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コラム

“NHK受信料”の督促に温度差 警察には「丁寧な周知」も、国民には「法的措置」(1/3 ページ)

NHKは公平負担を掲げ未収対策を強化、未払い世帯への法的措置など国民への厳しい徴収姿勢を鮮明にする。一方、愛知県警など複数の警察組織で捜査用車両のカーナビ受信料が長期間未払いだった驚愕の実態が発覚した。質問状への回答から、公的機関には甘く国民には冷徹というNHKのいびつな二重基準が見えてきた。

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NHK 受信料 公平性 回収 督促
日本放送協会(NHK)は、国民から得た受信料によって運営が成り立っている。公平に負担されたこの財源こそが、公共放送としての活動を支える基盤となっている

 「公平負担」という大義名分のもと、日本放送協会(NHK)が受信料の未収対策をかつてないレベルで強化しようとしている。

 NHKは昨今、契約を結んでいるにもかかわらず長期間支払いが確認できない世帯や事業所に対し、支払督促による民事手続きを拡大する方針を打ち出した。その本気度を示すかのように、本部内には「受信料特別対策センター」なる組織まで設置されている。

 物価高にあえぐ国民に対しては、法的措置も辞さないという厳しい姿勢を見せるNHK。しかしその一方で、われわれの生活を守るはずの「警察組織」において、驚くべきルーズな実態が露呈していることをご存じだろうか。

 2025年3月、愛知県警が捜査用車両に設置したカーナビ38台分の受信料、約644万円を支払っていなかった事案が判明した。さらに島根県警や愛媛県警といった地方警察でも同様の未払いが次々と発覚している。

 取り締まる側の警察が受信料を払っていないにもかかわらず、国民には「対策センター」まで設けて追い込みをかける──。この状況に、世論が納得するはずもない。

 果たしてNHKは、この矛盾をどう説明するのか。そして、ブラックボックスに包まれた「督促の基準」はどこにあるのか。本誌はNHK広報局に対し、直球の質問状を送付した。返ってきた回答から見えてきたのは、公的機関に対する「緩さ」と、国民に対する「冷徹さ」という、いびつな二重基準だった。

NHK 受信料 公平性 回収 督促
公共放送NHKの役割は、確かな情報や豊かな文化を分け隔てなく伝えることにあるという。運営を支えるのが受信料とのことだ。特定の勢力や視聴率に左右されず、公正で質の高い報道や不可欠な教育・福祉番組を提供できるのは、受信料が財政的自主性を保障しているからだそうだ(出典:NHK「受信料制度とは」)

警察には「お願い」、国民には「法的措置」

 今回の回答で最も気になったのは、未払いに対するアプローチの決定的な「温度差」だ。

 本誌はまず、一般家庭に対する法的措置への移行プロセスについて尋ねた。NHK側は民事手続きについて、「受信料制度の意義や公共放送の役割を丁寧に説明したうえで、それでもなお、お支払いいただけない場合の最後の手段」とした上で、こう回答している。

 「文書や電話、訪問によるお支払いのお願いを繰り返し実施した上で、支払督促の申立てを行いますが、回数などの基準は設けておらず、個別の事情を総合的に勘案して、実施の可否を判断しています」

 つまり、国民に対しては「基準は教えないが、われわれの判断でいつでも裁判所を通じた督促(支払督促)を申し立てる」という、非常に強い圧力を伴う回答である。

 では、身内ともいえる「公的機関」の不祥事についてはどうか。愛知県警などで発覚したカーナビ受信料の未払いについて、なぜこうした事態が常態化していたのか、そして官公庁への督促も同様に強化するのかを問うた。返ってきたのは、あまりにも拍子抜けする回答だった。

 「自治体から受信契約の届け出漏れが相次いでいることを踏まえ、お手続きについて正確にご認識いただけるよう、より丁寧に周知していく必要があると考えています」

 国民に対しては「民事手続き」「支払督促」といった法的用語をちらつかせる一方で、警察や自治体の組織的な未払いに対しては「丁寧に周知」という、極めてマイルドな表現に終始したのだ。

 なぜ、警察の未払いは「認識不足」として優しく諭され、国民の未払いは「対策センター」による標的とされなければならないのか。NHKの回答を見る限りでは、「取りやすいところから取り、弱いところには強く出る」という徴収姿勢が透けて見えるといわざるを得ない。

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