KDDIがSub-6の5Gエリア拡大で大容量化に自信――NTTドコモの通信品質にはグラフで腐す:石川温のスマホ業界新聞
KDDIが「通信品質向上の取り組みに関する説明会」を開催した。NTTドコモが通信品質面で苦戦する中、KDDIとしては品質面での優位性をアピールしたいようだ。
2024年2月15日、KDDIは「通信品質向上の取り組みに関する説明会」を開催した。
ソフトバンクや楽天モバイルに続いて、4社比較のグラフが登場。予想通り、赤いグラフの数値が悪いという、NTTドコモの通信品質を腐す内容となっていた。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2024年2月17日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
前日には楽天モバイルが決算説明会で、オープンシグナル社が調べた通信品質比較のグラフを示しており、KDDIの数値があまり良くない状況にあった。
その点について、KDDI関係者に突っ込んだところ「レイテンシーだけで比較するのは意味がないのでは」と反論していた。
確かに4社中、ソフトバンクは独自の評価指標による品質分析を行い、推定ユーザー体感の可視化を行い、KDDIは「パケ止まり発生率の変化」という自社ビッグデータによる調査から変化をグラフ化しているのだった。
楽天モバイルはレイテンシー、NTTドコモはスループット重視という、この2社は単純な数値だけを取り出して「良くなった」と示しているのだ。
当然、各社とも自分たちの数字がいいところの指標だけを持ってくるだろうが、このあたり、「どれくらいユーザー体感を重視しているか」という視点でメディアは捉えた方が良いかもしれない。
KDDIの今回のメッセージとしては「衛星干渉がなくなり、Sub-6の5Gエリアを2倍に拡大する。基地局の数も多く、帯域幅も200MHzあるので期待して欲しい」ということだろうか。
実際、KDDIの基地局数は3万4267局で、2位の楽天モバイル・1万5787局の2倍以上となっている。Sub-6による5Gエリア拡大で、大容量化を狙っていく。
NTTドコモがネットワーク品質の低下で、足踏みを強いられているなか、KDDIとしては、5Gで他社に抜きん出ようという戦略のようだ。
ちなみに現在、オープンシグナル社による総合的な評価ではソフトバンクがトップに君臨している。そのソフトバンクはSu6-6においては、100MHz幅しか持ってなく、基地局数も7355局と、KDDIからかなり見劣りするなど、消極的なスタンスにも見える。
KDDIは放送事業者が中継映像の伝送などに使用している2.3GHz帯の5G利用をすでに開始するなど、ソフトバンクを追い抜こうと着々と基地局を開設しまくっているようだ。
関連記事
KDDIの5Gネットワーク戦略を解説 高橋社長が「他社の上に立てる」と自信を見せる理由
KDDIが4月以降、首都圏で「Sub6」の5Gエリアを大きく拡大する。KDDIは、3.7GHz帯と4.0GHz帯の計200MHz幅を保有しており、大容量で高速な通信が可能になる。同社によると、そのエリアの広さはおよそ2倍まで拡大するという。KDDIが語る「パケ止まり」対策 2024年度は5G本来の力を発揮、基地局数も大きな武器に
KDDIが2月15日、5Gエリア展開と通信品質向上に向けた取り組みを説明した。2023年度末までの5G普及期は、4Gの周波数を転用することでエリアを拡大してきた。2024年度以降は普及期と位置付け、5G本来の力を発揮する環境が整うという。終わりの見えないドコモの通信品質改善 d払いアプリの活用で“パンドラの箱”を開く恐れも
ドコモは、2月2日に2023年から実施している通信品質の改善に関する進捗(しんちょく)状況を発表した。2000カ所の9割超の対策が完了し、平均スループットは向上したという。一方、2000カ所の対策を終えたとしても、本当にユーザーの不満が減少するかは未知数だ。ドコモとソフトバンクの“パケ詰まり”対策 明暗を分けた差はどこにあったのか
主に都市部の“パケ詰まり”に悩まされているドコモだが、同じ環境でも、他社は安定した品質で通信できることが多い。特にKDDIやソフトバンクは、SNSなどでも不満を訴える声を見かける機会が少ない。なぜ他社の通信品質は比較的安定しているのか。ソフトバンクが19日に開催したネットワーク品質に関する説明会で、その答えの一端が見えてきた。ドコモが通信品質改善を本格化しても残る疑問 他社との差を埋めるのに必要なことは?
ドコモはパケ詰まりに対して基地局のチューニングや増設を行ってきたが、場所や時間帯によっては、依然として通信品質が低下する。このような状況を受け、ドコモは年末にかけて新たな対策を実施する。通信品質対策を本格化したドコモだが、他社に後れを取ってしまったのも事実だ。
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.