好調「NUROモバイル」の戦略を聞く 2つの新料金プランは“真逆”だけどニーズあり:MVNOに聞く(2/3 ページ)
NUROモバイルが、バリューコマースの最上位プランとして、15GBの「VLLプラン」を導入。一方で、それとは真逆の動きとして、音声通話定額と1GBのデータ容量がセットになった「かけ放題ジャスト」も開始した。一見すると、真逆の料金プランを追加したように見えるNUROモバイルだが、ユーザーの動向を踏まえた上での改定という共通項がある。
同一の容量で提供しているサービスの価格帯は意識している
―― VLLプランの1790円という価格は、MVNOとの比較でも安いと思います。他のプランも、大手MVNOより安いことが多いですが、やはりこの点は意識されているのでしょうか。
田中氏 同一の容量で提供しているところは、全て意識しています。
橋本氏 「料金の安さ」を重視する声は、アンケートでも上位を占めています。当社で一番評価をいただいているポイントです。
―― NUROモバイルはオンラインに特化していますが、MNOの料金プランを検討している際に比較対象として見られることが増え、検討されたというようなこともあるのでしょうか。
田中氏 確かにオンライン専用プランが出始めたころは、見に来ていただく方が増えました。環境的にも、あの頃は外出制限があり、オンラインで契約するハードルが少しずつ下がっていました。その状態は今も続いていると見ています。
―― やはり検索が重要なんですね。
田中氏 キャリアショップのような店舗網は持っていないので、できる限りオンラインを活用し、知っていただき、お申し込みいただけるような形で進めていきたいと考えています。コスト構造的にも、ショップを運営するところまで広げてしまうと、コストパフォーマンスよく運営するのが難しくなってしまいます。強みを最大限生かし、取り組みを進めていきたいと考えています。
―― MNOの料金プランがやや高くなっているようにも見えますが、その影響はありましたか。
田中氏 確かに料金プラン単体で見ると各MNOとも、少し上がっていますが、光回線とのセット割や自社の金融系サービスとの連動など、いろいろと工夫をされています。その中でも、モバイル単体の料金で選んでいる方には、ぜひ検討していただきたい。NURO光もいいサービスなので、一緒にご利用いただくことも伝えていかなければと考えています。
―― VLLプランの追加で、バリュープラスの選択肢が4つになりました。マーケティングだと、松竹梅のように3つの選択肢を用意すると真ん中が多くになるといった考え方があると思いますが、4つにすることに対して悩みはありましたか。
田中氏 どのプランを売ろうというところから入るよりも、お客さまが欲しいものを提供できるような形で進めてきました。おっしゃるように、マーケティング的には3つ作ると真ん中が選ばれるというようなことがありますが、(VLLプランを設計する際には)お客さまが欲しいものは何か、そのためにはどういったプランがあるべきかを考えています。
―― 一方で、22年に投入した「NEOプランLite」の新規受付を5月で終了しています。このときから、VLLプランとのすみ分けを考えていたのでしょうか。
田中氏 NEOプランLiteについては、NEOプランのカテゴリーの中でNEOデータフリーや「上げ放題」といったサービスがついていませんでした。これはお客さまにとって分かりづらい。その分かりづらさを解消するため、新規受付を終了することにしました。その際に、バリュープラスとNEOプランの間に入るのはどんなものなのかということも踏まえて考えた結果が、VLLプランにつながっています。
データは1GBでも十分? かけ放題ジャストを提供する狙い
―― 次に、同時に発表されたかけ放題ジャストについてうかがいます。こちらはVLLプランとは真逆で、データ容量が1GBですが、どのようなターゲット層を想定しているのかを教えてください。
田中氏 そもそもマーケットの中で、1~2GBしか使っていない方はとても多い。総務省の調査でも、そのように出ていますが、ここは非常に大きなマーケットです。この方々にも、ぜひわれわれを選んでいただきたい。どういう形であれば選んでいただけるのかが、第一にありました。(既存の)プランの拡充というより、新たなニーズへの対応ということで作ったのがかけ放題ジャストです。
これまでもかけ放題プランはありましたが、かけ放題プランだけで1870円だと、MVNOを選ぶ方にとっては少し高くなってしまいます。実際、総務省のデータを見ても、通話は5分以内で済ませている方がほとんどです。そこで、ある程度(通話時間を)抑えた形で、かつ料金も抑えて提供することにしました。
―― データ容量は1GBで十分なのでしょうか。
田中氏 1GBでもちゃんと使えるということは、お客さまにも認識していただきたいですね。弊社であれば、「バリューデータフリー」も利用でき、LINEでコミュニケーションを取る場合、その部分でデータが消費されません。電車の中で乗り換え検索をしたり、Webを見たり、少しXをチェックするだけの方は非常に多い。同時に、かけ放題がついていると安心という方も多くいらっしゃいます。自宅への連絡や、お店の予約に電話する方はいますよね。MVNOで料金も安いものは、非常に大きなマーケットになるのではないかと思い、導入しました。
石井氏 補足すると、現行のかけ放題プランでデータ容量を増やしてほしいという声は、特に表面化していません。
―― 自分だと、1日で使い切ってしまいそうです(笑)
田中氏 使われている方はそうだと思います。私も総務省のデータを見て驚いたのですが、2GBで収まる方が半分近くいる。使っている方からすると、「そんなので足りるの?」と思われるかもしれませんが、マーケットには結構いらっしゃるのではないでしょうか。
―― サブ回線というわけではないですよね。
田中氏 サブというより、メインの利用で考えています。
―― 属性で言うと、3Gケータイを使っている高齢者が多いのでしょうか。
田中氏 かけ放題というとそういうイメージを持つ方もいますが、2GB以内の半数に近い数値は、ご年配の方だけの年齢構成比には合っていません。4G、5Gをご利用されている方の中にも、あまり使わない方が多いのだと思います。かけ放題ジャストも、全年代の方にお選びいただけるよう設計させていただきました。
―― 例えば、専業主婦などで普段は家にいることが多く、あまり外出先でデータ通信しないといったケースなどを想定しているのでしょうか。
田中氏 動画などを見るときには自宅でWi-Fiを使い、外出先では通信がなるべく発生しないような使い方をされているのだと思います。ライフスタイル上、家でこう使う、外でこう使うといったことをよく分かっている方だと思いますね。
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