欧州委員会がAppleに18億ユーロ超の「制裁金」 App Storeにおける音楽ストリーミングアプリの扱いを「悪質」と判断:Appleも反論
欧州委員会(EC)が、Appleに18億ユーロを超える「制裁金」を課した。App Storeにおける独占的地位を悪用して、音楽ストリーミングアプリ開発者に課している規約がエンドユーザーの不利益につながっていることを“悪質”と判断したという。Appleも声明を発表し、本決定に対して控訴する方針を明らかにした。。
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欧州委員会(EC)は3月4日(中央ヨーロッパ時間)、Appleに対して18億ユーロ(約2939億円)超の制裁金を課す決定を下したことを発表した。iPhone/iPad向けの「App Store」における音楽ストリーミングアプリの配信について、「市場における独占的地位を悪用した行い」が、欧州連合(EU)の反トラスト規則に違反したためだという。
本件を受けてAppleも3月4日(米国太平洋時間)に声明を発表し、ECの決定が「盛り上がりを見せ、競争もあり急速に成長している市場の現状を無視したものだ」と批判している。
ECの決定の概要
EU加盟国を含む「欧州経済領域(EEA)」では、EUの定める各種ルール(規則や指令など)に従ってサービスを提供する必要がある。ECによると、Appleは音楽ストリーミングアプリの開発者に対して、EEA在住のiOS/iPadOSユーザーに対して以下の告知を行うことを禁止していたという。
- アプリ外にある、代替的かつより廉価な音楽ストリーミングサービスの告知
- 上記の利用方法の案内
中でもECが“悪質”と見たのは、Appleがアプリ開発者に対して課す「反ステアリング規則」(参考記事)で、同規定では以下の機能をアプリに組み込むことを禁止していたという。
- インターネットで契約できるサブスクリプションオファーをアプリ内で紹介すること
- 「アプリ内購入」と「別の方法での購入」における差額をアプリ内で紹介すること
- 代替購入方法が可能なWebサイトへのリンク(誘導)をアプリ内で行うこと
- アプリ内でアカウントを作成した場合、メールなど別方法での告知も禁止
ECは、Appleの反ステアリング規制が「欧州連合の機能に関する条約(TFEU、※1)」の第102条(a)に違反する行為(不公平な取引条件)であると判断。App Storeにおける商業的利益の保護に必要でも、iOSユーザーが音楽ストリーミングサービスを契約する上での利益に悪影響を与えるとして、18億ユーロ超の制裁金を課したという。
(※1)2つあるEUの設立根拠法(条約)の1つ。もう1つは「欧州連合条約(TEU)」という
制裁金の決定に当たり、ECはApple株式の時価総額や、Appleがユーザーの権利を侵害した期間(10年間)の重大性も考慮したという。18億ユーロという金額は、今後の規則違反に対する“抑止力”として効果的が得られるように、基本額に“上乗せ”したものだそうだ。
Appleの反論の概要
Appleは、ECが「消費者被害の決定的な証拠を得ないまま下されたものだ」と批判しつつ、この決定の「主な支持者」で「最大の受益者」がスウェーデン(EU加盟国)に本社を構えるSpotifyだと“名指し”している。
Spotifyはヨーロッパにおける音楽ストリーミングサービスの56%のシェアを持ち、2位の企業とのシェア差は2倍以上だという。しかし、iOS/iPadOS向けSpotifyアプリはアプリ内購入機能が用意されておらず、有料(プレミアム)プランを利用するには、アプリ外のWebブラウザから加入する必要がある。
Spotifyアプリはアプリ内課金も利用しない“無料”アプリである。Siriはもちろん、CarPlayでの連携も使えて、Apple Watchでも利用できて、iOS/iPadOSにおけるウィジェットにも対応するなど、Appleが提供するエコシステムを存分に享受している。
しかし、Spotifyは当社に“一銭も”払っていない――Appleはそう強調している。その上で、SpotifyはApp Storeのルールをより自社に有利にしようと、ECに働きかけていると主張している。
Appleは今後、ECの決定を不服として控訴する方針だ。
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