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「dカード GOLD」に見る“Amazonプライム的”な顧客獲得手法 ドコモ経済圏の粘着性を読み解く(1/2 ページ)

MMDLabo(MMD研究所)は2月17日に「ポイント経済圏の最新調査データ勉強会」を開催。MMD研究所の吉本浩司氏は、ポイント経済圏の競争軸が「入口」の広さから、ユーザーをいかに離脱させないかという「定着」の段階へ移行したと語る。ドコモ経済圏はdカードの上位化を戦略の核に据えており、通信と連携した高い還元率や手厚い端末保証により、実質的な会員制度として機能している。

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 MMDLabo(MMD研究所)は2月17日に「ポイント経済圏の最新調査データ勉強会」を開催した。今回はその中でも、Amazonとの提携や金融機関の買収により経済圏に本腰を入れるNTTドコモに着目。MMD研究所代表の吉本浩司氏が解説した。

各社が「自社の経済圏に来た方を定着させる競争」に動いている

 吉本氏はまず、現在のポイント経済圏が「通信キャリア」「小売り・リテール」「金融・決済」「交通・マイル」という4つの型に分類できると前置きをした。以前はどれだけ多くのユーザーを呼び込むかという入り口の広さが競われていたが、現在は「自社の経済圏に来た方を定着させる競争」に動いていると分析する。

dカード ドコモ 経済圏
ポイント経済圏は、通信・小売・金融・交通の4軸を起点に分類される。現在は顧客獲得のフェーズから、付帯サービスへの回遊を促し、いかにユーザーを「定着(ロックイン)」させるかの競争へと移行している

 吉本氏は、この定着の度合いを「粘着性」という言葉で表現した。特に「小売り」や「金融」を軸とする経済圏は、ポイント還元を原資にして能動的な買い物を促す「アクティブ活動」が特徴であると指摘する。対してドコモのような通信キャリアは、普段の生活の中で「いつの間にかたまる」状態を作るのが強みだという。

 各経済圏の戦略について吉本氏は、「生活者がサービスを選択する際の負荷をいかに小さくするか」が鍵になると強調した。楽天は支出時の損失感を減らす「お得」を、PayPayは支払いの手間を省く「スピード」を重視する。これに対しドコモは、選択時の不安を解消する「安心」を軸に据えていると吉本氏は語る。

 そのドコモについて、吉本氏が着目したのは、ドコモのクレジットカード「dカード」戦略に見える“異質さ”についてだ。通常、カード業界では一般カードの保有者が圧倒的に多い。しかし、dカードはメイン利用者のうち、dカード GOLDやdカード PLATINUMといった上位カードの占める割合が57.9%に達している。これは楽天カードの7.5%と比較しても、驚異的なシェアといえる。

dカード ドコモ 経済圏
ドコモ経済圏は通信を最大の起点としつつ、ポイントやカードも有力な入口となっている
dカード ドコモ 経済圏
dカードの戦略は、上位カード保有率の高さに特異性があるという。メイン利用者のうちdカード GOLD・dカード PLATINUM層が57.9%を占め、楽天カードの7.5%を大きく上回る。一般カードが主流の業界において驚異的な高水準といえる

なぜ高い年会費を払ってまで上位カードを選ぶのか

 dカードの中でも吉本氏が特に注目したのが「dカード GOLD」だ。dカード PLATINUMと比べても圧倒的な会員数だという。なぜ年会費が1万1000円かかるdカード GOLDは会員数が多いのだろうか? 吉本氏は「もはやクレジットカード戦略というより、Amazonのプライム会員に近い会員戦略だ」と例えた。通信料金の10%が還元される仕組みにより、ドコモユーザーは年会費を実質的に相殺できるため、「入らないと損」という心理が働くのだという。

 Amazonプライムは、年間5900円または月間600円の会費で配送特典やPrime Video、Amazon Music Prime、Amazon Photos、Prime Readingなどのデジタル特典を受けられる。これらのサービスを活用するなら、会費を払っても十分お得になるため、dカード GOLDの戦略に通じるものがある。

dカード ドコモ 経済圏
dカード GOLDは、通信料の10%還元により年会費を実質相殺できる仕組みが強み。これはAmazonプライムに近い会員戦略といえ、ドコモユーザーに「入らないと損」と思わせることで圧倒的な会員数を獲得している

 さらに吉本氏は、3年間で最大12万円に及ぶ「端末保証」の存在が強力な武器になっていると語った。iPhoneなどの高額な端末が増える中で、この手厚い補償はユーザーに大きな安心感を与える。吉本氏は「代理店や店頭でも案内しやすく、ユーザーが損を感じにくい設計になっていることが強みだ」と、その普及理由を分析した。

 加えて、ドコモの強さは「ドコモショップというリアルな店舗にある」と吉本氏。通信サービス単体では他社への流出を防ぐのが難しいが、店頭で「カードの話」をすることでユーザーの関心を引き留められるという。吉本氏は「ショップでの案内がとんでもなく強く、それが上位カードの爆発的な普及に寄与している」との見解を示した。

dカード ドコモ 経済圏
リアル店舗での接客力も関係しているそうだ。通信単体での流出阻止が困難な中、ショップでの「カード案内」がユーザーの関心をつなぎ留め、dカード GOLD等の上位カードの爆発的な普及に大きく寄与しているようだ(出典:店頭買い取りの記事)

 MMD研究所が2025年12月11日〜12月15日に2万5000人を対象とした調査を実施した結果によると、カードのランクが上がるほどユーザーの「経済圏を意識する割合」も高まっている。吉本氏は「上位カードを持つことでポイントがザクザクたまる状態になり、メインで使わざるを得なくなる」と語る。特にdカード PLATINUM保有者の9割以上がドコモブランドの料金プランの利用を継続しており、高いリテンション効果が出ているという。

dカード ドコモ 経済圏
MMD研究所の調査結果によると、カードのランクが上がるほどユーザーの「経済圏を意識する割合」も高まっていることが分かる
dカード ドコモ 経済圏
上位カードによる高還元がメイン利用を促し、強力な顧客維持を実現。dカード PLATINUM保有者の9割超がドコモを継続する高いリテンション効果を生んでいる

 吉本氏は、ドコモがマネックス証券や住信SBIネット銀行と手を組んだことについても触れた。これにより、弱点であったECと金融のラインアップが補強されたという。「銀行口座をハブにして、決済や回線、融資、保険をシームレスにつなげる。これによりライフタイムバリューを高める戦略だ」と、その意図を説明した。

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