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楽天モバイルら、“オレオレ詐欺”被害後の補償を手厚く その背景は?

楽天モバイルと楽天損害保険は65歳以上のプログラム加入者へ、追加費用なしで「オレオレ詐欺対策保険」の提供を開始。詐欺被害の急増を受け、通信会社として初めて被害後の費用を補償する仕組みを取り入れた。従来の利便性向上施策とは異なり、「防御」の観点からシニアを守る独自のアプローチとなっている。

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 楽天モバイルと楽天損害保険(以下、楽天損保)が、65歳以上を対象とする「最強シニアプログラム」のオプションパックに加入している利用者へ、追加費用なしで「オレオレ詐欺対策保険」を提供し始めた。スマホ利用が社会インフラとして定着する一方、電話やSMSを悪用した詐欺被害が急増している現状を踏まえ、通信会社として初めて被害後の費用を補償する仕組みを取り入れた。これまで利便性の向上が中心だったシニア向け施策とは異なる「防御」の観点からの取り組みとなる。


楽天モバイルと楽天損害保険(以下、楽天損保)が「オレオレ詐欺対策保険」を提供し始めた

対象は、65歳以上を対象とする「最強シニアプログラム」のオプションパックに加入している利用者となる。画像はプレゼンテーション時のスライドと、楽天モバイル 代表取締役 共同CEO 鈴木和洋氏

オレオレ詐欺対策保険の概要 詐欺に遭ったことはどう証明?

 本保険は、示談金名目で金銭を振り込ませる手口の「振り込め詐欺」に遭った場合に、裁判費用や弁護士費用などの損害賠償請求等費用を最大50万円、自宅の鍵交換や固定電話機交換、センサーライト設置など再発防止のための費用を最大10万円の計60万円まで補償する。保険料はすべて楽天モバイルが負担し、加入者はこれまでと同じ料金で利用できる。現行のオプションパックには迷惑電話やSMSを識別する機能も含まれており、今回の保険はその「5つ目の機能」として自動的に付帯される。

 加入対象は「15分かけ放題&安心パック」利用者で、これまでに契約している利用者へも自動適用される。対象者がオプションを解約するまで継続して補償される仕組みだ。

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本保険は、示談金名目の「振り込め詐欺」被害に対し、最大計60万円を補償するものである。具体的には、裁判や弁護士などの損害賠償請求費用に最大50万円、鍵や固定電話機の交換、センサーライト設置といった再発防止費用に最大10万円が支払われる

 詐欺に遭った場合の手続きについて、楽天損保 商品収益管理本部 商品開発部 部長 池内智氏は「まず他人の口座に振り込んでしまった事実をもとに警察と金融機関に届け出を行うことが前提になる」と説明した。その上で、楽天モバイル公式サイトに設けられた専用フォームに必要事項を記入し、被害状況を通知する流れになる。警察への届け出が前提となる理由については、被害の事実確認と金融機関を巻き込んだ調査の必要性があるためだという。

新しい取り組みを実施する背景

被害が増え、金額も大きくなっている

 楽天モバイルと楽天損保が今回の領域に踏み込んだ背景には、シニアのスマホ利用率上昇と特殊詐欺被害の急増がある。楽天モバイル 代表取締役 共同CEO 鈴木和洋氏は、65歳以上のスマホ利用率が2025年に96.5%へ達している現状を示し、「スマホはシニアにとっても社会インフラになった」と話す。一方で、2024年1~9月の詐欺被害総額は758億円に達し、前年同時期の3.3倍と急増している。家族を名乗る手口に加え、警察官や弁護士を装うケースも増え、電話やSMSが入口となる被害が後を絶たない。


シニアのスマホ利用率は上昇傾向にある。鈴木氏も「スマホはシニアにとっても社会インフラになった」というほどだ

2024年1~9月の詐欺被害総額は758億円に達し、前年同時期の3.3倍と急増している

 今回の施策を保険という形で提供した理由について、楽天モバイル 執行役員兼マーケティング企画本部 本部長 中村礼博氏は「被害が増え、金額も大きくなっていることが第一義」と述べた。また、同社の契約者数が1000万回線に迫る中で、より幅広い層にサービスが広がるフェーズに入り、「残念ながら被害に遭う方も出てくる可能性がある」(中村氏)とし、予防と事後支援の両面で備える必要性を語った。これまで通信会社が取り組んできた「迷惑電話対策」だけでは不十分で、万一の事後費用まで踏み込むのは社会状況の変化を踏まえたものだという。

 このタイミングでの提供に至った理由について、中村氏は「前から検討していた」ことに触れたうえで、「今回サービスを出すにあたってはシステムの開発、および省庁における認可を取らなければいけないという手続きなどもあったため、それらすべての手続きが整ったのが今回のタイミングだ」と説明した。

「安心して選んでもらえる通信会社」であることを強めたい

 楽天モバイルは、シニア層へのリーチが課題だったとして「最強シニアプログラム」を9月から展開し、65歳以上の申し込み数が発表前の1年間と比べ1.2倍に増えたと説明している。契約増加の要因としては、料金の分かりやすさや海外ローミング2GB無料、Rakuten Linkによる通話料無料、店舗での丁寧な対応が評価されているという。

 中村氏は、シニア層を特別扱いするのではなく、家族向けや若年層向けと同じく「全方位的に伸ばす中での重要な層」と位置付ける考えを示したうえで、ITリテラシーに差がある中で、詐欺の影響をより受けやすい利用者が存在することも事実とし、今回の保険を加えることで「安心して選んでもらえる通信会社」であることを強めたいと語った。

 オレオレ詐欺対策保険は、通信会社として国内初の取り組みとなる。通信サービスをベースとした単なる付加価値の提供ではなく、社会問題化する詐欺に対して通信会社が果たす役割を広げるものといえそうだ。契約者拡大と利用者保護を両立させるこの試みが、今後シニア層のサービス選びにどのような影響を与えるのだろうか。


番号識別・迷惑電話対策アプリ「Whoscall」を利用して、知らない電話番号でも発信元をしっかり識別し、詐欺被害を未然に防ぐことができる迷惑電話・SMS対策サービスも提供している楽天モバイル。オレオレ詐欺対策保険を追加し「安心感」を増大させたい狙いだ

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