ドコモ前田社長に聞く、新AIサービス「SyncMe」の狙い 「dポイントのデータを価値に変えて還元する」
NTTドコモはMWC 2026にて、dアカウントのデータを活用した新AIサービス「SyncMe」を発表した。前田社長は、生成AIにより個々のユーザーに最適化された体験を提供することがドコモの強みになると語る。さらに6G時代を見据え、通信基盤と金融やエンタメを融合させたエコシステムの重要性を強調した。
2026年はNTTグループの一員としてMWC Barcelona 2026に出展していたNTTドコモ。これを機に、新しいAIエージェントサービス「SyncMe(シンクミー)」を発表し、ブースでデモンストレーションが披露された。また、6Gに向けての取り組みについても展示されていた。会期中にドコモの前田義晃社長に単独でインタビューすることができたので、新サービスの狙いなど、ドコモの “これから” について聞いてみた。
SyncMeではdアカウントにひも付くデータを利用する
SyncMeは、dアカウントを登録して利用できる仕組みで、筆者は実際に自分のアカウントを登録して、デモを体験させてもらった。dアカウントにひもづく情報と、好みの写真を選ぶことによって、AIがユーザーのパーソナリティーを認識し、最適化された回答が得られる仕組みだ。
前田氏 実際に試されてみて、いかがですか?
―― 自分の住んでいるところや、どういう人なのかも分かっているようで驚きました。推定年収など、実際とは違う部分もありましたが……。それは、やはり決済情報に基づくのでしょうか?
前田氏 決済まわりのデータは、その人の嗜好(しこう)性などが出やすいようですね。d払いの少額決済でも傾向は出ますが、よくdカードで買い物をされる方の方が分かりやすく出ます。
―― ドコモのサービスをよく使っている人の方がパーソナライズの精度が上がるわけですね。
前田氏 そうですね。それがいい方に作用するといいなぁと思っています。
―― 性格を判定するために、写真を選ぶのも面白い。「MBTI」みたいで、若い人が好きそうですよね。
前田氏 デモでは、あらかじめ用意した写真から選んでいただきましたが、実際のサービスでは、ユーザーご自身の写真からお選びいただきます。それを解析することによって、よりユーザーに最適化されます。
MWCでは英語で「SyncMe」のデモが披露されたが、実際のサービスは日本語のみで開始される予定だ。「ワラピィ」と「ヨミドーリ」のキャラクターデザインは、ピカチュウをデザインしたことでも知られる、にしだあつこ氏が担当した。
iコンシェルやmy daizとの違い データで得た価値をユーザーに還元する
―― ドコモでは、これまでに「iコンシェル」「my daiz(マイデイズ)」といったエージェントサービスを提供してきました。それらとSyncMeはどこが違うのでしょうか?
前田氏 iコンシェルは、ドコモを契約してくれるお客さまに向けて、われわれが知りうるデータに基づいて、先回りしてさまざまなサポートができないだろうかと考えて提供したサービスです。その後、スマートフォンになって、位置情報を利用し、お客さまのお住まいのエリアやライフスタイルに合わせて役立つ情報を提供するように進化させたのがmy daizです。
そうした進化の中で、2015年からdポイントが始まり、dポイントにひも付くサービスも増えていきました。それに従い、お客さまを理解するためのデータも蓄積されてきたわけです。もちろん、そのデータは、今までもサービスの向上のために活用してきましたが、それ自体を価値としてユーザーに還元するのは難しかった。それが、生成AIによって実現できたのがSyncMeです。
―― 誰が聞いても同じ回答になるわけではなく、その人だけに向けて回答されるようになったわけですね。
前田氏 既に生成AIを利用している人は多いと思いますが、チャットのやりとりの中で、自分がどういう人なのかを理解してもらうのは難しい。dアカウントにひもづくデータを利用できることは、お客さまにとって価値となり、ドコモの強みとなると考えました。
ターゲットは若年層が中心 料金は基本無料だが、有料化も検討
―― いつ頃から開発していたのですか?
前田氏 1年ちょっと前からですね。私が社長に就任して、しばらくたってから。「そろそろ、これ、いけるんじゃないかなぁ」って。
―― ターゲットは若い人なのでしょうか。
前田氏 もちろん全年代に使っていただきたいと思っています。ですが、サービスを継続的に続けていくには、次の時代を担う人たちに「これ、いいな」と思って使っていただかないと広がっていきません。そういう意味で、「Z世代」「α世代」と呼ばれる若い人たちに使っていただきたいです。実際、SyncMeのチームには若いメンバーが多く、自分たちが使ってみたくなるAIサービスにするべく開発を進めています。
―― まず、モニター向けに先行公開し、夏頃に本サービスを開始するとのことですが、利用料金はどうなりますか?
前田氏 正式なサービスでどうするかはまだ決まっていませんが、エントリーはフリー(無料)で考えています。ですが、仕組み上はユーザーが見えないところで、さまざまなシステムが稼働し、それにはお金がかかるわけですから、一定以上使っていただくには、料金をいただく形にしないと続けられないとは思っています。
―― 若い世代は、課金を嫌う人が多いかもしれませんが……。
前田氏 SyncMeのプラットフォームはオープンにして、パートナー企業にお使いいただくことも考えています。例えば、好きなアーティストのライブチケットの発売日を教えてもらって、その購入をお願いすることもできたらいいなぁと。課金以外のマネタイズもあると考えています。銀行(d NEOBANK)のUXもAIを活用して、より便利なものにしたいと思っていますが、SyncMeとの連携もできると思います。
―― ところで、前田社長は普段、生成AIをどのように使っていますか?
前田氏 さまざまな用途で使っていますが、やはり、ビジネスの相談が多いかもしれません。例えば、会おうと思っている人がいる場合に、その方がどういう考えを持っておられて、どういう話からすればいいかを聞いてみたり……。最近では、MWCに来る前に、肩を痛めてしまいましてね。生成AIに詳しい症状を伝えたら、医者より詳しく調べてくれました(笑)。ですが、やはり、自分が入力した情報以外のことは分からないわけですからね。個人に特化した回答は得られない。そこにSyncMeの優位性があるわけですよ(笑)
ドコモは6Gで世界をリードできるのか?
―― 2026年のMWCでは「6G」というキーワードも聞かれるようになりました。ドコモも「6G」を掲げた展示をしていましたが、現時点で、どのような優位性を持っていますか?
前田氏 6Gは2030年頃から始まる予定ですが、標準化もまだこれから。優位性を語れる状況ではありません。われわれの活動としては、各国のオペレーターや通信機器ベンダーと一緒に標準化をリードしていくこと。日本の企業の中では突出して頑張っていると思います。しかし、そうした取り組みの成果がマーケットの中での優位性にどうつながっていくかは全く別の話で、現時点ではそこまで見えていません。
通信の世代が変わるとパラダイムも変わりますが、今起こっている変化はそれ以上の速さです。AIの著しい進化によって、パラダイムが変わり、6Gに求められるインフラも変わってきているのが現状。急激な変化なので、もっとスピーディーに動いていく必要があるのかもしれません。
ただし、投資に対するリターンも考えなくてはならない。そこで、通信事業者としては、通信事業だけでなく、それをベースにしたさまざまなポートフォリオを持っていることが重要だと考えています。
―― 通信だけでなく、金融も、エンターテインメントも連携するエコシステムを構築する必要があるわけですね。ありがとうございました。
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