相次ぐ携帯電話の「事務手数料」値上げは善か悪か――携帯電話ショップの店員はどう考えている?:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/2 ページ)
ソフトバンクとNTTドコモが相次いで、携帯電話に関する事務手数料を値上げしたが、一部の手続きはオンラインで行うと手数料が減免されるようにもなっている。このことについて、値上げのあおりを受けそうな携帯電話ショップの店員に話を聞いてみた。
「オンラインショップ優遇」はリアル店舗への“いじめ”なのか?
今回のドコモとソフトバンクによる事務手数料の値上げだが、キャリアショップを始めとする実店舗と、オンラインショップとで値上げの内容が異なっている。
ソフトバンクの場合は店頭が4950円なのに対して、オンラインショップは3850円と1100円の差がある。ドコモの場合は店頭が4950円なのに対して、オンラインショップは原則として何と0円、つまり無料としている。ドコモは以前から「オンラインショップなら事務手数料が無料」を売りにしているので、値上げ後もそこは維持した格好だ。
このような措置について、店員はどのように思っているのだろうか。
見れば分かる通り、実店舗では私たちスタッフがお客さまへの対応をしています。いろいろな案内をしたり、手続きを進めたりといったことをしているので「こういうことに対して事務手数料を請求しているのか」と分かりやすいです。
一方で、オンラインショップはお客さまが自分でWebサイトから手続きを進めるので、一見すると人手がかかっていないように見えます。しかし、手続きは完全に自動化されているわけではなく、受注後の審査(申し込みを承認するかどうかの判断)や配送作業などに人を使っています。
オンラインショップにも人手がかかっているわけですから、オンラインショップだけ手数料を減免するのはちょっと納得できない面があります。
お客さまから「オンラインショップなら~」と言われることもあります。そうしたら「機種を手に取って触れる場所を提供したり、スタッフがお客さまに合った機種やサービスを直接説明したりと、よりお客さまに満足頂けるサービスを提供する対価です」と説明して納得してもらっています。
ただ、最近は端末という観点だとバリエーションや売れ筋に“偏り”が見られるようになってきて「お客さまが店頭に買いに来るメリットって何だろう?」と、売る側ですら考えることがあります。ある意味で、「今使っているものの新モデルを買えばいい」だけですし。
そうなると、お客さまが店頭で提案や相談を受ける意味も薄れますから、「だったら手数料の安い、あるいは掛からないオンラインショップで買おう」となるお客さまが一層増えるような気がします。そこがとても心配です。
現在は、店頭とオンラインショップとで端末価格に差はほぼありません。最近は「店頭限定キャンペーン」も減少傾向にあることを考えると、事務手数料がタダか値引きされるオンラインショップの方が間違いなく優位です。キャリアにもよりますが、そこからさらに「オンライン限定キャンペーン」なんてやられた日には……。
ただでさえ「店舗よりもオンライン」という人が増えているので、店舗いじめかなって考えちゃいます。
筆者もこの数年、コロナ禍の影響などもあって端末の購入や契約上の手続きをほとんどオンラインで済ませてしまっている。本誌の読者も同じようにオンラインを活用している人の方が多いのではないだろうか。サービスの改善によって、店頭でないと行えない手続きもかなり限られている。わざわざ店舗に出向いて手続きを行うメリットは、ますます薄れている。
自分でもできることを、店員に任せて事務手数料を取られるのが、無駄なコストに感じる――そう考えて、余計に店舗での購入を忌避してしまう人が増えてしまうという不安や不満は、多くの店員が共有しているだろうし、筆者も理解できる。
事務手数料の値上げは店舗を「残すため」? それとも「減らすため」?
事務手数料の値上げの背景だが、ドコモは「昨今の物価高や説明事項の増加などに伴う各種費用の増加」、ソフトバンクは「物価高騰に伴う各種費用の上昇をはじめとする昨今の状況」を理由として挙げており、物価の上昇が大きな要因となっていることは間違いない。
店舗の管理スタッフに話を聞くと、店員の賃金上昇の原資確保や借りている建物/区画の賃料の上昇など、店舗を維持するためのコストは上昇傾向にあるという。維持コストの回収には売上の確保が欠かせないが、オンラインショップでの購入比率が上がってしまうと難しい。結果として、経営体力のあるうちに店舗の統廃合を進めてしまうという判断をする代理店も存在する。
ドコモやソフトバンクの事務手数料の値上げは、端的にいうと「店員の手を借りないでいい客は、手数料の減免をトリガーにオンライン誘導してコスト削減」しつつ、「店員の手を借りなければならない客には応分のコストを負担してもらう」という発想だ。
この値上げが店舗や販売ネットワークの維持にプラスとなればいいのだが、当の店員は逆効果(≒店舗離れにつながる)と考える傾向にある。店員たちの不安や心配は杞憂(きゆう)に終わるのか――各キャリア(あるいは代理店)のショップ展開に注目してみてほしい。
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