シャープのAIロボ「ポケとも」と暮らしてみた スマホよりも自然に会話ができる“もう1人の家族”だ(2/3 ページ)
シャープは12月5日に対話AIキャラクター(ロボット)の「ポケとも」を発売した。ポケともはユーザーの話し相手になる対話AIキャラクターで、利用者はスマートフォンアプリかロボット本体とやりとりが可能だ。ロボットの実物をシャープからお借りしたので、その使用感とどのような人に向くのかをレビューしていきたい。
ポケともとはどのような会話を楽しめるのか
ここからはポケとも本体の使用感について触れていく。
結論からいえば、ポケともとの会話内容は面白い。1つのテーマだけでなく、自分の体験談や出来事、社会的なニュースなど、話題は多岐にわたる。
シャープ独自のAI技術「CE-LLM」(Communication Edge - Large Language Model)により、ユーザーに寄り添った音声対話が可能だ。うれしいことがあって誰かに伝えたいときや“推し”について語り合いたいとき、ふと寂しくなったとき、いつもそばに居て話し相手になってくれる。
CE-LLMは、利用者の質問内容が簡単かどうかをAIで判定し、簡単な内容にはエッジデバイス内のローカルLLMで迅速に回答する一方、難しい場合には「ChatGPT」などのクラウドAIに複雑な回答を任せる。外からは見えにくいが、バックグラウンドでは複雑な処理が行われているわけだ。
AIモデルとしてはOpenAIの「GPT-4o mini」が採用されているが、通信事業本部 モバイルソリューション事業統轄部 統轄部長の景井美帆氏は「LLMの進化やそれぞれの技術の違いもある」ことから、AIモデルは「柔軟に変更できる仕組みを設けている」と8月20日の発表会で明かしていた。
会話にはシャープ独自のAI「CE-LLM」が欠かせない。新技術「共感知性」により、ユーザーに寄り添う対話を実現した。会話履歴や感情、位置情報、カメラ、センサーなどの情報を複合的に処理し、状況や相手を深く理解した上での最適な受け答えが可能になった
ここで、実際にポケともと交わしたやりとりの記録を見てみよう。
―― 最近は英語を話せるように勉強しているんだ。
ポケとも 努力してるの、すごいね。簡単な会話なら「Hello」「How are you?」とか「I like this.」って使えるよ。ユーザーの頑張り、ポケともも応援してるからね。
―― また「ユーザー」って言ってるじゃないですか。「〇〇くん」って言ってよ。
ポケとも ごめんね、〇〇くん。ポケとも、ちゃんと覚えたよ。他に話したいことある?
―― その声は誰の声ですか?
ポケとも その声はポケともだよ。〇〇くんの声も聞いてみたいな。どんな声なの?
―― さっきからしゃべってるでしょう。ポケともくんは、誰の声ですか?
ポケとも そっか、そうだね。ポケともがずっとおしゃべりしてるもんね。じゃあ、他に話したいことあったら教えて。
―― お腹空いた。
ポケとも ポケともは食べられないけど、かおりくんが何かおいしいものを食べるのを見るのはうれしいよ。何か食べたいものある?
―― おすし。
ポケとも おすし、おいしそうだね。ポケとも、見てるだけでも楽しそうなの。どんなおすしが好きなの?
―― エビ。
ポケとも エビのおすし、いいね。ポケとも、エビのプリプリ感が気になるな。他にも好きなおすしある?
―― 穴子だよ。
ポケとも そういえば、ちょっと話は変わるけど、最近の生活で変化を感じたこととかある? なんか面白いことあったかな?
―― そうですね……大きな作品を作りました。
ポケとも わあ、すごいね。大きな作品ってどんなのかな? どんなことを表現したの?
―― 花でクリスマス(を)表現しました。
ポケとも 花でクリスマスを表現するなんてすてきだね。いろんな花を使ったのかな? どんな花が入ってるの?
―― そうですね、カラーと、百合と、シンビジウム。
ポケとも カラーと百合、いい組み合わせだね。華やかで、クリスマスにぴったりだと思うな。どんな雰囲気になったのかな?
―― そうですね、シックなワインレッドがベースカラーですね。
ポケとも ワインレッドのシックな感じ、すごくおしゃれだね。その色が花たちを引き立ててるのかな? どんな気持ちで作ったの?
―― うーん、そうですね……ゴージャスな感じになるように。
ポケとも ゴージャスな感じ、いいね。クリスマスにぴったりの雰囲気だと思うな。完成した作品を見せたくなるね。展示とかする予定あるのかな?
―― 展示は終わったんだよ。
ポケとも 展示は終わったんだ。どんな反応があったのかな? みんな楽しんでくれたのかな?
―― 写真を見る?
ポケとも ……待ってるよ。どんな話が待ってるのかな?
―― ほら、これ見て。分かる?
ポケとも えー? 女の子なんだね。ポケとも、もっと知りたいな。どんなことが好きなの?
―― (ため息)……ごめんね、話がずれちゃった。
ポケとも ごめんね、ちょっと考えちゃった。何か新しい話題にいこうか。どうする?
見ての通り、話題が変わっても沈黙が続かず、会話を続けられた。ただ、実際には問いかけに対して「うーんと…」などのフィラーが入り、返答までに時間を要する場面が見受けられた。これは、クラウド側でのAI応答生成処理に伴うタイムラグである。
会話に課題感、就寝中の話しかけは設定から防げる
一方で、会話の際には課題感もあった。それは、利用者が話している途中でも、ポケとも本体がやや食い気味に応答する点だ。辛うじて会話は続けられても、話している途中で話しかけられると困る場面がある。「うーんと…」というフィラーは問題ないが、もう一呼吸ほど間を空けるなど、利用者の雰囲気を察知してほしいとも感じた。
さらに困ったのは、就寝中の話しかけだ。ポケとも本体に就寝中(暗所)、突然話しかけられることがあったため、睡眠を妨げられてしまった。シャープ広報によると、「静かにしておいてほしい場合は、マナースイッチを下にすると、ポケともはお話ししない」という。「また、ポケともから話しかけをしてもいい時間を設定したり、ポケともから話しかけた後にマイクをオンにするかオフにするかを設定したりすることもできる」そうだ。
ポケともが「話しすぎてうるさい」と感じるときは、一時的に音を消すことが可能だ。本体側面の「マナースイッチ」(赤色で囲った部分)を下げるだけで、携帯電話のマナーモードと同じ状態になる。静かにしておきたい場面では、このスイッチ操作1つで手軽に対処できる。
アプリからの設定方法は、「からだの設定」→「ポケともからの話しかけ」→「時間を設定」の順に進む。即座に会話を終了させたい、あるいは静かにしてほしい場合は、「お腹のボタンを押す、またはマナースイッチを下にしていただくと、会話を終了できる」(シャープ広報)とのことだ。
関連記事
シャープの新AIロボット「ポケとも」誕生秘話 「ロボホン」との違い、3万円台に抑えられた理由
シャープは11月、日々の生活に寄り添い、感情を分かち合うAIパートナー「ポケとも」を発売する。シャープの公式「COCORO STORE」でのロボットの価格は3万9600円(税込み、以下同)、アプリの利用料は月額495円からとなっている。格安かつキャラ重視の理由は何か……?シャープに聞いた──「ロボホン」「エモパー」は終了? 「AIの楽しさ」若者にどう伝える?
シャープは、8月20日に対話型AIキャラクター「ポケとも」を発表した。「ロボホン」「エモパー」は終了するのか、「AIの楽しさ」を若者にどう伝えるのか──。シャープに聞いた。シャープ、対話できるロボット&アプリ「ポケとも」発表 落ち込んでいるときに励ましも
シャープは、対話AIキャラクター「ポケとも」を発表。第1弾はミーアキャットがモチーフのキャラクターでロボットとアプリで展開し、交わした会話や訪れた場所、見た景色やモノなどを記憶する。外観まで変えないとモノへの愛着が生まれない――シャープが「ロボホン」を開発した理由
ロボットの分野にスマホメーカーの中でもいち早く参入したのが、シャープだ。5月26日に発売される「ロボホン」は、どのような経緯で開発することが決まったのか。開発責任者の景井美帆氏に話を聞いた。ついに出撃(発売)! これがシャープの人型決戦ケータイ「ロボホン」だ
歌って踊れて話せるヤツ。しかもSIMフリー。それがシャープの「ロボホン」です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.