「ドコモはセカンドブランドで負けている」「最大の売りは高い回線品質」 NTT島田社長がコメント
NTTの島田明社長が2023年度第1四半期決算会見で、NTTドコモの新料金プランについて言及した。他社のセカンドブランド(サブブランド)で負けているとの認識で、「irumo」で巻き返しを図る。小容量帯のプランを提供してもARPUは下がらないとの見通しも示した。
NTTの島田明社長が、8月9日開催の2023年度第1四半期決算会見で、NTTドコモの新料金プランについて言及した。ドコモは7月1日から小容量帯のプラン「irumo」と、大容量帯のプラン「eximo」を提供している。新プランの反響について島田氏は「もう少し様子を見ないといけないが、ポートアウト(他社への転出)の影響はプラスに効いていると、ドコモから聞いている」とコメント。
eximoは従来の「ギガプラン」がベースなので新規性は薄いが、irumoはこれまで同社のプランでは手薄だった小容量帯に特化したプラン。このirumoの狙いについて島田氏は、「競合のセカンドブランド(サブブランド)対抗を意識して導入した」と話す。セカンドブランドは、ソフトバンクだとY!mobile、KDDIだとUQ mobileが該当する。「そこに対してどういう効果が出てきているかは注目している」と同氏。
一方、小容量帯に注力するとARPUが下がってしまう恐れがあるが、島田氏は、そうした心配はないとの見方。「今は映像をご覧になるお客さんが圧倒的に増えている」ことから、eximoやahamo大盛りなどの大容量や中容量のプランを選択するユーザーが増え、「ARPUは下がらない」とみる。2023年度第1四半期のドコモのARPUは3990円。前年の4030円や、前四半期の4020円から下がっているが、島田氏は「4000円を超えるところぐらいに行くのではないか」と述べた。
そんなドコモの競争力を問われた島田氏は、「メインブランドにはいい勝負はできているが、残念ながらセカンドブランドに負けている」とコメント。「ahamoを出して反転攻勢を始めているので、irumoもその第2弾になって、シェアを回復していくようになってもらわないと困る」と危機感を募らせた。「ahamoも500万超え、irumoもセカンドブランド対抗で出しているので、しっかりと成長できるように持株会社としてもドコモをサポートしていきたい」(同氏)
ドコモの通信品質低下の問題については、「映像のトラフィックがものすごく、アフターコロナのタイミングになって、人が戻ってきたときの使い方が変わってきた。そこに対する予測が甘かったところもある」と要因を話す。都内については、渋谷駅のホームを除いておおむね改善しており、9月には渋谷のホームにもアンテナ設置できるめどが立っていることを改めて説明した。
「ドコモの最大の売りは高い回線品質なので、この売りをしっかりキープしていきたい。来年度(2024年度)は投資もしっかり打っていきたい」(島田氏)
政府がNTT株を売却し、完全民営化に向けた動きが報じられているが、これに対して島田氏は「政府のNTT株の売却に対する評価はニュートラル。売却されてもよろしいと思っているし、継続して保有してもいいと思っている」と冷静にコメント。「一気に売却されると株価にも影響を及ぼすので、できるだけ株価に影響を及ぼさないよう検討してほしいとは再三申し上げている」
NTT持株会社とNTT東西の事業内容や国の関与などについて定めた「NTT法」について島田氏は「見直した方がいい項目がある」と見解を示す。一例として、研究開発に関する開示義務と、固定電話をユニバーサルサービスとして全国くまなく提供することを挙げる。
「研究開発に関する開示義務は、かつての電話の時代にできている制度。(NTTが)独占だったという背景があった。経済安全保障上の課題、国際的に競争をしている時代では、(開示義務は)課題」との認識を示す。
固定電話に関しては「1350万のユーザーがいるが、毎年150万ずつくらい減っているので、ここ数年の間に1000万を切ってくる。今でも赤字なので、事業継続上の負担が増えてくる。固定電話をどのようにしていくのかは、そろそろ議論を始めないといけない時期に来ている」とコメントした。
NTTの第1四半期の連結決算は、営業収益が3兆1111億円(対前年+1.4%)、営業利益は4747億円(対前年-5.7%)で増収減益。営業利益は過去最高を更新した。
9日にはNTTドコモも第1四半期の決算を発表。営業収益は1兆4578万円(対前年+2.5%)、営業利益は2927億円(対前年+3.2%)で増収増益となった。5Gの契約数は2245万に達した。
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