“NHK受信料”の督促に温度差 警察には「丁寧な周知」も、国民には「法的措置」(2/3 ページ)
NHKは公平負担を掲げ未収対策を強化、未払い世帯への法的措置など国民への厳しい徴収姿勢を鮮明にする。一方、愛知県警など複数の警察組織で捜査用車両のカーナビ受信料が長期間未払いだった驚愕の実態が発覚した。質問状への回答から、公的機関には甘く国民には冷徹というNHKのいびつな二重基準が見えてきた。
督促基準は「ブラックボックス」のまま
国民として最も気になるのは、「どこまでいったらアウトなのか」という具体的なラインだろう。しかし、今回の取材でNHKはその基準を一切明かさなかった。
「督促状が何回届いたら法的措置に移行するのか」「訪問は何回行われるのか」。これらについて、NHKは「回数などの基準は設けておらず、個別の事情を総合的に勘案」すると述べるにとどまった。
これは非常に巧妙、かつ恐怖心を煽る回答だ。明確な基準(例えば『督促状3回無視で法的措置』など)があれば、視聴者は予測ができる。しかし、「基準はない」と言われれば、NHKのさじ加減1つで、ある日突然、法的措置の通知が届く可能性も否定できないことになる。
あえて基準をブラックボックス化することで、不透明な恐怖感による支払いを促している──そう勘繰られても仕方がない運用実態だ。
NHKは11月18日、受信料の未収対策を大幅に強化する方針を示した。本部内に設置した「受信料特別対策センター」がその中心となり、契約を結んでいるにもかかわらず長期間支払いが確認できない世帯や事業所に対して、支払督促による民事手続きを拡大する。画像は同日発出のニュースリリース(出典:NHKニュースリリース「支払督促による民事手続きを強化します」)
カーナビ契約については「自己申告待ち」か
警察車両の未払い問題で注目されがちなのが、「カーナビ」の受信契約だ。
一口に車のカーナビといっても、ワンセグ・フルセグを視聴するのに必要なチューナー付きのカーナビが搭載されている車も存在する。しかし、外から見ただけでは、その車にチューナー付きのナビがついているのか、単なるモニターなのか、あるいはナビ自体がないのかを判別することは不可能に近い。
本誌は、外観から判断しにくい個人車両のカーナビについて、どのように設置を確認し契約を迫るのかを尋ねた。
「NHKの放送を受信できるカーナビを所有されている場合、受信契約の対象となりますが、世帯においては、住居に設置されたテレビなどの受信機で既に受信契約を締結済みであれば、新たに契約する必要はありません」
「受信契約は、NHKの放送を受信されている方に届け出ていただくことが放送法等で規定されています」
ここで、誤解がないように契約ルールの違いについて補足しておきたい。NHKの回答にもある通り、一般家庭における「自家用車」の場合、住居ですでに受信契約を結んでいれば、例え車にテレビ番組視聴が可能なチューナー付きのカーナビが搭載されていても、追加契約の必要はない。これは世帯同一性が認められるためだ。
しかし、これが企業や官公庁が保有する「事業用車」となると話は全く異なる。事業所単位の場合、テレビ機能付きのカーナビを搭載していれば、原則として「車両1台ごと」にNHKとの個別契約が必要になる。今回の愛知県警などのケースがまさにこれにあたる。何十台、何百台とある捜査車両の1台1台に対して契約義務が発生するため、その未払い額も数百万円規模という巨額になったのだ。
ここで気になるのは、その運用が可能かという点だ。自家用であれ事業用であれ、カーナビ搭載車を外から見ただけでは、カーナビにチューナーが付いているのか、あるいは走行中にテレビが見られない設定になっているのかを判別することは不可能に近い。
NHKの「届け出ていただくことが放送法等で規定されています」という回答は、裏を返せば、NHK側には「外観からカーナビの有無を特定する有効な手段がない」ことを事実上認めているに等しい。
警察車両ですら「届け出漏れ」していたものを、一般の事業者が正確に把握し、自発的に全台数分を届け出るとは考えにくい。
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