「eSIM」は人類にとって早すぎる? 携帯電話ショップ店員に聞いたら意外な答えが:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(3/3 ページ)
Appleが発売した「iPhone 17シリーズ」「iPhone Air」の日本向けモデルは、“eSIMオンリー”であることが大きな話題となった。eSIMについて、携帯電話の販売スタッフはどう思っているのか、話を聞いてみた。
eSIMは思ったより混乱を起こしていないように見えるが……
筆者は、携帯電話についてそこそこ詳しい方だと自認している。しかし、eSIMに関するちょっとしたトラブルに巻き込まれることはちょくちょくある。
まず、eSIMに関する手続きは事業者によってやり方(仕組み)が違うことに伴うトラブルだ。
例えばドコモの場合、他事業者とは異なり、eSIMの申込時に端末に備わるeSIMチップの「EID」(固有ID)を提出しないといけない。EIDは32桁もあるため、1~2文字の入れ間違いが原因で、端末にeSIMプロファイルを書き込めないというトラブルが起こりやすい。
「こんな面倒なことをしているのはなぜ?」と疑問に思うかもしれないが、これはeSIMプロファイルを第三者に詐取されることによるリスクを極小化するための措置だ。とはいえ、他事業者にはない仕組みなので、ユーザー目線ではかなり煩雑に思える。
ただし、機種によっては端末の操作で「SIMカードからeSIMへの移行」「別端末へのeSIM転送」を行える。これをうまく活用すれば、この煩雑さからは解放される。
ドコモの場合、eSIMを発行する際に端末内のeSIMのEIDを提出する必要がある。これは「ドコモオンラインショップ」における手続き画面だが、SIMカード→eSIMへの変更時も同様で、店頭でも同じくEIDの提出を求められる
ドコモユーザーで「EIDを入れるの面倒」という人は、機種によっては端末設定から「SIMカードからeSIMへの移行」を行えるので、これをうまく活用したい(Androidスマートフォン/iPhone・iPad)
また、ドコモを含む全ての事業者で起こりうるのがeSIMを別端末に移行する手続きの問題だ。
最近はiPhone/iPadだけでなく、Android端末でも端末操作で移行できる仕組みが導入されている。しかし、この仕組みは全ての端末が対応しているわけではなく、移行元端末と移行先端末の組み合わせによってはeSIMの“再発行”で対応せざるを得ない場合がある。
機種購入を伴わない単純な“入れ替え”目的の再発行であっても、事業者によっては方法次第で事務手数料を徴収したり、新規契約時と同様の本人確認手続きが必要だったりする。手続き方法については、自分が契約している事業者のWebサイトなどで確認してほしい。
iOS 26とAndroid 16では、ようやく懸案だったiPhone⇔Androidスマホ間のeSIM転送を実現した……のだが、事業者側の対応も必要で2025年11月時点において、日本の事業者では一切利用できない。ゆえに、iPhone⇔AndroidスマホのeSIM移行は「eSIMの再発行」で対応せざるを得ない
率直にいうと、上記のようなことがあるので筆者個人としては「人類にとって、eSIMはまだ早い」と思うこともある。ゆえに、一般層も多く手に取るであろう新型iPhoneの発売時となれば「ショップでもトラブルが多く起こったのでは?」と予想していた。
しかし、店舗スタッフに話を聞いた限りはドコモのシステム障害以外は大きな問題は起こらなかったということで、正直驚いた。「新型iPhoneのeSIMオンリー」をどこまで想定していたのかは分からないが、さまざまな理由でeSIM移行を強化した通信事業者や販売店の努力のたまものなのだろう。
ただ、販売店目線に立つと、eSIMシフトには大きなデメリットもはらんでいる。店舗スタッフからはこんな話もあった。
SIMカードまでデータ(eSIM)にされてしまったら、お客さまが店頭に来るきっかけが余計に減ってしまいますね……。
「なぜか圏外になってしまった」と来店したお客さまがいたとして、今までは「SIMカードの故障による再発行」という手続きだけでなく、場合によっては「機種が古いから、セキュリティ面も考えて機種変更しましょう」、あるいは「プランが古いので新しいプランにするとお得ですよ」といった提案もできました。しかし、eSIMが主流になるとSIMカードをトリガーとする提案や契約の獲得/変更チャンスが減ってしまうのではないかと不安です。
eSIMの普及は、店頭スタッフにとって別の悩みを増やしてしまったのかもしれない。
関連記事
iPhone 17とAirのeSIM、本当に「良いSIM」か メリットとデメリットは?
Appleの新型「iPhone 17」シリーズ。販売される国や地域によってハードウェアの仕様が若干異なるが、日本国内モデルはSIMが「eSIM」のみの対応となる。eSIMのメリットとデメリットを整理。新しい「iPad Pro」を手にして分かったeSIMのメリットと課題 iPhoneのeSIMオンリーは時期尚早か
タブレット端末を「12.9型iPad Pro(第4世代)」から「13型iPad Pro(M4)」に変更した。有機ELディスプレイにより薄型かつ軽量になったが、SIMカードの抜き差しはできず、eSIM(内蔵)にしか対応しない。新型iPad Proで実感したeSIMのメリットと課題を整理したい。eSIMの普及にまだ時間がかかると感じる理由
eSIM採用端末iPhone XSやGoogle Pixel 4が登場した2018年に比べて対応端末は増えた。それでも普及に至るまでの道のりは長い。そんなeSIMのデメリットは何か、それを探りながら未だに普及しない理由を読み解く。iPhoneにeSIMを転送する方法 キャリアによってルールが異なるので要注意、手数料が発生する場合も
iPhone 17シリーズは日本ではeSIM専用となり、物理SIMが使えなくなりました。キャリアの場合、クイック転送を使えば、iPhoneからiPhoneへは無料でeSIMを転送できます。物理SIMをeSIMとして転送することもできます。ドコモ「iPhone 17」などの販売再開 設備故障で通話できず“高級iPod化” SNSには「情報周知が遅い」「地獄」との声
NTTドコモのeSIM開通手続きができず、新しいiPhoneで通信できなくなるトラブルが起きた。9月20日、ドコモは販売を一時停止したeSIM対応端末の「iPhone 17」シリーズと「iPhone Air」の販売を再開すると告知した。時系列に沿って問題を整理していく。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.