シャープに聞く「AQUOS sense9」の進化と「AQUOS R9 pro」を作ったワケ 根底に“AQUOS R9の刷新”あり(4/4 ページ)
2024年にスマートフォンAQUOSのデザインを刷新したことに伴い、「AQUOS sense9」も見た目や中身が大きく変わっている。同時に発表された「AQUOS R9 pro」では、カメラに特化したスマホというコンセプトをより先鋭化させた。シャープはこの2機種をどのようなコンセプトで開発したのか。
技術からの提案で、カメラリングにマグネットでアタッチメントを装着
―― 販路に関しては、キャリア版としてドコモのモデルがあり、あとはオープンマーケット版だと思います。KDDIの「au +1 collection」もこれと同じと考えていいでしょうか。
清水氏 そうなります。KDDIさんには、オープンマーケット版とまったく同じものを取り扱っていただく形です。
中江氏 X(旧Twitter)などでも、auから出ないのかというお声はいただいていました。au +1 collectionはアクセサリー的な扱いではありますが、取り扱っていただけたのはよかったと思います。やはり日本市場においては大きな販路ですからね。
―― シャープ直販の「COCORO STORE」で買う人も増えているのでしょうか。
中江氏 その動きは大きいですね。最上位モデルのAQUOSを買ってくださる方は、他のAQUOSも使っていることが多い。そういう方は、COCORO STOREを使う傾向があります。一方で、各キャリアやIIJmioで買う方は、AQUOSをスマホの1つと見ているので、少しだけ層が違うような気もします。
―― 周辺機器も工夫されていると思います。カメラリングにアタッチメントを付けられるのは面白いですね。
中江氏 こういうものを作れると言ったら、乗ってきたのがエレコムさんとLooCoさんでした。AQUOS R9 proの設計をするときに、リングの部分がステンレスになっているので、レンズフィルターをじか付けしたいというところから企画が始まっています。
―― そこは、最初からフィルターを付ける前提だったんですね。
中江氏 技術メンバーからのアイデアです。今までだとケースがあって、そこにねじ止めするような感じでしたが、今回はカメラだよねというところからスタートしているので、じかに付けてしまおうと無邪気な発想から始まりました。ただ、この位置にマグネットをつけるのは正気ではないと思います(笑)。
清水氏 普通だと、地磁気センサーもジャイロも狂ってしまいますからね(笑)。作る側もワクワクしながらやっていたのがよかったです。
―― その干渉は解決できたのでしょうか。
清水氏 しました。ちなみに、この機種はQi対応ですが、通常だとQiも狂ってしまいます。ですが、微妙な位置調整をして解決しました。
中江氏 内部でもノイズが発生しないよう、保護をしています。
オープンマーケット版は「海外のニーズ」を鑑みてシャッター音を消せるように
―― ちなみに、オープンマーケット版はシャッター音を消せるのでしょうか。
中江氏 シャッター音はなかなか扱いが難しく、われわれも全面的に押しているわけではありませんが、事実としては消せます。
清水氏 海外のニーズから来ている部分はあります。一方でキャリア版はキャリアからの要求があるのも事実です。
中江氏 人間の善意に委ねている部分はありますが、寝ている子どもを起こさずに撮れるというメリットはありますね。
清水氏 静かな飲食店での撮影もしやすくなります。われわれも(シャッター音を消せるようにしてほしい)という声があることは認識していますが、今回はその声に応えたというより、海外展開を意識しての仕様になります。
取材を終えて:AQUOS R9の刷新がAQUOS sense9とAQUOS R9 proにも生きている
AQUOSシリーズ全体のデザインを見直したことで、AQUOS sense9はその外観だけでなく、設計も大きく変更することができた。スペックを大幅に底上げできた背景には、こうした事情もあった。コストアップにつながりそうだが、上位モデルなどとのパーツの共通化で価格は抑えており、競争力をさらに高めることができた格好だ。その結果が、好調な初速に結びついている。
対するAQUOS R9 proも、普通のハイエンドモデルとしてのAQUOS R9があったことで、より大胆なモデルチェンジを断行できたといえる。カメラ機能を強化したのはもちろん、デザインもカメラライクになり、ガジェットを好むフラグシップモデルのユーザー層によりフィットする端末に仕上がった。2機種とも、AQOUS R9でデザインやコンセプトを刷新した好影響が出ている。その意味で、2024年のモデルチェンジは成功だったといえそうだ。
左からAQUOS R9 pro、AQUOS R9、AQUOS sense9、AQUOS wish4。振り切ったAQUOS R9 pro以外はデザインに統一感を持たせ、ローエンドからフラグシップまでくまなくカバーしている
関連記事
「AQUOS sense9」の“撮り心地”はどう? 「AQUOS R9」と比較する 魅力はペットと人物を切り替えるポートレート
シャープ製のスタンダード(ミドルレンジ)スマートフォン「AQUOS sense9」のカメラって、どうなんでしょうか? 先に発表されたハイエンドモデル「AQUOS R9」と比較しながら試してみましょう。「AQUOS sense9」はココが進化した 選べる6色の「ちょっとアガる、どまんなかスマホ」を実機で確認
シャープは11月7日にスマートフォンのミッドレンジモデル「AQUOS sense9」を発売する。豊富なカラーバリエーションやディスプレイ性能の向上など、先代「AQUOS sense8」から大幅なアップデートがあった。コンセプトの「ちょっとアガる、どまんなかスマホ」を実機で確認した。シャープ本気のフラグシップ「AQUOS R9 pro」を試す ライカ監修3眼カメラ、スマホ全体の使い勝手はどうか
カメラ性能を突き詰めたシャープの意欲作、AQUOS R9 pro。物理シャッターキーやフィルター対応など本格的な撮影機能を備えながら、日本向けの実用性も両立した異色のフラグシップモデルをレビューする。シャープの「AQUOS R9 pro」は“カメラを超える”スマホ 3眼カメラやシャッターキーの意図、19万円台でも投入する意義とは?
予想外の登場となったシャープの最上位スマートフォン「AQUOS R9 pro」。カメラのハードウェアに最高峰のものを採用しただけでなく、撮影体験を向上させる使い勝手の工夫も随所に盛り込んでいる。7月に発売した「AQUOS R9」がヒットした中で、なぜあえて19万円台の最上位モデルを出すのか。「AQUOS R9 pro」と「らくらくスマートフォン」 真逆の新機種から見える、日本メーカーの“生き残り戦略”
シャープとFCNTが、相次いで秋冬商戦向けの新たなスマートフォンを発表した。ハイエンドモデルでカメラ性能を突き詰めたAQUOS R9 proと、シニア世代でも簡単に使えるらくらくスマートフォンは、ターゲット層が真逆のようにも思える。一方で、特定の機能や市場にきちんと照準を合わせ、パーツレベルからスクラッチで作り込むモノ作りの姿勢は両社で共通している。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.