スマホ“最大規模の値上げ”はいつまで続く? 「1円スマホ」が存続危機、一方で影響を免れる中国メーカーも(3/3 ページ)
AI産業の需要爆発に伴うメモリ価格の高騰と円安の進行がスマートフォンの販売価格を押し上げている。中韓メーカーを中心に発売後の異例な値上げが相次ぎ日本国内でもハイエンド機の高価格化が顕著だ。次世代チップの製造コスト上昇も控える中、大容量モデルを求めるなら、今早めに購入することが推奨される。
「1円スマホ」の存続危機? 一方で影響を免れるメーカーも
実のところ、メモリ原価高騰の影響をもろに受けるのはハイエンドスマホよりも、ミッドレンジの廉価機種だ。「低コスト」を売りにする機種でもメモリとストレージは必須であり、ここでの原価高騰は少ない利益率を圧迫することになる。
既に登場した機種を見ても、機能を削って価格を維持するか、機能を維持したまま値上げをするかの瀬戸際に立たされている状況だ。
また、値上げに踏み切るとしても、4~5万円のスマホで「5000円の値上げ」はかなり大きな上げ幅となる。Nothingのように通信キャリアなどと提携して販路を強化することで、コスト圧縮を試みているところもある。
このスマホ高騰の波が直撃したのはいわゆる「1円スマホ」だ。総務省の値引き規制をふまえ、回線契約時に1円(本体価格2万2000円)で提供できる価格設定のスマホだが、メモリ高騰と為替変動を踏まえると原価高騰は避けられない。
例えば、ZTEがY!mobile向けに展開する「nubia S 5G」は2万1996円と2万2000円以内に収めていたが、後継機のnubia S2は2万6640円と値上がりしたことで1円スマホの対象から外れている。
一方、楽天モバイル専売の「nubia S2R」は2万2001円に収めたものの、カメラを単眼にしたりストレージ容量を64GBに落としたりして、何とか1円スマホの枠組みに収めている状況だ。
このような状況が続けば、薄利多売の1円スマホがそもそも成り立たなくなる可能性が高く、お得に使えるスマートフォンの継続が困難になるのではないかと考える。
こうした状況下でも、端末の値上げを見送っている例外的なメーカーが中国にある。Huaweiだ。その理由はシンプルで、米国の輸出規制によって構築せざるを得なかった独自サプライチェーンが、図らずもグローバルのメモリ争奪戦から同社を切り離しているからと考えられる。
Huaweiのスマートフォンに搭載される半導体は、中国メーカーのものが大半を占める。HiSilicon設計の独自SoC「麒麟(Kirin)」はSMICが製造し、メモリは長鑫存儲技術(CXMT)、NANDフラッシュは制裁対象ゆえに国際市場と距離を置く長江存儲(YMTC)から調達する体制とされている。
大手のSamsung Semiconductor、SK Hynix、MicronはいずれもHuaweiへの供給に制限がかかっているため、Huaweiのスマートフォンはこれら3社が主役を演じるメモリ争奪戦の外側に置かれているのだ。
加えて、フラグシップのMate・Puraシリーズで培ったブランド力による高い利益率が、コスト上昇の吸収余力を生んでいる。米国の制裁という逆境が結果として防壁になったという、皮肉な構図だ。
ここ数年は値上げ傾向が確実 大容量モデルを狙うなら今が買い時だ
スマートフォンの値上げ傾向は、全ての価格帯において今後2年ほどは続くと予想される。メモリ高騰だけでなく、現在の水準で円安が維持されればその流れはより確実なものになる。
さらに見通しを暗くするのが、次世代フラグシップSoCの製造プロセスだ。2026年後半から2027年にかけて投入が見込まれるSnapdragon 8シリーズやDimensityの次世代チップは、TSMCの2nmプロセスへの移行が予定されている。Appleのプロセッサもこれに追従することが予想される。
最先端プロセスへの移行は製造コストの大幅な上昇を伴うため、これを搭載するハイエンドスマートフォンの価格は、メモリ高騰とは別の次元でさらに押し上げられる可能性が高い。
メモリ高騰、円安情勢、新型プロセッサのコスト増。これらを全て織り込んだAppleやサムスンの次世代フラグシップが30万円に迫り、折りたたみ端末ではそれを超える水準になる可能性も、もはや非現実的とは言い切れない。
気になるのは、スマホの買い時だ。筆者は、ストレージ容量の多い大容量モデルを「お得に手に入れたい」なら早めに検討することを勧めたい。特に512GBや1TBといったラインは今後登場する機種でも高止まりが予想され、既存機種の値上げも現実に起きている以上、今の価格で購入できる期間は限られてくる。
メモリ高騰、円安、次世代プロセッサへの移行という三重苦が重なる今、スマートフォンの「適正価格」に対する感覚をアップデートしておく必要がありそうだ。
著者プロフィール
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
関連記事
OPPOやXiaomiのエントリー/ミッドレンジスマホで値上げ 3000~5000円アップ
OPPOやXiaomiのスマートフォンで値上げが行われている。「OPPO A5 5G」は3万2800円から3万6800円に変更。Xiaomiの「REDMI 15 5G」や「REDMI Note 15 Pro 5G」も3000~5000円の値上げとなっている。メモリ価格の高騰はスマホにも影響あり? スマホを買うべきタイミングはいつか
2025年後半から、PC向けを中心にメモリ価格が異例の急騰を見せています。このメモリ高騰の波は、残念ながらスマートフォン市場にも及ぶ可能性が高いです。世界最大のスマートフォンメーカーであるAppleも、このメモリ高騰とは無縁ではありません。スマホの価格が高騰している理由 iPhoneやXperiaで10年前の機種と比べながら考える
スマートフォンの価格が高騰している理由を考える。10年前からどのブランドも一括9万円前後の価格のまま2019年ごろまで推移している。電気通信事業の影響は大きかったが、iPhoneでは大差のないケースもある。iPhone 17が好調のApple、世界スマホ出荷1位に 値上げの影響で苦戦のメーカーも カウンターポイント調べ
カウンターポイントリサーチは、2026年第1四半期スマートフォングローバル市場の売上高を発表。出荷台数は減少したが前年同期比8%増の1170億ドルで、プレミアム端末への需要拡大と価格引き上げが要因と考えられる。Appleが「端末残価」でAndroid陣営を異例の批判、「ホッピング対策」で新たな縛りも? ルール見直しの焦点
総務省の専門委員会で、端末割引規制やSIM単体契約の利益提供に関する見直し議論が本格化している。短期間で乗り換えを繰り返す「ホッピング」対策として、還元の分割提供や期間拘束の緩和が検討中だ。端末購入プログラムの残価算出については、一律の定率法を巡りアップルと他社で意見が分かれている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.