「Galaxy S24」はAIでスマホの使い勝手を刷新 Google/Microsoftとの“等距離外交”も強みに:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
サムスン電子が新たに発表した「Galaxy S24」シリーズでは、新機軸としてAIを全面的に打ち出している。一連の機能をまとめた「Galaxy AI」は、Googleが下支えをしている。同モデルからは、2大プラットフォーマーとの等距離外交で差別化を図るサムスン電子の戦略も透けて見える。
画像編集やカメラにもAIを活用、その下支えをするGoogleのAI
GoogleのPixelシリーズでおなじみとなる、生成AIを使った画像編集機能にも対応する。Galaxyシリーズには以前からガラスへの映り込みや、接写などの際の写った影を検知・除去する機能はあったが、編集時に不足する部分を“描き足す”こともできるようになった。Pixelの「編集マジック」に近い機能と言えば、理解しやすいだろう。例えば写真に写った人物や物を移動させると、本来、その背景は空白になる。ここで生成AIを活用し、背景を書き足すことであたかも自分や物が3D空間上のパーツになったかのように扱うことができる。
ここまでは編集マジックとほぼ同じだが、Galaxy S24シリーズの場合、角度補正にも対応する。もともと長方形だったデータを被写体に合わせて斜めにすると、上下左右に空白ができてしまう。一般的なスマホの画像編集の場合、画角をそのままにする際には端の部分をトリミングする。これに対し、Galaxy S24の生成AIは足りなくなった部分を書き足し、長方形の写真を作り出す。本来写っていたところを拡張することができるというわけだ。この機能はPixelの編集マジックにはなかったものだ。
AIは撮影にも活用。デジタルズームやナイトモードなどの処理にAIを使っているのは以前から変わっていないが、新たにフレーム補間によるスローモーション動画を作成できる「Instant Slo-mo」にも対応した。スローモーションで動画を撮るには、フレームレートを高くしなければならなかったが、この機能を使うと、AIが不足している“間”の映像を作り出す。その結果、フレームレートを問わず、撮った動画を後からスローモーションにできる。
サムスン電子は一連のAIをGalaxy AIと命名。対応機能は、設定時などに一覧で表示される。もっとも、そのAIモデルはサムスン電子が独自に開発したものではなく、多くの機能にGoogle Cloudの「Gemini Pro」や「Imagen 2」が活用されている。これらはクラウドベースのAIだが、端末上で処理が完結するものに関しては、同じGoogleの「Gemini Nano」を採用。自社AIに加え、GoogleのAIを組み合わせて、Galaxyの機能に落とし込んでいる。
Unpackedには、Googleでプラットフォーム&エコシステムを担当するシニアバイスプレジデントのヒロシ・ロックハイマー氏も登壇。「Do more with Google(Googleをもっと活用しよう)」というキャッチフレーズを掲げ、サムスン電子との協力関係をアピールした。GoogleのAIモデルを活用したのは、その一環。AndroidのセキュリティアップデートやOSアップデートも、それぞれ7年/7回に延ばし、Pixel 8シリーズに追随した。こうした長期保証ができるのも、Googleと密接な連携をしているからだろう。
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