと、なかなか結論が出ません。そこに政治的な思惑も入ると、結論がさらに出なくなります。それを仕掛けるのは、時期を見ながらになります。
もう1つ5Gで主張しているのが、パケット課金です。量による課金ということですね。今の帯域課金は、使っているときと使っていないときが極端に違う。この方法は128kbpsのときならよかったのですが、トップスピードが上がれば上がるほど必ずしも有利ではなくなります。パケット単価を出して課金するという方法は伝統的に昔からある算出方法ですが、それをやるのも1つだと思っています。
これをすると、通信速度は大手キャリアと同じになります。5G SAはそういう形にしないと、とてもじゃないですが、1Tbpsの帯域幅を用意できるようなMVNOは登場しません。1人あたりのスピードが速くなってきたときには、そういうものも必要になります。
―― 確かに、使ったパケットに対していくらという方が、シンプルではありますね。
福田氏 もともと、最初に大臣裁定が下ったときには、うちが帯域課金を主張し、ドコモがパケット課金を主張していました。今はそれを引っ張り出して、「もともとそっちだったでしょ」と言っています(笑)。
―― とはいえ、そのパケットの単価が焦点になりそうです。
福田氏 ただ、計算は簡単です。総コストをトータルパケットで割れば出るわけですから。通話もそうで、総通話時間を原価で割って出しています。計算方法は極めてシンプルで、ある意味ごまかしがききません。間接費をどう処理するかは1つの論点になりそうですが、それがクリアできれば少なくともフェアにはなります。また、パケットの総数が例えば市場全体で7%増えているのであれば、コストが1パケットあたり7%下がるという推測も簡単になります。うちが米国でやっている事業は、帯域課金とパケット課金の両方ですが、それと同じですね。
―― MVNOがどちらか好きな方を選べてもいいのかもしれません。
福田氏 私もそう思います。複雑なものなら導入は大変ですが、やり方は簡単です。これ以上高速になってくるのであれば、そういうものもあると思います。
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