iPhoneで機内からロケット打ち上げ撮影に挑戦 そこで感じたスマホカメラの課題とは
1月12日、JAXA種子島宇宙センターからH-IIAロケットが打ち上げられました。たまたま1月12日に奄美空港行きの便に搭乗予定だったので調べてみると、ロケットの打ち上げは13時44分に実施とのこと。すぐに指定座席を窓際に変更して機内から打ち上がるロケットを撮影する準備に取り掛かりました。
1月12日、鹿児島県種子島にあるJAXA種子島宇宙センターからH-IIAロケットが打ち上げられました。私がその情報を知ったのはロケット打ち上げの前日夜。パッケーング作業中に見た、1月11日のロケット打ち上げ予定が天候不良によって1日延期となったというニュースでした。
たまたま1月12日に奄美空港行きの便に搭乗予定だったので調べてみると、私の乗る便は14時05分に奄美空港着であるのに対して、なんとロケットの打ち上げは13時44分に実施とのこと。過去の飛行情報を見るにロケット打ち上げ時刻には周辺空域を飛んでいるだろう、いける! と推測した私はすぐに指定座席を窓際に変更して機内から打ち上がるロケットを撮影する準備に取り掛かりました。
あえて選んだスマホでの撮影
撮影にあたって選んだのは最新の「iPhone 15 Pro」。
機内という狭い環境では一眼の望遠レンズの取り回しは悪く、角度によっては撮影が難しい一眼を利用するのは不適切だろう。どこから現れるかが分からない、かつ恐らく一瞬の出来事であろうものに対しては使い慣れたスマートフォンで撮影するのがいいだろうという考えです。
理想をいえば、より望遠倍率の高い5倍望遠を搭載したiPhone 15 Pro Maxや、最大100倍ズームができるGalaxy S23 Ultraなどが欲しかったところでしたが、あいにく私が持ち合わせていたカメラが強力なスマホはiPhone 15 Proだけでしたので、当日の撮影は愛機のiPhoneで臨みました。
窓越しの撮影に四苦八苦
定刻より10分遅れて羽田空港を離陸したJAL659便は、ツアー客もおりほぼ満席の状態。離陸してしばらくした頃、機長より遅延の謝罪とロケット打ち上げの影響で迂回(うかい)飛行する(ため遅延回復は難しい)こと、ひょっとするとロケット打ち上げが見られるかもしれないということが伝えられました。
種子島周辺に近づくまでは、機内Wi-Fiにつなげて飛行機の様子をチェック。飛行機のリアルタイム位置や飛行経路などの情報が見られるFlightradar24に張り付き、打ち上げ時刻に自機がどこにいそうか、どの角度で見られそうかのシミュレーションをしていました。そうして迎えた打ち上げ時刻、撮影できた動画がこちらになります。
いやはや、入念に調べたつもりでしたが、カメラを向けるべき打ち上げ場所を間違えてしまいました、難しいものですね。
こちらの動画は感動のあまり、あまり画角のことを考えずに撮影しています。さすがにロケットが空に打ち上がる様子を目の当たりにすると、撮影よりも肉眼で見る方を優先してしまいます。
こちらはロケットを正面に捉えて改めて撮り直した動画になります。
完璧ではないですが、2本の動画で雲の奥からロケットが打ち上げられ宇宙に伸びていく様子、そしてそれを空の上から撮ったことが伝わる動画が撮影できました。途中ロケット雲が気流の影響でしょうか、ゆがんでいく姿も観察できて大変興味深いです。
さて、みなさんこの動画を見て何か違和感はありますでしょうか? 実はこのとき、私は相当焦っていました。
違和感の答えは、動画冒頭で光学ズームではなくデジタルズームになっていたことです。
打ち上げは50km以上先での出来事でしたので、遠景を撮影するために3倍望遠動画の撮影していたのですが、録画ボタンを押す前に暗い機内にカメラを向けていたためか、等倍メインカメラを使った3倍デジタルズームで撮影されていました。動画をよく見ると、雲の画質がわずかに粗いことからもお分かりいただけるかと思います。
これを3倍望遠カメラに切り替えるために、動画開始3秒の時点で一度等倍メインカメラに切り替え、すぐに3倍に戻す操作をしています。こうすることで、iPhoneが撮影環境を再計算。「環境が十分明るく、狙うピントが無限遠であること」をiPhoneが再認識することで、無事3倍望遠カメラに切り替わりました。切り替わりのタイミングで一瞬ピンボケになったのはレンズが切り替わった証拠です。
【訂正:2024年1月30日11時10分 初出時、Xperiaなど一部の機種では動画撮影中のレンズ切り替えができないと記載していましたが、対応している機種もあるため、該当箇所を削除いたしました。おわびして訂正いたします。】
その後はロケットのサイズ感を表現したく、改めて等倍メインカメラに切り替えたり、ロケット雲に着目したくて3倍望遠に戻したりしています。
今見返すと、動画は最初から見えなくなるまで撮るべきだったとか、広角はサブスマホで撮ればよかったとか、改善アイデアはたくさん出てくるものの、ひとまず一世一代の打ち上げショーに立ち会えた、そしてカメラに収められたというだけでも十分感動ものでした。
機内での撮影は明るさとピントに注意
機内でiPhoneを使った撮影では、以下の2点に気を付ける必要があります。
- 3倍望遠が意図せずメインカメラのデジタルズームになる
- 等倍が意図せず0.5倍超広角カメラのデジタルズームになる
1点目が起きる原因は、明るさとピントの2つ。iPhoneの望遠カメラは、暗い環境か近接撮影時には、より高性能なメインカメラのデジタルズームを利用する傾向があるため、機内の撮影ではほぼ利用不可能です。
また、私の場合のように、窓の外の撮影でも望遠レンズに切り替わらないことがあります。画質が荒いと感じたら、等倍と何度か切り替え、望遠レンズになっていることを確認してから撮影するといいでしょう。
2点目が起きる原因はピントであり、こちらは機内特有の問題です。飛行機の窓は3枚のアクリルでできており、表面の傷や汚れがひどい場合や窓の反射が強い場合、iPhoneのマクロ撮影モードが意図せず反応してしまいそちらにピントが合ってしまうことが多々あります。
こちらはピントの位置がおかしいので、1点目のトラブルより気付きやすいです。多くの場合は、端にあるチューリップのマークをタップしてマクロモードを解除することで解決可能です。
ほとんどのスマートフォンでは、撮影時に最適な撮影環境を自動で設定しますが、影者の意図しない挙動をすることもあります。
iPhoneではマクロモードの表示と解除が可能ですが、同等の機能は望遠レンズ、メインカメラ間にはありません。今回の撮影は、思わぬシャッターチャンスを最適なパフォーマンスで撮影できるように、スマホのカメラ特性を理解して撮影に臨む必要があると、強く感じた出来事となりました。
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