インタビュー

Y!mobileの新料金プランは「捉え方次第で値下げ」「楽天モバイルとUQ mobileを強く意識」 キーパーソンを直撃(1/3 ページ)

ソフトバンクがY!mobile向け新料金プラン「シンプル3」を9月25日から提供する。ユーザーメリットとしては、Sプランのデータ容量が1GB増えている他、海外でのデータローミングも(26年夏以降)2GBまで無料になる。割引後の金額が大きく変わらないのであれば、あえて新料金プランを投入する必要があったのか。ソフトバンクの専務執行役員、寺尾洋幸氏に聞いた。

 ソフトバンクは、Y!mobileの新料金プラン「シンプル3」を発表した。9月25日から提供が開始される。シンプル3はこれまでと同じ「S」「M」「L」の3プラン構成を維持しながら、各種割引適用後の料金は据え置きになっている。さらに、新設されるPayPayカードゴールドでの「PayPayカード割」が適用された場合、Sプランは858円、Mプランは1958円、Lプランは3058円まで料金が下がる。

 一方で、現行の料金プランである「シンプル2」と比較すると、割引適用前の料金は上がっている。その分、料金に占める割引の比重が高くなり、経済圏連携の色合いが濃くなった。別の視点では、囲い込みの要素が強くなったようにも見える。見方によっては値上げとも値下げとも取れる料金プランに仕上がっているといえる。

 ユーザーメリットとしては、Sプランのデータ容量が1GB増えている他、海外でのデータローミングも(26年夏以降)2GBまで無料になる。ただ、Y!mobileは他社が値上げする中、価格を維持してきたこともあり、MNPでも好調だったという。割引後の金額が大きく変わらないのであれば、あえて新料金プランを投入する必要があったのか。発表会後の囲み取材やグループインタビューで、ソフトバンクの専務執行役員 コンシューマ事業統括を務める寺尾洋幸氏がシンプル3導入の狙いを語った。

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新料金プラン発表後に、報道陣からの囲み取材とグループインタビューに応えた寺尾氏。その模様を、一問一答に再構成した上でお届けする

ゴールドカードも含めれば値下げにしている

―― 料金改定を示唆していましたが、最初に動いたのがY!mobileだったのはなぜでしょうか。勢いを考えると、一番収益への影響も大きそうですが。

寺尾氏 今、一番獲得しているブランドは間違いなくY!mobileですので、ここをしっかり値上げせず――これは捉え方次第ですが――ゴールドカードも含めれば値下げにしています。書いてくれないと思いますが、値下げと書いてほしい(笑)。Y!mobileの方が、影響が大きいというのが1つあります。その中で、ゴールドカードなどでお客さまのご負担を下げることができる。そういう構成を作れるということが見えてきたのでやらせていただきました。

 まず旗艦になっているY!mobileを固めた上で、ソフトバンクの方をどうするのかというのをやっていこうかなと思っています。LINEMOについては、オンライン専業になっていて獲得自体はそんなに強くないです。なので、これを変にいじるよりも、投資効率を考えるとY!mobile、その次がソフトバンクという順番が妥当な線かなと思っています。やはり価格を変えるにしても、付加価値をちゃんとお伝えしなければ、たぶん誰にも納得していただけないと思うんです。その辺の準備も全体として今やっていて、整った段階で考え方の整理をしようかなと思っています。


3ブランドの中で先陣を切って新料金プランを打ち出したのが、Y!mobileだった

―― その中でLINEMOは必要なのでしょうか。

寺尾氏 グッドクエスチョンですね(笑)。正直なところ、今、お試しとして(LINEMOを)使っています。新しい施策をやるときに、先にLINEMOで試してみて感度を見ています。LINEMOは規模的に小さいので、(収益に与える)影響度も小さい。シンプル3が「シンプルでない」と(質疑応答で)言われてしまいましたが、本当にシンプルでサクッと変えたいならLINEMOは早くできていいブランドで、それはそれで価値があると思っています。3ブランド体制はいろいろな課題を抱えているので、ある程度の仕組みは考えなければなりませんが、短いスパンで見ると、このままの方がいいと思っています。

割引込みで料金は据え置きだが、新料金プランで収益は改善する

―― 割引後の料金が据え置きになるのであれば、無理に新料金プランにする必要もなかったのではないでしょうか。

寺尾氏 われわれの経済圏を使っていただければ据え置きになります。ただ、(旧料金プランにあった)1GB以下の割引をやめたり、本質ではないところにお金を使っていたところがあったりしたので、そういうものを外していきました。そこで出てきた原資をある程度当てています。

―― 好調だったということですが、なぜこのタイミングだったのでしょうか。

寺尾氏 一言で言えば、意外と収益改善するからですね。

―― 何が効いているのでしょうか。

寺尾氏 小さなことの積み上げです。月間で結構な獲得や解約があるので、半年早く始めるだけでものすごく大きな数が動きます。累積でそういう数字が効いてくる。新しいプランの方が平均するとARPUが高くなる構造は作っていますし、うまくいけばSoftBank光の加入率やカードの支払いも上がります。ちょっとずつの積み上げですが、1000数百万契約いると、結構な数になります。誰からいくらというよりも、本当にちょっとずつですね。


シンプル3の詳細。基本料は上がっているものの、割引が大きくなっているため、それらを適用するとシンプル2と同額になる

―― 現行の料金プランから新料金プランに移るのは、どのぐらいかかるのでしょうか。

寺尾氏 結構早いと思います。3~4年か5年もあれば移ります。自主的に動いてくださる方もいますし、解約後に獲得する動きもあります。月間の解約率が1.5%ぐらいだとすると、5年で20%近い人が入れ替わります。全体的に見ると、結構大きく変わってくる。5年というタームだとすると、半年は結構大きな期間で、できるだけ早くしたかったのはそういう流れもあります。

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