「2025年のNTT法廃止」を求めているわけではない――NTT島田社長が言及 総務省会合で:自民党PTが言っていること(2/2 ページ)
総務省の通信政策特別委員会において、大手通信事業者4社からのヒアリングが行われた。各社からは社長または会長が参加し、トップ“自ら”通信事業のあるべき姿を語った……のだが、昨今の情勢を踏まえて、話題はNTT法に関するものに集中した。会に出席したNTTの島田明社長は、質疑の中で「NTT法廃止」やその時期にこだわらない旨の発言を行った。
高橋社長から島田社長への“質問”
高橋社長は「私たち(ヒアリング対象者)も発言してよろしいでしょうか?」と切り出し、委員長の許可を取った上で島田社長に質問した。
高橋社長 今、NTTとして「2025年(のNTT法廃止)を求めているわけではない」ということで、島田社長から前向きで良い話を聞けた思います。ありがとうございます。長田委員の言う通り、NTTが今の段階で「自分たちは(通信事業者としての)責務を果たした」とおっしゃることに対して(ユーザーは)不安を抱えていると思います。我々(他の通信事業者)も、責務を果たしたと言いながら、特別な資産(※1)を持った状態でNTT法を廃止することに大きな疑問を持っています。先ほど「構造的な措置からしっかりと議論していこう」という話があって、非常にありがたいと思いました。
そこで島田社長にお伺いしたいことがあります。(日本の)国力に対するNTTの貢献は非常に大きいので、「ステップ1」として、NTT法の“改正”をして、技術開示に関する問題(※2)を含む喫緊の問題を解消すればいいと思うのです。NTT法の“廃止”については、(NTTの構造への)措置を含めて、2025年度にこだわらず議論すればいいと考えますが、いかがでしょうか。島田社長 私たちが「2025年度に(NTTの完全民営化を)やる」とは言っていないことは事実としてあります。一方で、自民党でそういう発言(提言)があったことも尊重すべきことだと思います。この審議会でも、与党が発言されていることについては、意識されているんだろうと認識しています。
第1ステップとして、進められるものがあるなら、議論を成熟させた上で進めていたけるとありがたいと思っています。また、私たちは(NTT法の)廃止ありきで意見を申し上げているわけではありません。従来から、公正競争への取り組みは従来通りに進めますし、ユニバーサルサービスについても、電気通信事業法に加わった新しい(ブロードバンド向けの)規定に、約40年前に決めた(NTT法にある)固定電話用の規定を融合させてより良いものにしようという意見です。研究開発に関する規定(※2)は、今後のことを考えるとない方が国力の面でも有利だろうということから廃止を訴えています。これらを実現すると、結果的にNTT法第3条に定める責務がなくなり、同条に関する付則も不要になると考えます。
(※1)NTTが旧日本電信電話公社から引き継いだ土地、建物や管路
(※2)NTT法に明記されてはいないが、同法第3条を根拠として研究/開発成果には開示義務があるものと解されている。この点は他の通信事業者も問題視しており、義務をなくす方向での法改正には賛同している
NTT法第3条により、NTTは研究/開発の成果を広く開示することが義務付けられている。これが他者との共同研究/開発の足かせになっているとの指摘もあり、他の通信事業者も同条の規定を撤廃することには賛同している(総務省提出資料から)
ソフトバンク宮川社長も「安堵」
高橋社長と島田社長のやりとりを見ていたソフトバンクの宮川潤一社長も、発言を求めて委員長に許可された。
宮川社長 今回、NTT法廃止ありきではないという話を聞けて安堵(あんど)しました。2025年という年号を自民党のPTが勝手に言ったことも理解できました。
そうであれば、重要な議論としてNTTという会社はどうあるべきなのか、立ち止まって議論すべきだと考えます。その上で結果を得ていくことが大切なのではないでしょうか。
会合後に行われたKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社合同の囲み取材でも、島田社長の発言をきっかけに、よりしっかりとNTTの在り方を話し合う機運の醸成に期待する声が聞かれた。
より慎重な議論を期待したいが、果たしてどうなるのだろうか。次回の会合の日程は、後日発表される予定だ。
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