2024年のスマホを総括 生成AIの浸透/カメラは完成形の域に/メーカーの勢力図に変化も:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2024年は、スマホが生成AIを取り込み、その基本性能を大きく伸ばした1年だったと総括できる。一方で、スマホに搭載される機能の中で最も重要視されているカメラも、本家といえるデジタルカメラに迫る性能を持った端末が多数投入された。カメラの処理にもAIがフル活用されてきたが、その集大成的な1台が目を引いた1年だった。
カメラスマホは完成形に? 目立ったカメラメーカーとの協業
文章や画像の解釈、生成などが可能になったAIだが、どちらかといえば、これまでのスマホではカメラの画質向上に使われるのが一般的だった。コンピュテーショナルフォトグラフィーと呼ばれるのがそれだ。イメージセンサーから入力された映像を分析し、それぞれに最適化を施すことで、一般的なデジタルカメラよりも鮮やかでダイナミックレンジの広い写真を実現している。こうした機能は今やミッドレンジモデルでも一般的になりつつある。
とはいえ、その操作性に関しては撮影専用機ともいえるデジタルカメラには及んでいなかった。高倍率のズームや、超広角など、メイン以外のカメラ性能にも課題があったといえそうだ。こうした中、Xiaomiは2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelonaに合わせ、「Xiaomi 14 Ultra」のグローバル版を発表。同モデルは日本市場におけるXiaomi初のナンバリングモデルとして、5月に発売された。
Xiaomi 14 Ultraは、メインカメラのセンサーが1型と大きいだけでなく、F1.63からF4.0まで無段階に絞りを変更することができるのが大きな特徴。ソニーの「Xperia PRO-I」やサムスン電子の「Galaxy S9」など、絞りが可能なスマホは過去にもあったが、いずれも2つの値からどちらか一方を選択できるだけで、中間はなかった。また、ソニー、サムスンともに後継機で絞りの搭載をやめ、現行モデルでは非対応になっている。
Xiaomi 14 Ultraは、1型の広角カメラに加え、12mm超広角カメラと75mm望遠カメラ、120mmペリスコープカメラの4つを搭載している。これらをデジタルカメラのレンズを模した円形のリングの中に収めたデザインも、同モデルを際立たせているポイントといっていい。また、Xiaomi 14 Ultraには本体と合体させ、シャッターの押下やズーミング操作が可能な「Photography Kit」が用意されており、装着するとよりデジタルカメラ風の見た目に近づいた。日本では、これが付属していたのも、注目を集めたポイントといえる。
デジタルカメラ超えを目指してAIを取り込み進化してきたスマホだが、操作性に関しては一歩及ばないところもあった。それを周辺機器で補うのがXiaomiの方針だ。周辺機器ではなく、本体に大型のシャッターキーを搭載した端末も登場した。シャープの「AQUOS R9 pro」だ。同機も、Xiaomi 14 Ultraと同様、メインカメラに1型のセンサーを搭載。これまでのAQUOS R proシリーズよりも、さらにカメラ風の見た目になり、Xiaomi 14 Ultraに真っ向から対抗するモデルとして話題を集めた。
2社とも、カメラにはライカブランドを冠しており、画作りやレンズシステムなどの開発で密接に連携している。日本市場では、もともとシャープがライカのブランドを独占的に使用していたが、Xiaomi 14 UltraでXiaomiにも拡大。11月に発売された廉価ハイエンドのXiaomi 14T Proや、そのベースモデルにあたるXiaomi 14Tでもライカブランドは全面的に打ち出されていた。
12月には、その対抗馬になりうるOPPOの「OPPO Find X8」も発売された。同機は約3年ぶりとなるOPPOのハイエンドスマホで、カメラはハッセルブラッドと共同で開発。画作りなどにそのノウハウが生かされている他、ハッセルブラッド特有の1:2.7という画角で撮影が可能な「XPan」モードを搭載する。こうした老舗カメラメーカーとの協業により、スマホメーカーに足りなかった画作りに対するノウハウが底上げされた。
一方で、スマホのカメラで追求できる画質は限界に近づきつつあることも事実だ。特に1インチセンサーを搭載するようになって以降、差別化のポイントがより細かくなっている。このような中、Xiaomi 14 UltraのPhotography KitやAQUOS R9 proのシャッターキーに象徴されるように、撮影時の操作性を改善し始めたのは面白い動きといえる。スマホカメラの画質はもちろん、その使い勝手もデジタルカメラに近づいた1年だったと総括できる。
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