「Xperia 1 V」開発陣に聞く“ハイエンドスマホの売り方” 約20万円でもターゲットは明確(1/4 ページ)
ソニーの「Xperia 1 V」はデザインやカメラを進化させた、最新のフラグシップスマートフォン。一方で約20万円という価格はユーザーを選ぶのも事実。こうした新モデルの開発背景や、新しい販売方法に挑戦している理由を開発陣に聞いた。
ソニーが、Xperiaの最新モデルとなる「Xperia 1 V」「Xperia 10 V」を発表した。Xperia 1 Vは、メインの広角カメラに使うセンサーを大判化し、その機能を刷新。センサーには2層トランジスタ画素積層型CMOSセンサーの「Exmor T for mobile」を世界で初めて採用し、低光量時の性能を大きく上げた。スピーカーやディスプレイなども進化させるとともに、背面にザラっとした凹凸をつけるなど、デザインも進化させた。
ミッドレンジモデルのXperia 10 Vも、全機種からカメラのセンサーを大判化。前面に2基のステレオスピーカーを備え、持ち前の“軽さ”もさらに推し進めた。ソニーのワイヤレスイヤフォン「WF-C700N」とカラーマッチングさせ、色合いをそろえているのも特徴だ。
端末そのものが進化したことに加え、Xperia 1 Vは販売方法にも変化があった。これまでは、キャリア版から半年程度遅れてオープンマーケットモデル(SIMフリーモデル)が投入されていたが、同モデルは2つを同時に発表。発売時期こそ1カ月程度異なるが、ユーザーはキャリア版とソニー版を比較検討して選べるようになった。
こうした新モデルの開発背景や、新しい販売方法に挑戦している理由を、ソニーに聞いた。インタビューに答えたのは、ソニーでエクスペリアの開発を率いるソニー モバイルコミュニケーションズ事業部 事業部長の濱口努氏と、同事業本部 プロダクトマーケティング部の森田徹氏に加え、ソニーグループのクリエイティブセンター インキュベーションデザイン部門でアートディレクターを務める村井薫氏の3人。濱口氏は戦略を、森田氏は端末を、村井氏はデザインについて語った。
背面とカメラ回りのデザインを大きく変えた
―― 改めてになりますが、まずは新製品の特長を教えてください。
森田氏 Xperia 1 Vが一番変わったのは、デザインです。21:9のディスプレイを始めてから大きく変えていなかったところはありますが、今回は背面とカメラ回りに変化を持たせています。また、特筆すべきは24mmの新型イメージセンサーです。こちらは、今までの構造がガラッと変わり、トランジスタが2層になることで3倍の光を取り込めるようになりました。フルサイズセンサーなら多くの光を取り込めますが、やみくもに大きくするのではなく、構造を変えることで暗所に強くなっています。
濱口氏 「Xperia 1 IV」までとは、触った感じがまったく違います。カメラ部分のデザインも大きな進化点です。カメラは大判化していますが、全体のサイズ感は重要です。カメラを強化したからといって厚みが増してもいいというのはやはりソニーが作る商品としてふさわしくない。持つ喜び、使う喜びを重視してやっています。カメラの突起部も含めた薄さには、徹底的にこだわりました。出っ張っていても便利だからいいというのは、ちょっと違うと思っていたからです。
―― デザインを挙げられていましたが、大きく変わったのは背面や側面で、ザラっとした手触りになっています。この意図を教えてください。
村井氏 撮影体験を重視しているモデルで、フラグシップの高いスペックを求める方の所有欲を満たせるデザインとは何かを模索してきました。「機能的な素材」というものを作れないかは、ずっと温めてきたコンセプトです。今回も形状的な薄さや、フラットな表面自体は変わっていないのですが、ガラスに微細な加工をすることで、機能性を持たせています。背面のテクスチャーは微細な凸形状になっていますが、それにプラスして、Xperia 1 IVと同じフロスト加工もしています。
これによって触感のよさや、グリップ感が上がって滑りにくくなるようなところを作ることができました。ただ、目視だとテクスチャーが見えないぐらいにまで消し込み、意匠性を兼ね備えています。機能だけでもよくないですし、意匠だけでもよくない。触感は今までもこだわっていましたが、グリップ感が向上したのは今回の成果です。
―― 機能的な素材という意味がよく分かりました。確かに滑りづらいですね。撮影する際には、安定していいと思います。フレームのスリットも、滑りづらさに貢献しているような印象です。
村井氏 「Xperia PRO-I」よりも繊細な幅を保ちつつ、スリットもアレンジしました。背面との相性もあるので、物としてのバランスを見ながらアレンジしています。また、カメラ回りの表現も変わっています。レンズをより強調するような形で、カメラスペックを見せています。レンズの質感のイメージを取り入れつつ、メタル部分は背面のガラスになじませ、三眼のカメラを強調する。ZEISSのロゴが入っているところも掘り下げる表現にすることで、よりカメラとしてのデザインを追求しています。
Xperia 10 Vはフロントステレオスピーカーの反応が良好
―― Xperia 10 Vはいかがですか。
森田氏 Xperia 10 Vはフロントステレオスピーカーを搭載しました。そこに対して市場の反応がいいですね。映像を見る、音楽を聞く際に、Bluetoothスピーカーを使わなくてもいい。センサーも、メインカメラを刷新しました。Xperia 10 Vはミドルレンジの端末ですが、前モデルと比べて進化しています。もう1つはバッテリーで、このサイズ感ながら5000mAhを搭載しています。電池持ちの評価も高いですね。海外メディアからも、記事で高く評価していただけました。あとは、イヤフォンとカラーマッチングされたデザインです。こういう形で見せていくのは、今までになかった取り組みです。
濱口氏 (Xperia 10 Vで)若年層もしっかり取り込んでいきたい。軽くしているのも、若い人の使い方を考えると、軽い方がいいからです。また、中高生を見ていると、年がら年中スマホを使っていて、バッテリーがすぐなくなってしまう。私の子どもも、どこかに行くときは必ずモバイルバッテリーを持ち歩いています。ここには、34時間のバッテリーライフ(連続動画再生)がかなり有効です。森田がお話ししたカラーマッチングは、イヤフォンと組み合わせて持っていただけるよう、色を完全に合わせています。
―― Xperia 10 Vはポップな色合いがいいですね。
村井氏 軽やかさは前モデルを踏襲しつつ、イヤフォンとの親和性を持たせてよりトレンド感を取り入れながらカラー展開しています。ベーシックなブラックやホワイトも取り入れつつ、新しいカラー展開をしていきたいと思いました。イヤフォンも、同じクリエイティブセンターのメンバーと一緒になって提案しています。
―― Xperiaとイヤフォンは、同じ人がデザインしたのでしょうか。
村井氏 担当者は別です。ただ、ソニーには「CMFフレームワーク」というプロジェクトがあり、次世代に向けたカラーや素材、加工のトレンドを毎年打ち出しています。その内容を元にしています。
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