KDDIが“povo2.0×個人向けPC”を展開する理由 「5年で300GB」のデータ容量は十分といえるのか:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)
KDDIは、法人向けサービス「ConnectIN」をコンシューマー向けに拡大。回線にpovo2.0を利用し、「ConnectIN povo」という名称でサービスを展開する。ただし法人向けはデータ容量が無制限だったのに対し、個人向けは5年で300GBという制約がある。
KDDIは、法人向けサービス「ConnectIN」をコンシューマー向けに拡大。回線にpovo2.0を利用し、「ConnectIN povo」という名称でサービスを展開する。その第1弾として、日本HPから4G、5G対応のPCが3機種発売された。いずれも法人向けに展開しているモデルをConnectIN povoに対応させ、コンシューマーに販売するという位置付け。製品は日本HPの公式オンラインストアで購入できる。
使い放題のモバイルデータ通信をあらかじめ組み込み、製品価格に含める形で展開してきた法人向けのConnectINだが、コンシューマー向けのサービスはやや特徴が異なり、povoの仕組みを全面的に取り入れたものになっている。データ容量も5年で300GBと制約がある。では、なぜこのような仕様で展開していくのか。KDDIの狙いを解説するとともに、同サービスの今後を展望していく。
法人向けのConnectINをコンシューマーに応用、なぜpovoだったのか
ConnectINは、KDDIが2025年1月に法人向けサービスとして開始した通信のソリューション。PCなどのデバイスに回線を組み込み、メーカーがそれを顧客である法人に販売する。KDDIは固定額の通信料を受け取るのではなく、ConnectINを組み込んだメーカーからレベニューシェアを受けるというビジネスモデルを採用する。
この仕組みに乗るメーカー側にとってのメリットは、通信を組み込んで販売しやすいところにある。法人向けに導入する端末管理や回線手配などの手間をKDDIに半ば丸投げでき、レベニューシェアのため初期投資もかからない。PCを購入する企業にとっては、製品の価格に通信費も含まれているためコストを抑えられ、導入も簡単になる。
データ容量に制限はなく、PCでの常時接続が実現するのがこの仕組みだ。技術的にはeSIMを活用する。採用企業には先行導入で実績を重ねた日本HPに加え、ダイワボウ情報システムやDynabook、パナソニック コネクト、VAIOといった幅広い日本メーカーも名を連ねる。導入するユーザーにとっては便利な仕組みだが、サービスは法人に限定されている。
そのため、たとえビジネスに使いたくても、法人格を持たないフリーランスには導入ができなかった。その他の個人利用はさらに難しく、KDDIにはサービスの拡大を期待する声が寄せられていたという。ただ、ConnectINをそのまま横展開するには障壁もあった。その1つが、データ容量だ。KDDIのパーソナル事業本部 パーソナル事業戦略本部 事業推進部 相原円氏は、次のように語る。
「法人だと何でもやっていいわけでなく、(使い方は)業務によって統制される。一方で、個人のユーセージは本当にさまざま。コンシューマーだと、動画を見たり、SNSで大きなデータを投稿したり、フリーランスの方はノマドワークに使ったりと、容量や使い方に大きな幅がある」
ある程度通信量を読みやすい法人利用に対し、コンシューマーの場合、天井を突き抜けるような使い方をするユーザーまで想定しておかなければならない。
実際、「世帯向けだと固定回線やホームルターを提供しているが、トラフィックは非常に大きい」(同)という。そこに合わせて使い放題に設定すると価格が上がってしまうこともあり、「普及させるための工夫と検討を重ねてきた」(同)。結果的に採用したのが、オンライン専用ブランドとして展開しているpovo2.0の仕組みを応用することだった。
5年で300GBを端末にセット、トッピングの購入も可能に
具体的なサービス内容は、次の通りだ。日本HPの販売するeSIM対応の3機種で、povo2.0のeSIMプロファイルを専用サイトからダウンロードできるようにする。専用サイトで契約作業を済ませて、PCのシリアル番号とEID(eSIM対応端末に割り当てられた一意の識別子)を入れると、データ容量300GBのキャンペーンコードを適用できるようになる。
回線はデータプランのため、マイナンバーカードや運転免許証を使った本人確認は不要で、すぐに発行が可能だ。この300GBは、5年間有効。通常のpovo2.0と違い、180日ごとのトッピングがなくてもこの期間内なら利用は停止されない。300GBの容量は固定だが、ユーザー自身でトッピングを買い足すことも可能だ。
データ通信が多くなりそうなときだけ無制限のトッピングを購入したり、300GBが途中で尽きてしまった際に年間トッピングをつけて容量を増やしたりといった使い方もできる。回線の通常のauやUQ mobileではなくあえてpovo2.0を選び、運用の柔軟性を確保したといえる。
仕様的には通常のpovo2.0と同じになるため、ローソンで1カ月10回、1回ごとに100MBが付与される「povo Data Oasis」にも対応する。ローソン店内でPCを開いて専用サイトにアクセスするのは少々ハードルが高いが、スマホにアプリを入れ、PCと同じアカウントでログインしてチェックインすれば、その回線にデータ容量が付与される。
5年間で300GBを1カ月に換算すると、データ容量は5GBになる。データ通信が頻繁で、かつ扱うデータのサイズが大きいPCには心もとない数値だが、カフェなどでは、無料でWi-Fiを利用することが可能。KDDI傘下のワイヤ・アンド・ワイヤレスが手掛ける「ギガぞうWi-Fi」もセットになっており、こちらも無料で5年間の利用ができる。
トラフィックの大小が読みづらいコンシューマー向けということもあり、データ容量はいったん300GBで区切り、povo2.0のトッピングや公衆Wi-Fiサービスを付けることで不足する分を補ったというわけだ。ユーザーにとって制約になってしまう部分は法人向けより多いが、別途回線を契約するより、おトクに使える仕組みといえる。
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