鉄道の「自動改札機」はどのように進化したのか 97年の歴史と未来の姿(2/3 ページ)
日本の鉄道で自動改札機が1927年に登場してから97年。昭和の時代はスローペースで進化していたが、平成に入ると多機能化などが目立つようになった。現在は交通系ICカードが普及し、QRコード乗車券の台頭できっぷの投入口が消えつつある。
自動改札機にまつわる2つの課題
自動改札機が普及しても課題は2つあった。
1つ目は不正乗車。磁気乗車券および入場券は入場の記録がなくても、出場(下車)が簡単にできることからキセルがしやすい難点があった。1994年9月1日(木曜日)に阪急電鉄がフェアライドシステムを導入。成果を得たことで、同業他社にも波及した。
2つ目は1枚しか投入できないこと。在来線は基本的に1枚で十分だが、新幹線などは乗車券と特急券の2枚を持つ乗客が多いことから、改札は従来通り係員が目視していた。
2枚以上の投入に対応すべく、JR西日本は開発に乗り出し、1996年12月から大阪環状線鶴橋で供用を開始。近鉄との乗り換え改札に設置され、最大3枚の投入に対応した。
JR東海も東海道新幹線に最大4枚まで投入可能の自動改札機を導入することになり、1996年11月に試作機を開発。2年にわたる検証の末、1998年2月から10月にかけて供用を開始した。
交通系ICカードの普及、QRコード乗車券の台頭で投入口が消える
2001年11月18日(日曜日)、JR東日本の首都圏エリアで交通系ICカード、Suicaの運用を開始。当初、自動改札機は新型と改造の2種類でまかなわれていた。その後、エリアの拡大、同業他社との共通利用、電子マネーとしての利用が可能になると、乗車券の購入客が減少していった。
JR東日本などはIC専用の自動改札機を導入し、きっぷの投入口をなくしたことでメンテナンスの省力化を図った。また、無人駅や自動改札機を設置する必要性がない駅についても、簡易型のIC専用改札機を導入し、エリア拡大や利便性の向上につなげた。
2010年代に入ると、QRコード乗車券用の自動改札機も登場。きっぷを磁気式から普通紙に変更し、QRコードを印刷することで、コストの削減を図った。多くは交通系ICカードにも対応しており、利便性の維持に努めている。
関西では、スマートフォンによるデジタル乗車券の導入にも積極的で、駅の一部の自動改札機を改造して設置。QRコードの読み取り口を右斜めにするところもあり、左手でも容易にタッチできるようにしているものと思われる。
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