好調「NUROモバイル」の戦略を聞く 2つの新料金プランは“真逆”だけどニーズあり:MVNOに聞く(1/3 ページ)
NUROモバイルが、バリューコマースの最上位プランとして、15GBの「VLLプラン」を導入。一方で、それとは真逆の動きとして、音声通話定額と1GBのデータ容量がセットになった「かけ放題ジャスト」も開始した。一見すると、真逆の料金プランを追加したように見えるNUROモバイルだが、ユーザーの動向を踏まえた上での改定という共通項がある。
2021年に新料金プランの「バリュープラス」や「NEOプラン」を導入して以降、契約者数を順調に伸ばしているNUROモバイル。わずか2年半で、累計契約者数は3倍にまで拡大した。大手キャリアの料金プラン改定でMVNOの生存領域が少なくなっているといわれる中、純増も30カ月途絶えることなく続いているという。そんなNUROモバイルが、11月にバリュープラスの選択肢を拡大した。データ容量15GBの「VLLプラン」がそれだ。
これまで同社のバリュープラスは、3GBの「VSプラン」、5GBの「VMプラン」、10GBの「VLプラン」と3本立てになっていたが、これら3つに最上位プランとしてVLLプランを追加。年々増加するデータ通信需要に応える。一方で、それとは真逆の動きとして、音声通話定額と1GBのデータ容量がセットになった「かけ放題ジャスト」も開始した。こちらは、データ容量1GBが固定で、音声通話が無料になる時間で料金プランが3つに分かれている。バリュープラスやNEOプランに次ぐ、3つ目のカテゴリーとして料金プランを拡充した格好だ。
一見すると、真逆の料金プランを追加したように見えるNUROモバイルだが、ユーザーの動向を踏まえた上での改定という点に共通項がある。では、NUROモバイルはどのような狙いで新料金プランを導入したのか。同MVNOを運営するソニーネットワークコミュニケーションズ MVNO事業室 室長の田中直樹氏と、サービス設計課の石井隆介氏、セールス&マーケティング課の橋本将人氏に話を聞いた。
「利用するデータ量が増えた」という声が顕著になってきた
―― もともとバリュープラスには3つの料金プランがあり、契約者も順調に増えていたと思います。なぜVLLプランを追加したのでしょうか。
田中氏 昨今、ユーザーのトラフィックは増えている傾向があります。これは、総務省の資料でもそうですし、われわれのプランの申し込み比率を見てもそうです。21年にバリュープラスを開始した際には、VSプランの需要が大きかった。そのプラン比率が少しずつ変わり、ここ最近ではVLプランの割合の増え方が、かなり顕著になっています。特にコロナ禍の外出制限が明けたころから、NUROモバイルのアンケート結果でも「利用するデータ量が増えた」という回答が明確に出ています。VLプランで容量が足りない方が出てくると考え、今回、VLLプランをリリースしました。
そのときに、NEOプランとのすみ分けをどうするのかという点は社内でも議論になりました。ただ、そもそもNEOプランとバリュープラスでは、ペルソナが異なっています。NEOプランは、どちらかというとMNOのオンライン専用プランのニーズが高い層で、弊社としても同じように快適に使えることを売りにしています。通信品質に対してコストをかけながら、快適にご利用いただく――そういった方々は、比較的Z世代やデジタルネイティブの方々に多くいます。われわれ独自のサービスで選んでいただきたいということもあり、NEOプランにはX(旧Twitter)やLINE、Instagram、TikTokがデータフリーになる「NEOデータフリー」も合わせて投入しています。
一方で、VLLプランはどちらかといえば増えたデータ使用量をカバーするような形でリリースしたいと考えていました。月額料金をもっと抑えながら、データ容量をそれなりに使い、動画なども最低限楽しみたい。そういった方々に向け、バリュープラスのVLプランの1つ上の料金プランとして出した方がいいということでVLLプランの提供を開始しました。
―― NEOプランとは容量でも差がつけられていますが、それ以上に中身の違いが大きいということですね。
田中氏 バリュープラスは一般的なMVNOが提供している通信品質に近く、われわれの中でもそういった整理をしています。一方、NEOプランはMNOの通信品質を目指したものです。通信環境だったり、同時アクセス数だったり、場所であったりに左右されるため、必ずしも同一の品質とはいえませんが、全体では皆さんが思われているような形での高品質を実現しています。
―― 年齢層も、バリュープラスとNEOプランでは違うのでしょうか。
田中氏 バリュープラスは30代、40代、50代が中心で、特に40代の利用が一番多いですね。NEOプランにも30代、40代、50代は多いですが、20代の割合がバリュープラスと比較するとかなり大きい。通信品質を求めて、動画をたくさん見たいという方に選んでいただけているのだと思います。
中容量帯の比率がアップ 過半数をVM、VLプランが占めるように
―― バリュープラスをスタートした段階では、7割ぐらいがVSプランに集中していました。やはり3GBプランは人気が高いんですね。一方で、ここ最近の変化も大きいように思えました。
田中氏 21年はちょうどahamoなどの料金プランが出始めたころですが、MNOを利用してみて、あまり(データ容量を)使っていなかった方が最初に(NUROモバイルに)来たのではないでしょうか。その動きも少しずつ落ち着き、今はライフスタイルに合わせて自分の料金プランを選ぶことから比率が変わっているのだと思います。
第2四半期(7月から9月)で見ると、VSプランが42%なのに対し、VMプラン、VLプランを合わせると58%になり、過半数をVM、VLプランが占めるようになりました。一番多いときでは、25%ぐらいがVLプランに入っています。
―― 中容量の比率が思っていた以上に多いのが驚きでした。
田中氏 恐らくですが、使ってみてこのぐらいの通信品質ならとご納得いただいた方が容量を挙げているのかもしれません。以前は「MVNOは遅い」といわれていましたが、市場の評価も変わり始めています。ある程度容量の大きいプランが増えているのは、契約時の心理的ハードルが下がっているからではないでしょうか。
そうは言っても、総務省の資料を見ると、1〜2GBの低容量の方はまだ非常に多い。この方々が、これから動いてくるのではないかと思っています。何がきっかけになるのかという想像は難しいのですが、例えば物価が上昇している中で、通信コストを抑えて備えようという方もいます。そういった方々が、オンラインで探したNUROモバイルに移っていただければ非常にいいなと思いますね。
―― ただ、時系列で申し込みプランの比率を見ると、ちょうど今、VLプランの割合が増えているように見えます。少し早いような印象も受けましたが、いかがでしょうか。
田中氏 恐らくこれから5Gが浸透し、コンテンツがリッチ化すると、今の容量では足りなくなってしまいます。足りなくなってから新しいプランを出すのではなく、少し前に出して選択肢を最初から用意しておく形を取らせていただきました。
―― 申し込む料金プランの割合は新規契約者に限った話だと思いますが、上位プランに変更する人も増えているのでしょうか。
石井氏 プラン変更やバリュープラス間での変更やNEOプランへのアップグレードなど、いろいろなパターンがありますが、状況に応じてご提案をしていることもあり、数は順調に増えています。田中が申し上げたように、料金プランのラインアップを拡充し、選択肢も増えているので(プラン変更も)順調です。
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