好調「NUROモバイル」の戦略を聞く 2つの新料金プランは“真逆”だけどニーズあり:MVNOに聞く(3/3 ページ)
NUROモバイルが、バリューコマースの最上位プランとして、15GBの「VLLプラン」を導入。一方で、それとは真逆の動きとして、音声通話定額と1GBのデータ容量がセットになった「かけ放題ジャスト」も開始した。一見すると、真逆の料金プランを追加したように見えるNUROモバイルだが、ユーザーの動向を踏まえた上での改定という共通項がある。
3Gから移行するユーザーに限らず申し込んでほしい
―― ソフトバンクが来年(2024年)早々に3Gを停波します。ドコモは26年3月まで猶予がありますが、徐々に移行は進むと思います。そういったユーザーはあまり考えていなかったのでしょうか。
田中氏 全年代の方にお申し込みいただきたいと考えているので、特に3Gに限らず、今4Gや5Gをお使いの方も対象です。これは実際に調査したわけではありませんが、恐らくこれまでずっと3Gだった方は、ショップでご案内を受けて手続きされることが多いのではないでしょうか。ペルソナが少し違うのかもしれません。
―― 親のために回線を変えるようなケースもありそうです。
田中氏 ネットで検索して親御さんのために回線を変えるという方々に対しては、しっかり提供できるよう、分かりやすいWebサイトを作っていきたいと考えています。
―― かけ放題ジャストは、それぞれ5分、10分の音声定額ですが、それぞれの時間を決めた理由を教えてください。
田中氏 調査結果を見ると、5分である程度の通話をまかなえるからです。ただ、それで足りない方にいきなり無制限を提案するのではなく、10分があった方が選びやすいのではないかと考え、10分も用意した次第です。もしくは、まず5分で申し込みをしてみて、使い始めて足りない場合は10分にプラン変更していただくといったことも想定しています。
―― 1GBプランという観点で言うと、バリュープラスに「VSSプラン」を追加する手もあったかと思います。
田中氏 普通の1GBプランは、各社が投入しています。NUROモバイルならではの特徴があり、かつ、お客さまが選びやすいものが必要だと考えました。
NURO光とのセット割を強化する狙い
―― 今回、ドコモ回線とau回線だけですが、ソフトバンク回線は未提供です。理由を教えてください。
石井氏 現在、3Gが提供されている状況の中、一部の仕様(オートプレフィックスの仕様)に課題があります。お客さまのニーズを定量的に測りながら、拡充は検討していきます。
―― 卸値がキャリアごとに異なっていると思いますが、そこを同一価格で提供するのはなかなか難しいのではないでしょうか。
石井氏 (卸値に)バリエーションがある場合もありますが、同一価格で提供できるかどうかは見ています。おっしゃるように、それが課題となるシチュエーションもあります。
―― 新料金プランと合わせて、セット割の特典も強化しました。他社だと端末割引を全面に出しているところもありますが、やはりセット割なのでしょうか。
田中氏 サービスをできる限りお客さまにご利用していただけるよう磨いています。弊社にはNURO光もあるので、そことのセットでの展開をしていきたいと考えています。
―― 同じくプロバイダー系のMVNOの場合、月額料金を割り引くところもありますが、NUROモバイルの場合は特典として期間が限定されています。やはり、短期集中でも金額が大きい方がインパクトも大きくなるのでしょうか。
橋本氏 お客さまのニーズに合わせているところはありますね。NUROモバイルもNURO光も、そもそもコスパが高いサービスです。期間は絞っていますが、サービスを知っていただけます。他社もセット割を中心に展開しているため、モバイルと光をセットでご契約する方も多くなります。
田中氏 特典としてやっているので、その時その時に合わせて柔軟に変更できるのはメリットの1つです。料金プランにしてしまうと、それができません。
―― ここまで純増が伸びてくると、そろそろシェア上位の事業者として名前が挙がりそうですが、いかがですか。
田中氏 挙がってくるといいのですが(笑)。ただ、加入者が増え始めたのはバリュープラスのころからです。その意味で、スタートは遅れているのかもしれませんが、早くああいった調査に名前が載るといいなと思っています。いろいろな方に知っていただければ、ますます選んでいただけるようになりますからね。
取材を終えて:細かなニーズを反映していることが支持されている
データトラフィックが伸びている状況を受け、先回りで提供を開始したのがVLLプランだ。NEOプランは通信品質が高いだけに、価格もMNOに近くなってしまう。これに対し、VLLプランはMVNOとしての価格水準を維持しながら、データ容量を増やした格好だ。ここまで細分化されているのは、ユーザーのニーズが料金と品質に分かれているからだろう。近い容量を用意している他のMVNOと比べても料金は安く、この点はNUROモバイルの面目躍如といえそうだ。
これに対し、かけ放題ジャストは想定していた以上にターゲット層は広いようだ。3Gから移行するユーザーを狙うというより、小容量プランを拡充したイメージに近い。日本通信が同容量を290円で展開していることもあり、差別化を図る狙いがあったようだ。音声通話定額をセットにしたことで、収益性も高まる。契約者数を順調に増やしているNUROモバイルだが、こうした細かなニーズをくみ上げ、素早く料金プラン化しているところに人気の秘密がありそうだ。
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