クアルコムがiPhone向けモデムの供給を3年間延長――中国メーカー向けが厳しくなる中、アップルと仲直り?:石川温のスマホ業界新聞
「iPhone 15」「iPhone 15 Pro」がリリースされる直前、QualcommがAppleとモデムの供給契約を3年間延長することを発表した。中国メーカーと取引が今後減ることを見越して収益源を確保したいQualcommと、自社開発を進めていたとされるモデムの計画が頓挫したAppleの思惑が一致した結果だと思われる。
クアルコムは9月11日(現地時間)、アップル「iPhone」向けモデムチップの供給を3年間、延長すると発表した。これにより、2026年、iPhone 18(仮称)まで、クアルコム製モデムが搭載されることになる。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年9月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
アップルはiPhoneやiPad、Macにおいて、アプリケーションプロセッサの内製化に注力している。いまではインテル製よりも、高性能で省電力のチップとして定評があるが、モデムに関しては開発に苦労している印象がある。
モデムに関して、様々な人材を確保し、開発を進め、クアルコムとの調達契約を2023年に終了し、2024年からは自社開発に切り替えるとみられていたが、結局は断念した模様だ。
通信業界内から見れば、アプリケーションプロセッサは内製化できても、モデムに関してはアップルを持ってしても難しいのではないか、というのが前々から予想されていた。
クアルコムはモバイル通信に関して、豊富な特許を取得している。また、4Gや5Gにしかつながらないモデムチップを作るのは決して難しくは無いのかも知れないが、3Gさらにはヨーロッパやアフリカではまだ現役だと思われる2G(GSM)まで対応するとなると相当、高いハードルにならざるを得ない。
世界各国のキャリアには複数の異なる周波数帯が割り当てられており、さらにそれらが複雑にキャリアアグリゲーションして、通信を提供している。下手をしたら、億を超える組み合わせの周波数帯に対して、安定して通信を提供するというのは、相当なノウハウが必要であり、これこそがクアルコムが得意とする一方で、新規参入組には手が出しにくい領域となっている。
アプリケーションプロセッサはアップルさえ頑張れば、いかようにも進化していけるものではあるが、モデムに関しては、端末側だけでなく、基地局ベンダーやキャリアとの調整も必要になってくる。
メディアテックなども通信モデムを作っており、値段の安さで導入するところも増えているが、なかなかメジャーになりきれず、クアルコムを倒せないというのは、既得権益もある一方で、技術的な信頼、実績が大きいのは間違いなさそうだ。
アップルとしてはクアルコム依存を脱したいのだろうが、現実的にはかなり難しいのではないか。当面は2026年までとされているが、今後も延長される可能性は十分にあると言えるだろう。
クアルコムとしても、中国メーカーからの調達が減っていく事が予想されるため、アップルと仲良くしていることをアピールすることで株価の維持につなげたいという狙いがありそうだ。
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