スマホの「残価設定」にメス? 総務省がルール統一を検討も、Appleは「不当な扱い」と猛反発
総務省の検討会で端末購入プログラムの残価率算出ルールの統一が議論されている。ドコモらは公平競争のため統一を求めるが、Appleは端末本来の価値の反映を求め反発する。残価率が固定されると、リセール価値の高いiPhoneの実質負担増につながる恐れがある。
総務省が開催している「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」では、携帯電話のホッピング(短期乗り換え)が議題となっている。それ以外のテーマとして、端末購入プログラムの残価率算出ルールについても話し合いが行われている。
4月20日の第6回会議では、キャリアやスマートフォンメーカー各社から、残価設定に対する各社の姿勢や具体的な考えが披露された。
2年後の残価はキャリアが独自に設定 同じ機種でも負担額に差も
携帯キャリアが提供している端末購入プログラムは、2年など一定期間経過後に端末を返却すると、残債の支払いが免除される。ドコモとKDDIは端末代金を24分割し、24回目を残価に設定している。ソフトバンクと楽天モバイルは48回払いとし、2年後に返却すると後半の支払いが免除され、端末によっては1〜24回の支払いを安価にしている。この場合、25〜48回目の支払い額を残価と捉えてよい。残価が大きいほど免除される金額が大きく、ユーザーはお得に端末を使える。
この残価の算定は、各キャリアが独自に行っており、統一された基準があるわけではない。そのため、同じ機種でも、2年間の実質負担額は、キャリアによって大きく差がある場合がある。例えば「Galaxy S26」の場合、MNPでの2年間の実質負担額は、auが8900円、楽天モバイルが4万7760円となっている。auはMNPだと4万4000円の割引があるのが大きいが、残価はauが1万円、楽天モバイルが8万9040円となっており、1万円以上の差が生じている。
上がauのGalaxy S26、下が楽天モバイルGalaxy S26。割引条件の差もあるが、残価が1万円以上異なるので、実質負担額も大きく異なる。なお、楽天モバイルはMNPで最大1万6000ポイントの還元も受けられる
現在の端末購入プログラムは、2年後に返却するスタイルが基本なので、各キャリアは2年後に中古市場で想定される買い取り金額を試算し、これに端末値引きの上限である4万4000円を足した金額が、残価の最大値となる。一部のスマートフォンで、2年24円、33円、47円などの負担額を実現できているのは、残価を高く設定しているためだ。
残価の設定が著しく低いと、ユーザーは本来得られたはずの利益(割引)が得られなくなる。反対に、残価の設定が著しく高いと、ユーザーに過度な利益を提供していることになる。購入した端末によって不公平感が生まれないよう、残価は適切に設定することが求められる。
ドコモとKDDIは残価率の統一に「賛成」、楽天モバイルは「反対」
NTTドコモは、現在の残価は「キャリアの裁量で決められることから引き上げ合戦が発生し、ルールが形骸化している」と指摘する。残価率を一定にすることでキャリアの裁量がなくなり、公正競争に資することから、ドコモとソフトバンクは一律のルール化に賛成の意向を示す。残価算定率の基準となる一案として、「端末の平均利用期間に応じた直線モデル」を提案する。2025年3月の内閣府消費動向調査では、携帯電話の平均使用年数が約52カ月なので、1カ月目を100%として、52カ月目で0%になるよう直線上に残価が下落するという方法だ。
しかしこの方法では、リセールバリューの低い機種が本来よりも高い残価になり、リセールバリューの高い機種が本来よりも低い残価になる恐れがあるため、万能とはいえない。それでも、残価率を統一することは、「事業者間の公平競争に資することになる」「算定方法がシンプルになることで、キャリアから総務省への手続きが簡素化され負担軽減につながる」とのメリットがあるとソフトバンクは説明する。
KDDIは、残価率を統一すると「将来予想される、合理的な買い取り価格を適切に反映できない」との懸念を示す。楽天モバイルは反対のスタンスで、「残価率を統一することは、事業者が自律的に価格設定や商品展開を行うことを過度の妨げ、消費者利益を損なう可能性がある」と指摘する。
現在の残価は、中古端末の業界団体、RMJ(リユースモバイル・ジャパン)が算出している、先行同型機種の買い取り実績データを参照しており、「この仕組みを維持することが、市場実勢を適切に反映できる」と楽天モバイルは述べる。RMJ自身も、RMJが端末ごとに設定する枠組みを主軸とすることが、利用者利益と公正競争を両立すると考える。
Appleは残価率の統一に「差別的な影響を与える」と猛反発
では、端末メーカーは残価の設定についてどう考えているのか。
Googleとサムスン電子は、残価率の統一に「賛成」の意向を示している。その理由としてGoogleは「価格だけでなく機能や体験価値で競え合える健全な市場環境が構築されること」、サムスン電子は「ユーザーが理解しやすいこと」「キャリアは残価率算定のためのオペレーションコストが減少すること」を挙げる。
一方、Appleは残価率の統一に強く反対する。Appleは自社の製品が「長持ちし、丈夫で、信頼性のあるものとなるよう細心の注意を払ってデザインしている」と述べる。
そして、以下の通り続ける。
残念ながら、一部の端末メーカーは、携帯電話端末の残存価値を算出するための不適切な新たな手法をご提案し、日本国内における端末間競争を弱め、市場を歪めようとしていますが、これは健全な市場競争を損なうものです。Appleと異なり、こうした競合する企業の多くは、製造の品質が劣り、陳腐化が早い製品を生産していますので、結果として、自由市場においては製品価値が急速に下落することになります。これらのメーカーは、人為的かつ画一的な残存価値の算定を推すことによって、自社に実際より不相応な利益をもたらす規制の介入を求め、健全な端末間競争を犠牲にすることで、実質的には自らの製品の長期的な価値の低さを覆い隠そうとしているようなものです。
Appleは一部のメーカー機種に対し、本来よりも高い残価が設定されていると見ているようだ。残価率の統一についてAppleは「長く楽しんでいただける機能と価値を持った質の高い製品を創り出しているAppleのようなメーカーに対し、不当な扱いをするものであることから、強く反対する。個々の端末の価値を無視することは、端末市場をゆがめるものであり、AppleとAppleのお客さまに対して差別的な影響を与えることになる」と主張する。
iPhoneは中古市場でリセールバリューが高いこともあり、キャリアの端末購入プログラムでも、高い残価が設定されているケースが多い。仮に残価率が統一されると、iPhoneの残価が下がり、iPhoneよりもリセールバリューが低いAndroidスマートフォンの残価が上がる可能性が高い。Appleの主張は至極まっとうなものだが、キャリアが恣意(しい)的に残価を決められる現在、明らかに残価が高く設定されている機種も散見される。残価率の上限を決めるなど、何らかの基準は必要になるかもしれない。
残価算定のルールは、2026年夏までに一定の結論を出す予定だ。
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