povo2.0の「トッピング多すぎる問題」はAIで解決、サブ回線でも価値に磨きを――濱田達弥新社長に聞く(2/4 ページ)
povo2.0を運営するKDDI Digital Life(KDL)の新社長として濱田達弥氏を迎えた。2025年4月からpovoは濱田氏がかじ取りをしており、「povo AI」やペイディでの分割払いへの対応など、矢継ぎ早にサービスをアップデートしてきた。AIの活用法やパートナー戦略についてお話を聞いた。
povo AIを発展させて個人に合ったトッピングを提案できるようにしたい
―― それにしても、トッピングは多いですよね。ちょっと多すぎる気もしました。
濱田氏 アプリのボードの中にトッピングがワーッとあると、例えば3GBと5GBの差が何かが分からないかもしれません。シンプルにして、これとこれ、という方が確かにメニューは選びやすいと思います。ただ、povoはご自身にパーソナライズされた形で選べて、選択肢が多いことを強みにしています。アプリの見せ方やユーザーインタフェース(UI)の方法、タッチポイントを改編することは必要ですが、多様性のある形は残していきたいですね。低容量短時間のものもあれば、大容量長時間のものやその中間もあるという形です。
将来的には、コンシェルジュ型でAIエージェントが推奨するような形のものを考えています。今のアプリはスタティックで、何となくたくさんのものがあります。ただ、レストランに行って、メニューがワーッとたくさん並んでいると困ることがありますよね。将来的には、逆にパッケージをもっと増やして、お客さま単位で推奨をオートメーションでできる形にしたい。
2階層目に行くとものすごくいっぱいのトッピングがありますが、皆さんが普段利用している動向をベースに、このぐらいのレンジのものはいかがですか、ということをお勧めできないかと考えています。今は一押し情報のバナーも、全ての方にまったく同じものをお見せしていますが、まずはこれを少しずつインディビジュアルな方向にしていきます。
大容量を使っている方に1GBトッピングをお見せしてもしょうがないですからね。逆に、普段低容量でご利用いただいている方に、ちょっと上のものをお得感ある形で見せることもできます。そういったアプローチを取っていきたい。その次のステップとして、究極的には先般入れたpovo AIの活用があります。povo AIは今、「GPT-4o」や「Perplexity」がベースになっていますが、そのうち、「GPT-5」も入れていきます。これを発展させていこうと考えています。
―― AIにお勧めを聞けるのはいいかもしれないですね。
濱田氏 例えば、「今日から1週間旅行に出掛ける、その最中にYouTubeを毎日3時間見たい、そのときにどんなトッピングがいいか」を聞くとします。AIは、数あるpovoのパッケージの中から、最適なものを提示できます。このパターンだと、例えば10GBをご購入いただくケースもあれば、3GBを3つ買うこともありますが、短いものを3回買うとコストがちょっと高くなる。コストエフェクティブな観点では10GBというパターンがあると推奨することもできます。
正直に言えば、今のpovo AIでも同じようなことはできてしまいますが、povoの中で聞いてデータを参照した方がもっと早くなります。こういった使い方ができるよう、povo AIをもっと発展させていこうと思っています。
また、今は無機質な文章が並んでいるだけですよね。これ(povoのキャラクター、名前はまだない)をもっと有機的にしたい。声を出すかどうかは要検討ですが、お客さまはアバターがキャラクター的に回答するのが大好きですから。先日、インフルエンサーの方々と座談会をやらせていただきましたが、その際にお伺いしたら、「もっとキャラクターを使ってほしい」「何で動かないの」というお話をいただきました。AIが質問した内容を回答するとき、彼が単純に動いて答えてくれるだけで全然インパクトが違ってきます。
―― AIとのチャットで、そのままトッピングを買えるとエージェントのような感じがしていいですよね。
濱田氏 テキストからシステムに連動させるのがなかなか難しいのですが、購入ボタンを出してあげて買えるようにすることはやっていきたいですね。
先ほどの座談会で、povo AIにあえて聞く理由は何なのかをうかがったのですが、povoのキャラクターが答えるところで大きな差が出るようです。お伺いしたところ、「今日は疲れた」「上司があんなことを言っている」と“チャッピー(ChatGPT)”と会話しているようです。ただし、あれは無機質なテキストです。
それをキャラクターにして、AIアバター型コンシェルジュとして購入までの導線があるようにしていけば、純粋にアプリとしても楽しめて、お客さまがエンゲージされていくのではいでしょうか。これで徹底的に市場での差別化を図っていきます
povoは立ち上げのころから、「Gen Z(Z世代)」やヤングジェネレーションをターゲットにしていました。実際、全ユーザーのほとんどが20代から40代です。ただ、開始から5年もたつと、だんだんとその年齢層も上に上がっていきます。
私も50を過ぎていますが、何年かすれば60になりますから(笑)。でも、スマホは思いっきり使っていますし、AIも活用しています。デジタルに強い若者がGen Zというのはちょっと古い。デジタルジェネレーションを「Gen D」だとすれば、シニアも含まれますし、今のタブレットを使っている小学生も入ってきます。
ただ、そのときに、シニアの方はパッケージをワーッと出されると困る。今は、アプリを幼年層向け、シニア向け、メインのど真ん中という分け方をしていくのがいいのかもしれませんが、究極的には音声とデータがあって、後はお客さまごとのトッピングがあるという形に持っていければいいなと思っています。povoのユーザーは何百万人もいるので、その際にはAI化されたプロセスオートメーションが役に立ってきます。
クラウドネイティブなプラットフォームで矢継ぎ早にトッピングを導入
―― このAIはいつごろまでに導入する予定でしょうか。
濱田氏 今はpovo AIを入れ、プリミティブ(原始的)なことはできますが、まだ手間がかかります。この後、後ろで動かしているAIモデルをGPT-5に入れ替えることを考えています。また、今の仕組みは履歴を残せないので、そういったものはオプション化していこうと思っています。
エージェント型を検討するのは、その次ぐらいです。アプリ側はそんな段取りになっていますが、Webサイト側にはエージェント型コンシェルジュを年内早々には入れたい。コミットできるようなものではありませんが、10月、11月ぐらいにはプロトタイプ的に入れたいと思っています。そこでのリアクションを見ながら、アプリに入れることを考えていきます。
―― 通常のキャリアだと、1つの料金プランを作るだけで何カ月もかかったりしますが、ここまで素早くトッピングを投入できるのはなぜでしょうか。
濱田氏 クラウドネイティブなデジタルプラットフォームを使っているからです。複雑なシステムがバーティカルに並んでいるのではなく、ワンパッケージで仮想空間の中に入っているのが大きいですね。
―― そこがCirclesと開発したシステムということですね。
濱田氏 はい。共同開発しているイメージです。われわれがビジネスとしてのリクワイアメント(要求仕様)を出して、開発する流れです。レガシーと言うと怒られてしまいますが、そういったシステムとは大きく異なります。レガシーなシステムは分業で、責任が細かいところに押し込まれているので安心安全ですが、スピードという観点では、それぞれをつなぎこまなければいけないので大変です。
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