「TORQUE G06」は海上でも使えるアウトドアギアか 実際にヨットに乗って試してみた:海で使うIT(2/3 ページ)
京セラの「TORQUE G06」は、9月28日に発売され11月から個人向けに出荷が始まったアウトドア志向のスマホだ。京セラは5月に個人向け携帯事業からの撤退を発表しているが、「TORQUE」シリーズは継続するとしている。今回は本製品を実際に海上で使ってみた。
ディスプレイの視認性はどう?
屋外、特に直射日光の下で使うデジタルデバイスにとってディスプレイの視認性は懸念事項の1つになる。バックライトの輝度が直射する日差しの光量に負けてしまうと、ディスプレイが相対的に暗くなってしまい表示が見えなくなってしまうことが多々ある。しかし、TORQUE G06は快晴の10月下旬正午前後に画面輝度を最大にした状態でアプリケーションを起動してみたが、問題なく画面を視認できた。
なお、アウトドアでの行動中は目の疲労を軽減する、もしくは紫外線から目を保護するためにサングラスを着用することが望ましい。筆者も日中(マイルール的には航海灯を消す日の出時刻から航海灯を点灯する日の入り時刻の間)の操船では必ずサングラスをかけるようにしている。
一方、サングラス、特に遮光効果の高い偏光フィルターを使ったサングラスを着用していると、液晶でも有機ELでも、ディスプレイ側の偏光フィルターとサングラス側の偏光フィルターの干渉でディスプレイが暗くなる、または変色して甚だ見づらくなる。
この傾向は液晶に比べて有機ELでより顕著となる。TORQUE G06は有機ELを採用しており、表示画質は輪郭がはっきりとメリハリがついて色彩も鮮やかときれいで視認しやすい。ならば、偏光フィルターサングラスをかけてみるとどうなるかと試したところ、確かに画面は暗くなったものの、表示されているフォントや図版の内容は十分認識できる。京セラによると、画質を最適化して識別しやすい色やコントラストに調整したということなので、その効果といえる。
このように日差しの下ではディスプレイが暗いと文句を言っているのに、夜になるとディスプレイがまぶしすぎると文句を言うのだからアウトドアユーザーはわがままですみません、と開発者には謝る気持ちもあるものの、それでもやはり、ディスプレイの輝度設定スライダーを一番左にずらしても明るすぎる。明るいディスプレイを見た直後、視線を外して周囲を確認しようと思っても、いったん絞られた瞳孔では暗闇の中の状況を認識できるようになるまで時間を要してしまう。
このような危険を回避するため、暗所で使う照明やディスプレイには赤色で発光する夜間モードを備えていることが多い。潜水艦を題材にした映画やフィルムを現像する暗室の照明(といってもデジタルカメラしか知らない人は暗室も知らないか)で見る赤色灯をイメージすると分かりやすい。波長の長い光は目に対する刺激が弱く、瞳孔があまり閉じないため、光から視線をそらした直後でも暗いところの認識が比較的容易で周囲の状況をすぐ把握できる。夜間の野外行動では必須の機能だ。
当然ながらTORQUE G06も夜間モードを備えているが、その色調は潜水艦や暗室の赤色灯と比べると黄色(RGBでいうところのRとG)が多い方向にシフトしているような色合いになっている(マニュアルでも夜間モードは「黄味がかった色」と記している)。京セラの開発者に確認したところ、これは、暗所で使われている赤色灯の色をそのままディスプレイで再現すると“普通”のユーザーには違和感があるため、ブルーカットフィルターをベースにして色を設定しているとのことだった。
夜間モードに切り替えて波長の長い光でディスプレイを光らせれば、目に対する刺激は弱くなる。しかし、人工の照明がほとんどない野外の暗さでは、ディスプレイ輝度を設定するスライダーを一番左に設定してもディスプレイは明るすぎる。そのような状況に対応するべく、TORQUE G06では、輝度をさらに下げる設定を輝度とは別項目として用意している。クイックメニュー(ディスプレイ上端からフリックすると表示できるメニュー)からもアクセスできる「さらに輝度を下げる」項目で有効にできる。
ただ、夜間にこの機能を有効にした場合、通常は夜が明けたから元の輝度に復帰させようとなるが、夜が明けて周囲が明るくなると輝度が暗すぎてディスプレイの表示内容の認識が困難になる。通常の輝度に復帰するためのメニュー操作ができなくなるわけで、このようなときは手などでディスプレイを覆うなどで対処する必要がある。
ヨットレースを最適化できる“という”「Sailor's Log」
TORQUEシリーズでは野外行動で活用できるユーティリティーやアプリを独自で用意している。天気予測や日の出日没月の出月の入り時刻、潮汐、気圧計、コンパスなどは航海でも有用な情報を提供してくれるし、ライトやブザーは遭難時に自分の場所を知らせるために必須の機能だ。
方位を知るための「Compass」は、操船時において方角方位を知るためというより、周囲にいる他船の方位変位を知るために使う。方位が変化する他船は衝突しない安全な対象だが、方位が変化しない他船は衝突する可能性がある危険な対象となるためだ。その際、本体を水平に(コンパス面が表示されるディスプレイは天を向いた状態)測定する対象に対してコンパス=TORQUE G06を正確に指向しなければならない。
通常のコンパスではコンパス面が天を向いていても測的対象を捉える照準器を備えているが、TORQUE G06の本体には照準器として使えるところがない。そのため、コンパスリング(コンパス面の周囲に刻まれたメモリ)にある12時と6時の目盛りを結んだ延長線上に測的目標を捉えれば対象の方位変移を比較的正確に知ることができるだろう(体勢と視線的になかなかに難しいが)。
なお、TORQUEシリーズには以前からヨットレースでの活用を意図したアプリとして「Sailor's Log」をプリインストールしている。マリンウェアベンダーのヘリーハンセンとの協業で開発したアプリで、マニュアルでは「移動した経路、時間、スピードなどを計測する」と紹介されている。
確かに実際に使ってみると、セイルのトリムを撮影して風向きとの関係を記録する機能も用意している。しかし、アプリで利用できるスピードや距離の単位が船で用いるノットや海里ではなく時速やメートルで、記録した画像を使ってどのようにセーリングを最適化すればいいかの説明がマニュアルには示されていない。
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