MVNOが成長するのに“足りていないこと” 「格安スマホ」激動の10年を振り返りながら議論(3/3 ページ)
モバイルフォーラム2024で実施したパネルディスカッションを紹介する。テーマは「格安スマホから10年、これからのMVNOにユーザが望むこととは」。大手キャリアの値下げでMVNOは苦境に立たされたが、まだ成長するチャンスはあるという。
MVNOがさらに成長するためのヒント 「プロダクトインで考える」「PoCが全然足りていない」
10年を振り返った後は、今後、MVNOが成長するため、あるいはMNOとすみ分けするための新しい競争軸を生み出すために何が必要かを議論した。
MM総研の「独自サービス型SIM」の市場規模調査によると、MVNOサービスは2014年から右肩上がりで2020年までは成長してきたが、政府の値下げ要求による MMOの格安ブランドの浸透などによって2021年は大きく数字を落としている。ただ、接続料の値下げが進んだ影響で、2021年以降、契約数は微増を続けている。少しずつ回復基調にはあるが、2020年の1536万契約を超えるような成長を今後、見込めるだろうか。
佐々木氏は、「MVNOが格安スマホとしてレビューしてからたった10年しかたっていない。今の段階で、あまりネガティブに評価をする必要は全然ない」と語った。
「今後、10年、15年後に大きなパラダイムシフトが起こる可能性がある。0円ケータイ、1円スマホといったものも、過去のものになっていくだろう。MVNOは確実に今後も伸びていくと信じているし、それを可能にすべく、総務省に対する働きかけを今後も継続していかなくてはいけない。創意工夫がMVNO業界をさらに伸ばしていくことを疑っていない」(佐々木氏)
MVNOだからこしできるサービス、MNOとすみ分けするための競争軸として井原氏は「プロダクトアウトではなくて、プロダクトインが大手との差別化になる」との考えを述べた。
「そもそも乗り換えない方が75%ぐらいいらっしゃる。乗り換えられない課題を解決することもそうだが、顧客の課題、社会の課題がまだまだある。課題解決に軸を置いてサービス設計をすることは、MVNOの1つの在り方だと思っているし、われわれはまさにそこをやるべき」(井原氏)
石川氏は、イオンモバイルが「さいてきプラン」で、家族でシェアすることを前提にした150GB、200GBプランを加えたことを取り上げ、「やるなぁと思った」とコメント。1人向けの大容量プランではMNOとの差別化が難しいが、家族でシェアするプランには「伸びしろがいっぱいある」と評価した。
「MNOは使い放題プランに金融商品を絡めてARPUを上げる1本足打法。MVNOはそうじゃない、ユーザー視点に合ったお得なサービス設計ができると思わされた」(石川氏)
松田氏はmineoのファンと直接対話をしながら、一緒にサービスを作っていく姿勢を今後も続けていくと語った。ユーザーとアイデアを交換しながら、その時々に合ったmineoにしかできないサービスを作り上げていくことで、「価格だけではなく、サービス自体を見てもらい、これだったら使ってもいい、やっぱりmineoがいいと思ってもらえる」ことを期待する。
西田氏はMVNOがさらに成長するために、「スマートフォンの上で使うのではない、今の通信・通話の在り方とは違うニーズを開拓」することだとアドバイス。キーとなるのはやはり「IoTのような産業ニーズ」だという。
「仮に全部の自動車に通信機能が搭載されることになれば、圧倒的にニーズが高まる。そこを全てMNOに任せるのは、あまりにももったいないこと」(西田氏)
IoT、コネクティッドカー以外に、家庭の固定回線の代替も注目すべきジャンルとして挙げた。
今後、5G SAの展開も見込まれる。MNOではさまざまな事業者と5G SAの実証実験(PoC)を行っているが、佐々木氏は「僕らの視点からするとPoCが全然足りていない」という。
「1300のMVNOは、もっとPoCを馬力をかけてやっていかなきゃいけない。そうすると、MNO4社がやるPoCを数百倍に増やすことができる。打つ弾が数百倍に増えれば当たる弾も数百倍になる。僕らMVNOがそういう取り組みの一翼を担っていかなくてはいけない。それを可能にするためにも、一刻も早く5G SAの協議が実を結ぶように、MNOさん、総務省さんと協力していきたい」(佐々木氏)
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