法令改正後もスマホの大幅値引きは可能? 想定される“抜け穴”を考えてみた(3/3 ページ)
12月27日から電気通信事業法に関わる総務省令が改正され、端末単体の過度な値引きが規制される。ただし、この規制にも抜け穴がある。キャリアが値引きをしなければ問題ないのだ。
法令改正=値上げとは限らない 安くなる機種は?
最後に、今回の法令改正によって必ずしもスマホが値上げになるわけではない例を紹介する。確かに今回の法令改正に伴って、キャリアは「実質24円」といった方法でスマートフォンの提供ができなくなる。
特にiPhoneをはじめとした10万円を超える高価な機種では、実質負担額を安価に提供することが難しくなる。これが、改正後に指摘される「スマートフォンは安くならない」という評価につながるものと考える。
現行の「実質24円」の施策は、2年以内に機種変更を行う人にとっては魅力的だが、2年以上使う場合は値引きの恩恵を受けられないことが多い。例として、ソフトバンクの「実質24円」を見てみると、後半2年の支払いが大きく設定されていることが分かる。
この場合、4年間利用した場合の総額は一括購入価格と変わらないものになる。スマートフォンの平均利用期間が4.3年(出典:内閣府 消費動向調査)という数字に照らすと、平均利用期間並みに利用する人は、定価で購入した場合と同様の料金を最終的には支払うことになるのだ。
その一方で、法改正後の方が安価に購入できそうなスマートフォンもある。例えば、ソフトバンクのXiaomi 13T Proは定価で11万4800円のところ、回線値引きによって2万2000円引きの9万2800円。これが法改正後には4万4000円の値引きが可能となるため、回線契約時の一括価格は7万800円とよりお得になる。
この他にメーカーの施策で「PayPayガチャ」が提供されており、最低1万円分、最高で3万円分のPayPayギフトコードが付与される。これは法改正後も継続されるので、改正後の方がよりお得に購入できる。
auのXiaomi 13Tも同様だ。現状は7万4800円から2万2000円引きの5万2800円。ここにメーカーから8000円のキャッシュバックが提供されるため、実質価格は4万4800円だ。これが法改正後には端末価格の半額となる3万7400円の値引きが可能になる。メーカーのキャッシュバックを含めると実質価格は2万9400円となるなど、一括価格はかなり攻めた設定が可能だ。
このため、ある程度高額な端末であれば、12月27日の法改正後の方が安価に買える可能性がある。特に12月発売のXiaomi 13Tシリーズの場合、メーカー主導のキャッシュバックもあることから、どちらも半額近い値引きとなっている。
今回の法令改正後も、値引き規制の抜け道がいくつか存在する。利用方法によってはスマートフォンの実質負担額が改正前より高価になってしまう可能性はあるが、上記の通り「改正前より安価になる」ものが存在することも分かった。
筆者は、今回の法改正はあまり悲観的になるものではないと考える。改正後は高価なスマートフォンを3~4年以上利用する場合、規制前よりも端末価格を安く抑えられるため、消費者側にもメリットのあるものだ。
そして、法改正後も一定の期間がたてば、通例通りキャリアも何かしらの「抜け道」を突いて値引き販売をしてくると考える。筆者が考えられるだけでも幾つか例に出せるのだから、過去に幾度の規制をかい潜ったキャリアからしてみれば、今回の法改正の回避も「朝飯前」なのかもしれない。この行政と携帯キャリアのイタチごっこはしばらく続くことになりそうだ。
著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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